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carbon eyes株式会社

https://carboneyes.earth/

〒107-0061東京都港区北青山2-12-8 BIZ SMART青山

03-6869-4761

CO2排出量の可視化で中小企業に世界進出のチャンスが生まれる

サステナブルな取り組み ESGの取り組み
ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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carbon eyes株式会社 籠原吉広さん 撮影:加藤俊

地球環境を守るためには、CO2の排出量削減が急務となっています。そのためにはCO2排出量の可視化が必要不可欠なのですが、世界に比べて日本はこの取り組みが遅れているのが現状です。

日本でいち早く世界基準のCO2排出量算定システムを構築したcarbon eyes株式会社の代表取締役 籠原吉広さんは、「サーキュラーエコノミー(循環経済)を実現したい。

そして、日本の中小企業を元気にしたい」と熱く語ります。波瀾万丈の半生の末にたどり着いた新しいビジネスモデルについて、詳しくお話を伺いました。

世界基準の精緻なCO2排出量算定システムを安価に提供

御社の事業の特徴を説明してください。

籠原

周知のことですが、地球環境を守るには、全世界的にCO2の排出量を削減しなくてはなりません。

そのためには、どの企業がどれくらいの量のCO2を排出しているのか可視化していかなくてはなりません。弊社のシステムでは、精緻なCO2排出量を算出することが可能となっています。

弊社を起業しようと思ったのは2020年の半ばぐらいで、今年の9月末に登記したばかりです。

もともとサーキュラーエコノミーを実現したかったのですが、そのためにもCO2排出量の可視化は不可欠ですので、現在はそちらに注力しています。

 

「精緻なCO2排出量を算出する」ということは特徴になるのでしょうか。

籠原

そうですね、日本で求められている基準よりも、世界での基準はとても細かいです。そういった世界基準の算出ができることが、弊社のシステムの特徴です。

例えばアパレルの領域では、日本では「衣類」というくくりでCO2排出量を算出します。

しかし世界の基準では、例えばウール30%、コットン(綿)70%の衣類であれば、それぞれの素材ごとのCO2排出量を算出しなければなりません。

コットンであれば、綿花を畑で栽培して、何km離れた工場にトラックで運んだか、ガソリンをどれぐらい使ったのか。工場ではどれだけの電力が使われて糸が紡績され、生地にされたのか。

そこからまた衣類を作る工場に運ぶためにトラックを使って……と全ての工程を分析した上で、コットン1kg当たりのCO2排出量を算出しているのが世界の基準です。

 

世界基準の算出システムは同業他社との差別化にもなりますか。

籠原

はい。CO2排出量可視化に関する日本の認識がまだ低いので、企業の担当者が見よう見まねで専門知識の無いまま排出量を算出したり、精緻ではない概算値を使って算出したりと、算出そのものがグローバルスタンダードになっていません。

同業他社でしかるべき方法で算出を行う業者も出てきていますが、この分野のサービスはまだ始まったばかりです。

ぜひ弊社のサービスを使っていただき、精緻な排出量を算出した上で、企業の事業運営に有益に活用して頂きたいと考えています。

日本で精緻な算定システムが浸透しない理由には、コストの問題もあるのではないでしょうか。

籠原

おっしゃるとおりです。先ほど申したように、企業によっては日本の基準値で数値を出していますが、世界に進出している大企業の場合、それでは通用しないことがあります。

その際には弊社で使用している海外の原データを使うオプションがあるのですが、年間で数百万円にもなってしまいます。

ですから、CO2排出量の可視化に取り組むことができるのは、まだ大企業に限られています。

しかし弊社のシステムを使えば、年間100万円以下で世界基準を実現することができます。これにより、中小企業にもビジネスを展開できるということも、弊社の大きな強みだと考えています。

