
宿泊施設から排出される廃棄衣料を起点に、単なる資源循環を超えた社会的価値を創出する試みが始まった。株式会社ミナシアが運営するホテルが主導する、地域の教育機関や福祉、行政と連携した共生社会への新たな挑戦である。
廃棄衣料を地域資源へ変えるホテルの挑戦
捨てられるはずだった衣服が、地域の力で全く新しい輝きを放ち始める。ポラリス・ホールディングス株式会社の子会社である株式会社ミナシアが運営するKOKO HOTEL 飛騨高山は、2026年8月7日に館内レストランにおいてサスティナブルファッションショーを開催する。
この試みがユニークなのは、素材となる衣服の出処にある。館内のリサイクルボックスで回収された衣料品や、保管期限を過ぎて処分されるはずだった忘れ物の衣服が主役となる。
これらを岐阜県立飛騨高山高等学校の生徒が授業の一環として鮮やかにリメイクし、行政のパートナー事業を通じて参加する知的障がい者12名のモデルが着用してランウェイを歩く。単なる一企業の環境活動という枠を飛び越え、行政や教育機関、民間企業、福祉事業所が密接に手を取り合う姿は、地域循環型SDGsの理想的な縮図といえる。
多様なセクターを巻き込む独自の水平連携

他社が手がける一般的な衣料リサイクル活動と、今回のプロジェクトは何が違うのか。決定的な差は、ホテルという空間をハブにして地域の多様なステークホルダーの強みを完全に融合させている点にある。
ホテルの役割は、単に場所や衣服を提供するだけに留まらない。地元の活動に賛同した人材派遣会社がクリーニングを担い、高校生が卓越したデザインと制作を施し、エステや化粧品会社がモデルの魅力を引き出すメイクアップを担当する。
さらに行政が福祉事業所とのマッチングを主導するという、地域社会の全方位的な協力体制を構築している。衣服のアップサイクルという環境価値に、障がい者の活躍の場を創出するという福祉的価値を掛け合わせた独自の水平連携モデルは、他業界にとっても大きなヒントになるはずだ。
空間の提供から価値の創造へ向かう経営哲学
「ホテルだけでは実現できない価値を地域の力とともに生み出せた」
KOKO HOTEL 飛騨高山の奥田晋一総支配人がそう語る背景には、ポラリス・ホールディングスグループが推進する地域連携プロジェクト、FEEL THE LOCALという明確な経営哲学が存在する。
ホテルを単に宿泊する場所として定義するのではなく、その土地の空気や人々の想いを五感で伝える架け橋として位置付ける。自分たちの町を誇りに思い、持続可能な発展に貢献するという強い当事者意識が、この共創プロジェクトを動かす原動力となっている。当日のランウェイは、まさにその哲学が形になる瞬間と言えるだろう。
企業の存在意義を再定義する地域共創の教訓
この事例からビジネスパーソンが学ぶべきは、自社が持つ潜在的な未利用資源、いわば負の遺産とも言える忘れ物や廃棄物を、地域の課題解決へと結びつける編集力である。
一見すると接点の薄い教育や福祉の分野に自ら歩み寄り、それぞれの強みを引き出す役割をホテルが担った意義は大きい。
企業が地域社会において持続的に存続するためには、単なる経済活動の枠を超え、多様な人々が活躍できるプラットフォームとして機能することが求められている。この飛騨高山での試みは、今後の地域共生における一つの指針を示している。



