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UMITO Partners 藤居 料実さん |ひと足さきに、ほしい未来へ – 八木橋パチの #ソーシャルグッド雑談

コラム&ニュース コラム
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八木橋パチ プロフィール

「ソーシャルグッドな活動をしている誰か」を訪ねて、その人との雑談を通じてその活動内容や思いなどをご紹介していく「八木橋パチの #ソーシャルグッド雑談」。

第4回は、「ウミとヒトが豊かな社会の実現」を目指し活動している株式会社UMITO Partners(ウミトパートナーズ)の藤居料実さんと雑談してきました。

UMITO Partnersは、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対するアメリカ発の国際的な認証制度「B Corporation認証(B Corp)」を4月に取得したばかり。

雑談はまず、先日開催された「B Corp認証のこれまでとこれから」の振り返りからスタートしました。

参考: UMITO Partners、海と漁業のサステナブルを推進する企業として「B Corp認証」を取得

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中央: 藤居 料実(ふじい かずみ)

横浜国立大学教育人間科学部地球環境課程卒業。新卒入社した食品専門商社で体験した産後の働き方に対する疑問から、産後ケアのNPOが主催する女性支援のプロジェクトに参画。
対話を通した人材支援の手法を深めるためにコーチングの国際資格(Certified Professional Co-Active Coach)の取得を経て、人と組織の仕事にキャリアチェンジ。UMITO Partners設立時よりバックオフィス全般を担当する一環でB Corp認証の申請を担当。

左: 我有 才怜(がう さいれい)

2017年メンバーズ新卒入社。社会課題解決型マーケティングを推進するほか、気候変動への危機感や市民運動への興味から国際環境NGOでも活動中。2023年4月1日、メンバーズ社内に開設された「脱炭素DX研究所」の初代所長に就任。IDEAS FOR GOODと共にWebメディア「Climate Creative」運営中。

右: 八木橋 パチ(やぎはし ぱち)

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャーおよびコラボレーション・ツールの展開・推進を担当。社内外で持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちとさまざまなコラボ活動を実践し、取材・発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。WORK MILLにて「八木橋パチの #混ぜなきゃ危険」連載中。
パチ

先日はありがとうございました! 改めて自画自賛するけど、参加者にとっても登壇者にとってもすごくいいイベントになったよね。

それもひとえにかずみさんのおかげです。事前準備も当日も、ありがとうございました。

かずみ

とんでもないです。パチさんにも我有さんにもとってもお世話になりました。

ああいうふうに準備から発表すること、そしてフィードバックを貰ってそれに応えていく過程で、自分自身の学びやUMITO Partners(以下「ウミト」)の今や未来について多くの学びをいただきました。

本当にありがたい場でした。

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UMITO PartnersのB Corp認証について、詳しくはこちらの記事をご確認ください:
『B Corp認証のこれまでとこれから | UMITO Partners編 イベントレポ―ト』
我有

私はパチさんほどウミトの業務を分かっていないのですが、改めて少し説明してもらっていいですか?

かずみ

2018年に漁業法が70年ぶりに改正されたり、昨年から水産流通適正化法が施行されたりと、今、日本の水産業は大きく変化しているんですね。

そしてその背景にはもちろん、SDGs14の「海の資源を守り、大切に使おう」があります。

ウミト代表の村上春二も私も以前は別の水産業支援会社にいたんですが、「海の資源を守るには『海の守り手』である漁業者の方たちがサステナブルであることが必要だ。

もっと今よりもずっと現場目線で彼らをサポートしていきたい」という意思のもと、村上が独立することになり、私もウミトに転職しました。

ウミトは現在6人の社員からなる会社で、科学調査分析部と、プロジェクト開発&マネジメントチームで事業を行っています。私は組織部として、バックオフィス全般や組織づくりを担当しています。

村上はB Corpを代表する企業の一つであるパタゴニアで働いていた経験もあり、社会と環境と事業活動を重ねて表現・発信できるB Corpのことを相当古くから知っていたそうで、創業時からB Corp認証を取ろうと言っていました。

実際の申請から取得に至る実作業は主に私が行い、この4月に無事取得することができました。

我有

かずみさんとパチさんはベトナムのハノイで出会ったんですよね?