単なるCO2排出量の可視化だけでなく、J-クレジットで収益化を目指す

日本においてサーキュラーエコノミーが社会実装されると、どういう状態になるのでしょうか。

籠原

サーキュラーエコノミーとリサイクルは全く違うものです。リサイクルは捨てることが前提ですが、サーキュラーは循環という意味なので、捨てないことが前提となります。

日本のように資源に乏しい国は輸入に依存しています。原料を輸入し、それを加工して製品を作り、用済みになったら捨てるという言わば垂れ流しの状態です。

捨てずに再利用することができれば、原料を循環させることができ、輸入がどんどん減っていきます。100%循環にはならないにしても、限りなく自給自足につながっていくのです。

さらには地球環境に優しく、国内生産・国内消費により国の経済も相乗的に循環する。私は、ぜひ日本でサーキュラーエコノミーを実現したいと考えています。

そのために御社では世界基準のCO2排出量可視化に取り組んでいくということですが、もう少し詳しく説明していただけますか。

籠原

まずは企業様の事業の分析とLCA(Life Cycle Assessment)を組ませていただきます。

LCAとは、企業が商品・サービス・モノなどを作るところから最終的に処分されるまでに排出されるCO2の量によって、環境負荷を定量的に評価するための算定手法です。

弊社では、各企業様ごとに製造工程などが異なるため企業様ごとにカスタマイズ致します。これにより、一通りの流れが見えます。そこから後は、何が問題になっていて、どこが改善点なのかを探します。

例えば単純にお金で解決できるものや、知らなかっただけですぐに実行できるものは、直ちに取り掛かることができます。

最初に企業様側で取り組めることを手掛け、次年度以降に、例えばJ-クレジット制度を活用し、削減枠クレジット化のプロジェクト登録を行います。

プロジェクトが認定されれば、これをクレジット市場で売却することで企業様に収益をもたらす。このようなアクションを起こしていくという流れです。

プロジェクト認定やJ-クレジットとは、具体的にどのようなことなのでしょうか。

籠原

J-クレジットとは、分かりやすく言うと、企業が努力したCO2排出削減量や吸収量を、国(環境省、経済産業省、農林水産省)がお金に替えられる価値として認めてくれる制度です。

現在は、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社が窓口になっています。まず審査によるプロジェクト認定を受け、一定期間のモニタリングを経てCO2排出を削減できればクレジットとして認めてくれる制度です。

カーボンニュートラル(CO2排出量と吸収量の総和をゼロにすること)を目指しているプライム市場の会社からすると、余剰排出量は何とかしなければいけません。

J-クレジット制度を活用することで、この余剰分を他社の削減で賄うことができるのです。

来年度以降、東京証券取引所でもこのJ-クレジットを売買できるカーボンクレジット市場という売買市場システムの試験運用が進められています。

弊社は、このJ-クレジット制度に関わるJ-クレジット・プロバイダーも目指しています。日本国内でまだ5社しかありません。

企業様の現状を把握し、きちんとコンサルティングをして、申請書類に落とし込み、プロジェクト認定を受けるべく審査に回す作業をします。

そして、プロジェクトでクレジット化された時には売買の仲介役になるのがプロバイダーの役割です。

御社は中小企業を対象にしたビジネスも展開したいとおっしゃっていましたが、彼らにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

籠原

日本とドイツを比較すると分かりやすいです。両国の中小企業の数はほぼ同じですが、日本の中小企業の輸出額はドイツの半分なのです。

日本は世界に誇れるものづくりの技術や勤勉さがありながら、なぜドイツの半分なのか。それは大企業の下で仕事を下請けする状態になっているため、中小企業が海外に出ていないからです。

しかし、日本全体の経済が低迷している現状を考えた時、これから日本の中小企業は世界に出ていかなければ立ち行かなくなるでしょう。

その時に必要となる基準がCO2排出量の可視化です。日本の基準値で出していては、永遠にそのまま下請けで使われるだけです。世界基準の数値を出すことで、世界の企業と取引できるチャンスが生まれます。

