就労継続支援B型事業所で働く徳山勝子さん(画像:左側)と株式会社夢のカタチ代表取締役の二階堂すみ子さん(画像:右側)
「障碍者の自立を考えるうえでFISソリューションズほど頼りになる存在はない」と語るのは、株式会社夢のカタチ代表取締役の二階堂すみ子さん。
障碍者支援のキーワードは「自立」である。障碍者の自立促進のため、「障害者雇用促進法」では一定以上の割合で障碍者の雇用を求めている。しかし、法定雇用率達成が目的化してしまい、必ずしも障碍者の自立支援に繋がっていないケースが散見されるのが現状だ。
こうした障碍者の働きにくさを解消すべく、共同生活援助事業や就労支援事業を行っているのが、「株式会社夢のカタチ」である。「障碍者や健常者といったカテゴリ自体をなくしたい」と話す同社代表の二階堂さんに、事業への思いや今後の展望、そして自立支援に欠かせないパートナーと絶大な信頼を置く株式会社FISソリューションズの代表取締役社長山口勝宏さんについて話を伺った。
また、二階堂さんが運営するグループホームで暮らす方々に仕事の楽しさや、働く環境についてインタビュー。そこには障碍者が夢に向かって着実に歩む姿と、自立を支えるパートナーの存在があった。
障碍者と健常者が切り離されている社会への違和感
―御社の事業内容について教えてください。
私たちの仕事は、「3つの場」を通して障碍者一人ひとりの自立と夢を応援することです。3つの場というのは、共同生活の場、探求の場、就労の場のことです。
まず、「共同生活の場」であるグループホームを運営することで、基本的な生活習慣を身につけ、心地よい人間関係を築く練習をします。このグループホームは、入居者の様々な可能性に気づく機会を積極的に取り入れた「探求の場」ともなっており、ダンスや歌唱の他にも書道体験や、切り絵などを地域の方のご協力を得ながら開催しています。そして、「夢のカタチふぁーむ」という有機肥料の無農薬栽培の畑を運営したり、シール貼りなどの内職ができる環境を整えたりすることで「就労の場」を設けています。
事業としてまとめると、障碍者の就労支援事業と共同生活援助事業の2つをメインに行なっています。
―二階堂さんが現在の事業を始めた経緯を教えてください。
叔父が聴覚障碍を持っていたのですが、子どもの頃から接していたので私はあまり障碍という概念がなく、特に障碍を意識することなく暮らしていたんです。しかし、成長するにつれて、今の日本社会では障碍者と、いわゆる健常者がカテゴリ分けされて生活をしているのを目の当たりにして、ショックを受けたんです。その後、障碍者の就労支援事業所で働いているときに、障碍の有無に関係なく、本人が自分の能力を発揮して働ける場や生活の場を構築する仕事がしたいと思って、2016年に妹と株式会社夢のカタチを立ち上げたんです。
障碍者の自立を考えるうえで、FISソリューションズほど頼もしい会社はない
―障碍者の就労支援事業と共同生活援助事業を営むうえで、心がけていることはありますか?