パチ

そう。今回のB Corpイベントも一緒に開催したハーチが主催した「ハノイの社会起業家に会いに行く」ってツアーが2019年にあって、そこでお互い参加者として出会ったのが最初だったの。

それから数年して、おれが所属している日本IBMも幹事企業となっている「Ocean to Table Council」という「水揚げから食卓までをブロックチェーンで管理し、日本の水産業を守ろう」という取り組みを取材していたら、なんと、そこにかずみさんがいた! という。すごい偶然でしょ。

ただ、初めて会って、でもハノイにいる間にたくさん話をして、「かずみさんはこの先、コーチングや組織開発のコンサルタントを本業としていくのだろうな」と強く感じたんだよね。

かずみさんも当時はそんな思いを持っていたんじゃないの? あれはおれの勘違いだったのかな? 

かずみ

いや、パチさんが正しいですよ。

というか、あの頃の私はかなり迷っていて、それまでの経歴から「食と物流と組織開発に詳しいバックオフィス人材」と思われて転職したばかりだったんですけど、実際のわたしはどれもごくごく限られた一分野しか知らなかったんです。

それで「なんでもいいから何かヒントを!」とすがりつくかのようにあのツアーに参加したっていうのが実態でしたね。

それにしても、ハノイではたくさん会話しましたよね。パチさんはどの会社に行っても、どんな場所に行っても、おもしろい問いと鋭い視点を投げかけ続けていて、おかげですごく旅が深まったのが印象的でした。

我有

分かります。私もパチさんやハーチの方たちとデンマーク視察ツアーに行ったとき、同じような体験をしました。

パチ

それはもともとおれがおしゃべりで、旅に出るとますます五感が刺激されて、いろんなものが脳内にブワーッと広がりまくるからなのね。

ところで、転職したばかりで迷っていたっていうのは、どんな経緯だったの? たしかハノイでは「今は魚の会社ですけど、もともとは肉の会社にいました」って言っていたよね。

かずみ

転職前の私は食肉の輸入に関わる仕事をしていたんですけど、育児休暇から復帰したら現場の一線の仕事からは外されてしまって…。

それで、会社の仕事ではなく、子育てしながら働く女性を支援する「NECワーキングマザーサロン」というプロジェクトに、5年ほどすっかりはまっていたんです。

そこでは心の深いところまで内省し本音で対話するようなワークショップを行っていて、最初は一メンバーとして参加していたんですが、徐々にわたしの役割も変化していき、コーチングをしっかり学んでCPCCという資格を取得しました。

それで本業でもコーチングを活かしていきたいって、職場で転職先で業務改善プロジェクトなどに取り組んでいたんですが、思いっきり壁にぶつかってこのままじゃだめだと思い転職…。

そんなタイミングでしたね。

UMITOOffice
4月に移転したばかりの東京神田のUMITO Partners新オフィスで雑談しました
八木橋パチ プロフィール

パチの心の声

この後、小学生の頃からスーパーのチラシを見て「今日はこれが特売!」と自分で買い物に行き、共働きの家族の分まで料理をしていたという子ども時代の話や、10代半ばから過食症に10年悩まされていたが、その根本的原因となっていた「自己評価の低さ」を、夫との出会いやコーチング、そしてウミト代表の村上さんとのやり取りなどを通じて解消していった話などを聞きました。
これはおれの持論ですが、自分の弱さに直面して、悩みもがいて、それをどうにか踏み越えてきた人には、「そこを越えてきた人だけが持つ深さ」のようなものが備わっている気がします。
弱さを受け入れたからこそ先に進むことができたという経験や、自分の限界を知っているからこそ本当の意味で目一杯頑張れるという「自分にふさわしい自信」などが、今のかずみさんを形作っているような気がします。
このあとは、「自己評価の低さ」解消の鍵となったという、ウミト代表の村上さんとのやり取りについて、そして現在のウミトでの活動について雑談します。
かずみ

「勝手やね。自分で穴掘って埋まっとーよ」って言われたんです、村上に。ウミトが立ち上がってしばらくした頃ですね。

その頃、会社の立ち上げ作業がひと段落して、わたしは「いい組織作り」に取り組もうと思って、実践したこともないのに持っている知識を使いたくて、それでいろいろ試しはするものの全然うまくいかなくて…。

それで、「わたしの出番も、できることも、もう終わったみたいですね。わたしは去ります」みたいなことを言ったら「なに言っとーとか!」って。

そのときの話し合いで、でこぼこの自分のままでいいんだってことや、そのままの自分でコミュニケーションを取っていくべきなんだってことが腹落ちして

すごく救われたし、何か変わったなって感じがありますね。あれを境に。

パチ

博多弁っていうの? あの独特の方言と語り口調。なんだか村上さんの姿が目に浮かぶ。声が聞こえた気がした(笑)。

そもそも、村上さんが独立するとき、かずみさんはなんで付いていったの? 最初しばらくは前の会社と兼業でやっていたよね?

