
国が有機農業の拡大を掲げる中、多くの小規模生産者が既存の流通網への乗せにくさや物流コストの高騰という壁に直面している。この課題に対し、特徴的な共同物流やITツールの活用によって、地域内で持続可能なバリューチェーンを再構築しようとする企業の取り組みを追った。
既存流通に乗らない有機農産物の物流課題と現状
不安定な国際情勢や気候変動を見据え、農林水産省は2050年までに有機農業の取組面積を25%に拡大する目標を掲げている。しかし、有機農業を営む生産者の多くは小規模であり、その生産量は少量かつ不安定になりがちである。
そのため、農協や卸売市場といった既存の流通システムに乗りにくく、実際にこれらを経由している有機農産物は約2割に留まるのが現状である。
さらに、エネルギー供給の不安やガソリン価格の高騰は、個別に集荷や配達を行う生産者や買い手にとって大きな財務的負担となっている。こうした状況下において、有機農業に取り組む生産者が安定して販路を確保できる仕組みづくりが急務となっている。
独自のプラットフォームと共同物流による他社との差別化
この課題に対して、株式会社坂ノ途中は自社が運営する農業者向けウェブサービス「farmO」を活用し、地域内での効率的な流通網を構築している。他社との明確な違いは、単なる農産物の仕入れ販売にとどまらず、ITシステムと地域の共同物流を結びつけた点にある。
例えば、京都府では地元の八百屋や生産者と連携し、「farmO」の集荷リスト機能を用いて受注情報を集約する「共同物流便」を運行している。また、兵庫県養父市では学校給食への有機農産物導入において、最大の壁となる需給調整を効率化するため、このシステムを導入した。
生産者の出荷可能量を可視化することで、スムーズな受発注管理を実現している。奈良県宇陀市でも、他社の配送ネットワークが重複するエリアにおいて共同チャーター便を運行し、物流コストの抑制と化石燃料の消費削減を両立させている。
少量不安定な生産を支えるバリューチェーンの哲学
同社の取り組みの背景には、環境負荷の小さい農業の普及を目指すという明確な哲学が存在する。代表取締役の小野邦彦氏は、少量で不安定な生産であっても、品質が高ければ適正な価格で販売できる仕組みが必要であると考えている。
新規就農者をはじめとする小規模な生産者は、優れた農産物を作っていても、煩雑な事務作業や配送の手間に追われ、営農の継続を断念せざるを得ないケースが少なくない。同社は、注文の割り振りや出荷記録の作成を支援するシステムを無償に近い形で提供し、地域内の生産者と買い手を結びつけることで、持続可能な農業モデルの確立を後押ししている。
小規模分散型の産業が学ぶべき効率化と連携の知恵
株式会社坂ノ途中の事例から学べることは、個々の規模が小さく分散している産業であっても、ITを介したプラットフォームの構築と、競合や他組織との「協調」によって、大手に対抗しうる効率性を確保できるという点である。
物流の2024年問題をはじめとする人手不足やコスト高騰は、農業に限らずあらゆる地方の産業が直面している課題である。自社だけで完結させようとするのではなく、自治体や他企業、さらにはNPOと連携し、既存の配送網を共有する、あるいは情報をデータ化して一元管理するという姿勢こそが、地域の持続可能性を高める鍵となる。