「自立」を強く意識しています。私たちが行う事業は、障害者総合支援法に基づく就労継続支援B型という福祉サービスなのですが、全国の平均工賃がいくらかご存知ですか?令和2年度の厚生労働省のデータ(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000859590.pdf)によると、月額15,776円、つまり時給222円なんです。当社では業界でも珍しく全国平均の約2倍をお支払いしていますが、社会人として自立していくにはかなり厳しいのが現実です。最低でも月額10万円には引き上げないと生活できません。自立を実現するためには、就労支援を行う私たちがしっかり技術を教えることだけではなく、障碍者雇用に理解があって協力的な企業さんのサポートが不可欠です。
本気で黒字化に尽力してくれるFISソリューションズさんに感謝
―日本では「障害者雇用促進法」で、一定以上の割合で障碍者を雇用することや、差別禁止と合理的配慮の提供が定められていますが、実際のところ法定雇用率を達成するための「数合わせ」の採用などが問題視されていますよね。
法定雇用率をクリアすることだけにとらわれ、働く障碍者にしっかり向き合えていない企業も多々あると思います。その現状に風穴を開けてくれる存在として期待しているのが、株式会社FISソリューションズの山口勝宏社長です。障碍者の雇用の現状に非常に関心を持ってくださり、赤字になりがちな障碍者雇用を本気で黒字化させようと尽力してくださっている点です。福祉の世界にいる人間からすると、FISソリューションズほど頼もしい会社はありません。本当に感謝しています。
―障碍者ご本人にとっても、自分の仕事が黒字に繋がっているというのは嬉しいことですよね。
どうしても障碍者というと、福祉などで税金によってサポートいただくというイメージがあるので、きちんと自分で納税して、世の中にお金を還元できるというのは障碍者の自尊心にとって非常に意義のあることなんです。山口社長は、一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)でステークホルダー全体への貢献を重視する公益資本主義という考え方を大久保会長から学んでいらっしゃるからこそ、こうした社会的意義にも気を配ることができるのだと思います。
―そんな株式会社FISソリューションズにさらに期待するところがあれば教えてください。
全国でもモデルケースとなるような障碍者雇用のかたちをぜひ一緒に構築していきたいと思っています。障碍者が「私は障碍があるから、健常者よりも恩恵を受けている」のではなく、「一生懸命働いたことへの当たり前の対価として報酬がもらえている」と思ってほしいので、それを実現する手立てをともに考えていきたいですね。
「障碍者」という括りがなくなる日を求めて
―障碍者雇用には伸び代や可能性がたくさんあるのですね。
障碍者が普通に働くための活動を続けていけば、いずれは「障碍者」という括りもなくなると思うんです。最初にお伝えしたように、私は聴覚障碍を持っている叔父を特別とは感じていませんでした。他の人と変わらない家族の一員です。しかし、現代社会では一度身体や精神に障碍を持つと、生活が急に難しくなります。40代後半の一家の大黒柱である父親がうつ病を患ったら、家庭が崩壊する危機に陥りますよね。会社から不遇な扱いを受けるかもしれないし、医療費もかかります。それは企業や社会の責任だと思います。たとえ障碍があったとしても、きちんと自立して生活できる社会を実現させるために、今後も努力していきたいです。
―そうした社会課題を解決するため、具体的にはどういったお考えをお持ちですか?
まさに今展開中なのが、障碍者雇用でお困りの企業を対象とした、テレワークで障碍者をお引き受けするサービスです。残念ですが、今の日本社会でうつ病や統合失調症などの精神障碍を患って、一度仕事を辞めてしまうと復職は大変困難になります。しかし、企業にとっても復職できない社員に給与を払い続けるのは困難です。そこで、精神障碍になった方を、当社の農場でお引き受けする「農業」の事業と、FISソリューションズ山口社長の協力のもと取り組み始めた「手書きの年賀状や名刺、お礼状の作成」の事業で、ハイブリッド・テレワークを利用し、雇用関係を維持しながら復職できるまでサポートを行うサービスを始めました。コロナでテレワークが普及したこともあり、かなりニーズのあるサービスではないかと思っています。然るべき会社にアプローチすれば必ずお役に立てると思うので、今後進めていきたいと思います。
支援施設で働く6名に仕事内容、働く楽しさ、夢についてインタビュー
手書きの名刺の作成に取り組む皆さん。一字一句、丁寧に。こだわりをもって書き上げます
―ここからは実際に支援施設で暮らす6名の方々にお話を伺っていきたいと思います。皆さん、よろしくお願いします。それではまず、現在どのような仕事をしているか教えていただけますか?
Aさん:夢のカタチふぁーむで草取りなどの畑仕事をしたり、トマトの袋詰めやカードの仕分け、名刺や年賀状の作成などの内職をしています。
畑は芽が伸びたり、花が咲いたりなどの変化を見るのが好きで、成長を楽しみにしています。無農薬の柔らかい土で育てた苦瓜はとてもいい香りです。他にも40種類くらい育てています。大根、キャベツ、サニーレタス、にんじんなどたくさんです。
名刺や年賀状の字を書くのも楽しかったです。
二階堂さん:彼女は字を書くのがすごく上手いんですよ。自分の中での理想に近づけないと、納得がいかなかったり、スランプに陥って「もう、嫌だ!」と言ったりするときもありますが、諦めずにたくさん練習して書いていました。
徳山さん:二階堂さんに教えてもらって頑張って見本に近づけて書きました。特に「感謝」という字の「感」にこだわりました。
FISソリューションズ山口社長の名刺
FISソリューションズの社員の方の名刺も続々作成中です!