常識になっていないものを追い掛け、可能性があればすぐ実行した

籠原様がCO2排出量の可視化を手掛けるに至るまでのストーリーを教えてください。

籠原

千葉県浦安市で生まれましたが、3歳の時に両親の出身地である北海道に移ったので、自分の中では道産子だと思っています。

大学を出て、ケイライングループにお世話になり、台湾、ニューヨーク、香港などで、TDKの海外の拠点に向けて部品を輸出するフォワーダーの業務を担当していました。

2年後に退社し、バックパッカーとなってカナダへ行き、芝刈りやツアーコンダクターなど、いろいろなことを経験しました。その時に出会った妻と結婚することになり、2年後に日本へ帰ってきました。

実家が自動車学校をしていた関係で指導員の資格を持っていたので、自動車学校でアルバイトをしながらも、広告代理店のフルコミッション制の仕事をしました。

もともと起業意識があったので、お金になりそうなことだったら何でもかんでも頑張ったのが20代後半から30代前半まででした。

2~3回、だまされて借金をつくるという痛い経験もしましたが、「全責任は自分で負うのだ。他人に付いていくのではなくて、自分の足で立って仕事をしよう」と思ったのが30代半ば過ぎです。

その時に営業コンサルタント会社・株式会社ANALOG WORKSを立ち上げました。それを皮切りに、保険の代理店や飲食業など、いろいろなことにチャレンジしました。

30代半ばまでの人生でも波瀾万丈ですね。

籠原

尾長屋の白いたい焼きがブームになった時は、フランチャイズで一気に3店舗を出店し、とても利益が出ましたが、あっという間にブームが去ってしまいました。

銀行からたくさんお金を借りて店を回していたのですが、売り上げが激減してしまいました。しかも、当時は大学生と高校生の子どもがいて、お金がとても掛かる時期でしたので、窮地に追い込まれました。

ちょうどその頃、北海道で半身揚げという唐揚げが話題になっていました。

鶏の半身を丸ごと塩漬けして素揚げする物で、小樽なると屋が有名です。北海道では鶏の唐揚げのことをザンギというので、「ザンギ専門店でいこう」と思いました。

神奈川の日吉駅前を本店に、直系3店舗、フランチャイズ3店舗でオーナーをしていました。最初に『横浜ウォーカー』が取材に来てくれて、その後、全テレビ局に取り上げてもらいました。

それはいつ頃のことになりますか。

籠原

ちょうど今から10年ぐらい前です。

唐揚げブームの前ですね。

籠原

そうです。私は世の中で常識になっていないものを追い掛け、可能性があればすぐ実行する性格です。

2014年にビットコインに出会った時も、その裏側を支えているブロックチェーン技術(分散型台帳技術)には、「既得権益に虐げられてきた平民が復活できるチャンスだ。

正しいことをしていれば正しく評価される時代がくる」と泣けてくるぐらい感動しました。

その延長線上でサーキュラーエコノミーに出会いました。CO2排出量の算出システムに関しては、ブロックチェーンは全く関係ないのですが、トレーサビリティーやいろいろなものが絡んでくるからです。

