
見た目が不揃いというだけで捨てられてしまう食材に、新しい命を吹き込む取り組みが広がりを見せている。
栃木の桃がクラフトビールに変身。宇都宮での初提供も決定
株式会社グリップセカンドが、栃木県鹿沼市で育った桃の品種まどかを使った季節限定ビールをリリースする。まずは9月11日から宇都宮のラズリプレイスと東京のラシーンズ青山で先行販売がスタートし、その後グループ各店へ広がっていく流れだ。
主役となるのは、形や大きさの理由で出荷基準に届かなかった規格外の桃たち。甘みがギュッと詰まった果実を、スタッフが手作業で丁寧に剥き、ピューレにして仕込んでいく。1タンクに15kgもの桃を使い、発酵の前後に分けて投入することで、桃本来の上品な香りをしっかり引き出している。
手作業の仕込みと生産地で味わう体験価値

単なるフードロス対策で終わらせないのが、この取り組みの面白いところだ。桃の香りを引き立てるためにホップの種類を見直すなど、味わいへの妥協は一切ない。
さらに2026年は、桃の産地でもある栃木県宇都宮市の店舗で初めて提供される。これまで東京でしか飲めなかった特別な一杯を、地元で味わえるというストーリー性も加わり、体験としての魅力が一段と深まっている。
A等級じゃなくても美味い。素材の本質を見つめる哲学
このプロジェクトの根底にあるのは、同社が大切にしているエクセプトフォーエーという考え方だ。見た目がきれいなA等級でなくても、味の価値は何も変わらないというシンプルな視点から始まっている。
農家が大切に育てた素材を無駄にせず、新しい価値を与えて届ける。この姿勢が、生産者との深い信頼関係づくりにもつながっている。
未利用素材を人気商品に変えるブランディングの視点
一連の取り組みから学べるのは、社会課題の解決を楽しさと美味しさに変換する仕掛けのうまさだ。ただ社会にいいことをアピールするのではなく、ファンが思わず手に取りたくなるクラフトビールという形に落とし込み、提供する場所までこだわる。
捨てられるはずだった素材に光を当て、ビジネスの力で魅力的な体験に変えていくアプローチは、多くの仕事に通じるヒントに満ちている。