二階堂さん:字を書くことに苦戦する子も多いのですが、みんなすごく頑張っているんですよ。
徳山さん:見本通りに書くのは難しいですが、たくさん書いて練習しました。今度は感謝状も書きたいです。
二階堂さん:以前みんなで感謝状を書いてある方にお送りしたら、ビデオでお礼のメッセージを頂いて、逆に私たちもすごく嬉しくなったことがあるんですよ。だからまた書きたいと思ってくれているんだと思います。
徳山勝子さんのヴィジョン
―なるほど。では株式会社夢のカタチで働く楽しさはどんなところにありますか?
徳山さん:ここで働く楽しさは、誰かのために働くことで感謝してもらえたりすることです。そして、朝にみんなに挨拶してもらえたり、困っていることがあれば「どうしたの?」と優しく聞いてくれるところもとても嬉しいです。
仕事だけではなく、みんなと直接会って顔を見られるのも楽しいです。一緒に頑張っていきたい、と思います。私がご飯を作ると、みんなが美味しいと言ってくれるのも嬉しいです。
二階堂さん:この間は、ケールの葉でロールキャベツを作ってくれました。鶏ひき肉と生姜がケールと合っていて、すごく美味しかったんですよ。
―なるほど。働く楽しさは、皆と暮らす楽しさにも繋がっているのですね! ちなみに「夢のカタチ」さんでは、皆さんの夢を実現するために施設を運営されていると伺っています。最後に皆さんの今後の夢を教えていただけますか?
一人ひとりの夢を見える化したヴィジョンボード
Aさん:私の夢はお母さんが生きていたときに旅行したがっていたスイスに行くことです。お母さんは75歳で亡くなってしまいましたが、代わりに私が行ってあげたいです。あとは貯金を一千万円貯めて、北海道や温泉を旅行したり、洋服をたくさん買ったり、ホテルでディナーを食べたり、東京ディズニーシーに行ったりしてみたいです。将来は介護の仕事に就きたいです。あと、少し遅いですけど、できたらモーニング娘。に入りたいです。
Bさん:私は韓国が大好きなので、BTSのライブに行ったり、握手会に参加したりしたいです。『TOMORROW X TOGETHER(TXT)』のライブに行って、カン・テヒョンを生で見たいです。あとは野菜の勉強もしたいです。たくさん勉強して、みんなに教えてあげたいです。
Cさん:僕の夢は4階建のマイホームを建てて、犬も何匹か飼いたいです。あと、車も欲しいです(笑)。
二階堂さん:彼は去年の春に高校を卒業したばかりですが、最近トラクターの操縦ができるようになるなどとても頑張っています。もともとお母さんが家庭菜園をしていたので、野菜も好きなんだよね。f
Cさん:はい。好きです。色々な美味しい野菜を育てたいです。
Dさん:私も韓国が好きなので、BTSのライブに行ったり、韓国旅行をしたいです。好きな声優さんのライブにも行きたいし、サインも欲しいですね。友達とディズニーにも行きたいし、夏になったらプールに行きたいし、シェアハウスもしてみたい!あとは大人になったらお世話になった先生に恩返しをしたいです!
―お世話になった先生への恩返しとは、どのようなことですか?
Dさん:中学の時の家庭科や技術の先生に料理などいろいろ教えていただきました。
二階堂さん:学校で先生と料理を一緒に作ったから、今は料理上手になって、将来食べ物関係の仕事に就いて恩返ししたいそうなんです。お昼休みになるとちょっとしたものを作ってくれます。
―皆さん、誰かの役に立つことで収入とやりがいを得て楽しく働き、皆で支え合いながら着実にそれぞれの夢に向けて歩んでいるのですね。FISソリューションズさんの取り組みは、障碍者の夢の実現、自立支援に欠かせないサポートに繋がっているように思います。本日はお忙しいところありがとうございました!
◎会社概要
社名 株式会社FISソリューションズ
URL https://www.fis-s.co.jp
所在地 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-26 一ツ橋SI 2F
代表 代表取締役社長 山口勝宏
創業 2007年
事業内容 情報通信コンサルティング
社名 株式会社夢のカタチ
URL https://www.shapeofdream.com/
所在地 〒289-1103 千葉県八街市八街に51-55
設立 2016年2月
代表 代表取締役 二階堂すみ子
事業内容 共同生活援助事業、就労支援事業