かずみ

実は以前の会社で、私が人事として進行した社内ミーティングが、すっごく荒れたことがあったんです。

それでミーティングの後、当時副社長だった村上から電話がかかってきたんです。声や口調は一生懸命抑えているけど、ものすごく怒っているのが伝わってきました。

でも話を聞いていくと、怒りの底に、人としての尊重や公平性といった価値観が強くあることが伝わってきて。

この人は今、ここでこうして副代表として活動しているけど、まだ表に表現しきっていない価値観や願いがあるんだなって。

それが村上自身の中に大きなエネルギーとしてすでにあって、外に出るのを待っているんだ——怒りを伝えられているんだけど、でも話を聞きながら、わたしの頭にはそんなことが浮かんでいて。

だから、その1年後くらいに「独立する」と聞いたときには「ああ、その時が来たんだな」「それを形にすることに貢献したいな」って。

パチ

めっちゃいい話じゃん! そんなすてきな話があったなんて、知らなかったよ。

ところで、ウミトは漁師さんたちと一緒にサステナブルな漁業や養殖業を目指す改善プロジェクトをたくさん手掛けているけど、かずみさんも直接プロジェクトに入ることはあるの? 

FIP_AIP
UMITO Partnersが手掛けてきた改善プロジェクトのマッピング。FIPは漁業改善プロジェクト(Fishery Improvement Project)、AIPは養殖業改善プロジェクト(Aquaculture Improvement Project)を示しおり、サステナブルな漁業や養殖業を目指す上で欠かせないものとなってきている。プロジェクト個々の内容はこちらのnoteマガジン「UMITO×生産者」に詳しい。
かずみ

わたしはバックオフィス担当なので、直接プロジェクトに入ることはありません。が、勉強の意味でミーティングに参加させてもらったり、今年は北海道の出張にも同行させてもらいました。

漁師さんたちはすごくパワフルでかっこよかったです。感性や感覚が独自に研ぎ澄まされている感じ。東京に帰ってきてからもまた会いたいなぁ! って。

でも同時に、海の問題も社会の問題も、前に進めていくのは本当に難しそうだということをこれまで以上に身近に感じました。

こっちを動かすとあっちがつまる。ここを動かすにはあそこが動かないから無理…みたいな。

改めて、これまでのプロジェクトは「どれも本当に大変なものばかりだったんだなぁ」と漁師さんにも社内メンバーにもリスペクトが増しました。

実際FIPが1つ立ち上がるのに、関係性作りに2年かかったこともあります。

我有

2年はすごいですね。でも、一度そうなれば漁師さんたちとの共同プロジェクトが進むということは、漁師さんたちも現状を変えてくれる人たちを求めているってことですよね。

「感性や感覚が独自に研ぎ澄まされている」というのは、具体的にはどんなところに感じるんでしょう?

かずみ

そうですね、左脳で論理的な部分だけの人間とは違うとでも言うか…。

たとえば、かなり沖まで出ているときに、方向探知機が壊れてしまうということもあるそうです。でも、それまでの経験から夜空に浮かぶ星の位置を見て、帰ってきたという話も聞いたことがあります。

やっぱり自然と対峙して知り尽くしているからこそですよね。野生味がすごいです。

パチ

考えてみれば、日本には狩りを生業としている人はもうほぼいないわけで、そう考えると漁師こそが日本に最後に残った狩猟民族だとも言えるよね。

つまり漁師の生活を守るというのは、海の資源やシーフードが食卓にあるおれたちの生活を守るだけじゃなくて、日本に残る狩猟文化やそれに基づく町や村の暮らしや文化をも守っているってことだよね。