ブロックチェーン技術を使ってCO2排出量証明書をNFT化し、海外取引を活発にしたい

今後の展望をお聞かせください。

籠原

弊社の世界基準のCO排出量算定システムは既に全部でき上がっているので、まずは安価で中小企業に使ってもらうことから始めていきたいです。

現在は大企業の1~2%しかCO2排出量の可視化に取り組んでいないので、可視化をすること自体が優位性を持ち、ビジネスチャンスを生みます。

中小企業に、ぜひ弊社のシステムを導入していただいて、きちんと国内外にアピールしてもらえば、新規開拓にもつながるという自信を持っています。

同業他社ではものすごく簡素化して、電気代やガソリン代などの領収書をスキャンしデータ化するような仕組みを月額1万円程度で提供しています。

弊社でも同じ物を作っているのですけれども、それは無料で提供しようと思っています。

なぜなら、もともとのコンセプトがきちんとグローバルスタンダードを目指すということであって、簡素化した物を売りたいわけではないからです。

まずは使っていただいて、そこで取りあえず企業がいったん認識をして、今後の重要性に気付いていただけるきっかけにしたいです。

段階的に本サービスの契約に移行していただければいいというところから始めてきたいと思っています。

CO2排出量計算には、スコープ1、スコープ2、スコープ3があります。大まかに言うとスコープ1と2については作る側、3は売る側ということになります。

スコープ3に関しては複雑ですし、圧倒的に人の手を介します。同業他社のベンチャー企業は、この部分の人件費にものすごい資金調達をしています。

弊社も現在は、資金調達と人海戦術で取り組んでいますが、来年以降にはチャットボットなどのAIも活用して業務をシステム化し、新入社員でも運用できるような仕組みを目指しています。

弊社はCO2排出量の可視化に関しては、他社よりも先行しています。

誰でも使えるようなものでありながら、決して安かろう悪かろうではなくて、技術力でカバーして、中身はきちんとした物にこだわっています。

最終的には、会社の担当者が手入力するのではなく、スマートメーターなどのIoTデバイス介してブロックチェーン上に書き込まれたデータで担保されるような仕組みにして、確度を上げていこうと考えています。

ブロックチェーン上で構築できるNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)にしていきたいです。海外での取引に向けてより活発化すれば、そういう流れになっていくと思います。

ステークホルダーへの感謝

最後に、最も感謝を伝えたい相手は誰ですか。

両親へ

  • 籠原さん
  • 両親

やはり両親でしょうね。一生懸命に働いて、私を育ててくれました。

自動車学校を経営していて、朝4時の早朝教習から、夜11時の夜間教習まで働き、土日は自動車学校のバスを観光バスとして提供し、父が運転手になって北海道の観光名所を巡っていました。

休みなく働いていましたが、それでも家計が苦しいときは、母もパートで助けてくれました。

父は運動会などの行事になかなか来てくれなかったり、母も外で働いていて家にいないことが多く、愛情不足のせいか中学生の時はぐれました。

しかし自分が親になってみると親の気持ちがよく分かります。お金に苦労しながらも大学も出してもらい、欲しいと言った物は全部買ってもらいました。

自分も借金で苦しい経験をしたので、親がどんな思いで仕事をしていたのかと考えると、頭が上がらないです。心から感謝しています。

◎プロフィール
籠原吉広
千葉県生まれ。3歳で両親の出身地・北海道に移る。大学卒業後、ケイライングループで2年間の海外勤務をした後、バックパッカーとなる。その後、日本に戻り、2005年の営業コンサルタント会社・株式会社ANALOG WORKSの設立を皮切りに、さまざまな業種で事業を展開。特に、唐揚げ店のフランチャイザーとして大成功し、メディアからも注目された。2014年、ビットコインとの出会いによってブロックチェーン技術分野に参入。2017年、株式会社Blockchain Tech Farmを設立。2022年9月には、サーキュラーエコノミーの分野でビジネスを展開するべく、carbon eyes株式会社を設立し、現在に至っている。

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ライター:

1964年生まれ、群馬県出身。国立群馬高専卒。専攻は水理学と水文学。卒業後、日刊紙『東京タイムズ』をはじめ、各種新聞・雑誌の記者・編集者を務める。その後、映像クリエーターを経て、マルチメディア・コンテンツ制作会社の社長を6年務める。現在は独立し、執筆と映像制作に専念している。執筆は理系の読み物が多い。 研究論文に『景観設計の解析手法』、『遊水モデルによる流出解析手法』、著書に科学哲学啓蒙書『科学盲信警報発令中!』(日本橋出版)、SFコメディー法廷小説『科学の黒幕』(新風舎文庫、筆名・大森浩太郎)などがある。

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