
オフィスに「その企業らしさ」が求められる今、イトーキの未利用資源を活用する新ソリューションが注目を集めている。
捨てられていた端材が企業のブランド価値に変わる瞬間
誰もが見向きもしなかった「自社のゴミ」が、優秀な人材を引きつける最高の武器に変わるとしたらどうだろうか。
オフィス家具大手のイトーキが始動させたサステナビリティソリューション「Econifa UPCYCLE」が、今、日本のオフィス戦略を大きく揺るがそうとしている。
これまで企業の環境配慮といえば、再生プラスチックの活用やペーパーレス化といった、どこか義務的で、数値化の枠に収まるものが主流だった。しかし、イトーキが仕掛ける新戦略は、その次元を遥かに超えている。企業や地域が頭を悩ませてきた「厄介ものの未利用資源」を、働く人が思わず胸を張りたくなるような圧倒的な空間価値へと転換してしまうのだ。
単なるエコの推奨ではない。これは、企業のアイデンティティをオフィスそのものに焼き付ける、全く新しいブランド戦略なのである。
卵殻から制服まで、他社が真似できないストーリーの可視化

なぜ、イトーキにしかできないのか。その理由は、競合他社を寄せ付けない「共創の幅」と「素材に宿るストーリーの引き出し方」の鮮やかさにある。
たとえばキユーピーのオフィスに足を踏み入れると、食品製造の過程で出た大量 of 卵殻が、洗練されたエントランスの家具として生まれ変わっている。驚くべきは、そのデザイン選定に従業員投票を取り入れ、自社製品のルーツを体感し、愛着を深めている点だ。
さらにセブン‐イレブン・ジャパンでは、役目を終えたお馴染みのユニフォームをアップサイクルし、執務エリアのボードや家具へと昇華させた。見慣れた制服が姿を変えて空間に溶け込むことで、社員は全国の加盟店とのつながりを常に肌で感じながら仕事に向き合うことができる。
トヨタ自動車の水素タンク端材やユニリーバ・ジャパンの使用済み容器など、持ち込まれる「難題」は多岐にわたる。それらをイトーキは、長年培った空間提案ノウハウによって、世界に一つだけのオフィス素材へと鮮やかに変貌させていくのだ。
社会課題を隠さず見せる、引き算ではないデザイン哲学
この驚異的な取り組みの根底には、「デザインの力で社会課題を可視化する」という、同社の揺るぎない哲学が流れている。
先日開催された展示会で、イトーキは度肝を抜く空間を披露した。未利用資源で形作られた山や池のような造形が大胆に配置され、本来なら廃棄されるはずの素材が「新しい家具を生み出すための資源の風景」として美しく再構築されていたのだ。
空間デザインのタクトを振った同社の西田大介氏は、未利用資源をただ綺麗に再利用するのではないと語る。社会課題を隠さず見せることをテーマに掲げたという。
傷や不揃いな色合いをあえて隠さず、むしろデザインの主役に据える。その引き算をしない潔さがあるからこそ、オフィスを訪れた人々や働く社員は、その企業が歩んできた歴史やものづくりへの誠実な姿勢を、五感で直感的に受け取ることができる。
人的資本経営の時代にオフィスが果たすべき本当の役割
深刻な労働人口の減少、あるいは人材の流動化が急加速する現代のビジネスシーンにおいて、企業はいかにして優秀な人材を惹きつけ、エンゲージメントを高めるかに血眼になっている。
このイトーキの試みから私たちが学ぶべきは、これからのオフィスは単に効率よく働くための「効率的な箱」であってはならない、という厳然たる事実だ。これからのワークプレイスは、企業の歴史や理念、そして未来への挑戦を雄弁に物語る「メディア」として機能しなければならない。
実際に、滋賀県近江八幡市の新庁舎に導入された地域資源「ヨシ」の家具を前に、職員からは誇らしく感じるという声が上がり、市民との対話のきっかけとして早くも機能している。この日常の何気ない変化、職員の意識の変革こそが、空間がもたらす目に見えない無形の資産であり、これからの人的資本経営における最大の武器になるはずだ。
環境配慮という義務を、企業の唯一無二のアイデンティティへと昇華させるイトーキの挑戦。それは、これからの「働く場」の概念を根底から塗り替えていくに違いない。