我有

ウミトが「日本の漁師と漁村の文化人類学」を研究発表したらすごく面白そうですね。

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左: 打ち合わせ後に漁師さんと談笑する村上代表 | 右: 履行確認会議の際に現場視察を行う科学・調査分析部
八木橋パチ プロフィール

パチの心の声

乱獲は、「明日は、来週は、来年は、もう獲れないかもしれない」という漁師の恐れの気持ちからきているところが大きいという話を聞いたことがあります。
ウミトは「どの時期にどれくらいの量まで取るのが持続的か」を科学的に割り出し、漁師の恐れに向き合い、サステナブルな漁業と彼彼女たちの暮らしを守ろうとしています。でも、彼彼女らが守ってくれているものの大きさを考えれば、私たち市民にも彼らを守る手伝いができるのではないでしょうか。
それは、そうやって「適切に頑張っている漁師さんたち」にエールを送ること。よい漁業の実践から水揚げされた魚を選び、食べることで、「あなたたちの暮らしが崩れ落ちそうになっても、黙ってそれを見過ごしはしませんよ」と、日本最後の狩猟民族たちにメッセージを伝えることなんじゃないだろうか、と思いました。
コスパも大事だけど、ときには長い目で見ないとね。結局は回り回って、自分たちの首を絞めることになるわけですから。
パチ

最後にちょっとめんどくさい質問を。かずみさんは「ウミトが良い会社だから愛した」のか。「愛したから良い会社にしたい」とやってきたのか。どっち?

かずみ

えー。たしかに答えるのが難しい質問だけどおもしろい! どっちだろう…両方を行ったり来たりしながら今に至る気がします。

パチ

そっかー。なんだかんだ言いつつ、おれは自分がいる会社を、そして自分の仕事を愛したいんだよね。だから自分が所属する会社には「良い会社であって欲しい」って気持ちがすごく強い。

周りの社員にも「あなたの愛を伝えて欲しい」と思っていて。

だから、社員にフォーカスを当てて、その人の輝きや魂の震えみたいなものが感じられる記事を書きたいと思い、雑談やインタビューをして記事を書いているんだよね。

かずみ

パチさんのそれ、すごくいいですね! わたしがB Corpの申請書を書くのに、みんなの話を聞いていた時って、まさにそんな感じだったんだと思います。

我有さんはどうですか?

我有

すごく難しいですね。最近、自分の愛を疑うこともあります。

メンバーズはここ数年で社員が倍増して今は3000人くらいなんですが、急成長や規模拡大に囚われ過ぎていないだろうか? そのやり方に私は共感しているのか?と思うことも正直少なくないんですよね。

Being(在ること)とDoing(すること)で言えば、Doingなら多少見えるかなって感じ。うちの会社が考える「良い」状態とか在りたい姿が見えづらくなって、少し不安に思うことも…。

かずみ

すごい急激な増え方ですね。それだと無理もない気もします。それにそれだけの人数がいれば、考え方や会社に対する見方や捉え方も多様になって当たり前だと思います。

さっきのパチさんの質問で言えば、良い会社だから愛している人もいるだろうし、なんとなく良さげに見えるからここにいるって人もいますよね。

でも、それでいいんじゃないですかね。人と組織ってお互いに響き合うだけじゃなく補完し合ったり、いろいろだと思うし。

それがプラスの影響を与え合う関係が理想的だけど、働いていく中でそれが変化したり行きつ戻りつしたりして、徐々にやりたいこととマッチしていくんじゃないですかね。

パチ

そうだね。でもやっぱりおれは愛を感じながら仕事をしたい(笑)。

だから、我有さんには、まずは自分に近いチームメンバー間でしっかり感じられるように、お互い愛を語りあっていけばいいのでは? って、おれなりのアドバイスを送らせてもらうよ。

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2019年の「ハノイの社会起業家に会いに行く」ってツアーでの1枚。右端の男性は現千葉県白井市市議会議員のあらい靖行さん

次回は誰に会いに行こうかな? 今はまだ考え中なので、「この人と雑談してみたら?」っておすすめの方がいたらぜひ教えてください。

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ライター:

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャー、およびソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちと社内外でさまざまなコラボ活動を実践し、記者として取材、発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。 合い言葉は #混ぜなきゃ危険 #民主主義は雑談から #幸福中心設計

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