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株式会社ソミックマネージメントホールディングス

https://www.somic-group.co.jp/

〒435-0032静岡県浜松市南区古川町500

(053)425-2111

自動車用ボールジョイント国内No.1メーカー・ソミックグループ 100年企業が目指す、新しい製造業の価値

ステークホルダーVOICE 経営インタビュー
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石川彰吾_プロフィール写真 c
石川彰吾さん

自動車の安全性を語るうえで欠かせない「ボールジョイント」という部品で、国内No.1のシェアを誇るソミックグループ。

現在世界7ヵ国、年商1,000億円に達する巨大企業に成長した同社は、1916年の静岡県浜松市、石川菊三郎宅の広さ2畳程度の土間から始まった。

トヨタ、スズキといった自動車メーカーと共に戦後日本の驚異的な復興を支えてきた「小さな鍛冶屋」は今、世界に拠点を持つ大企業となり、自動車メーカーと共に新たな試練に直面している。

気候変動、技術進化、そして企業の在り方が見直されるなか2016年に100周年を迎えたソミックグループは、道しるべとなる「北極星」を掲げ、新たな価値創造を目指す。

2022年に「次世代へ笑顔をつなぐ」という新たなパーパスを打ち出した株式会社ソミックマネジメントホールディングス副社長、石川彰吾さんに、これまでの100年と、これからの100年についてうかがった。

自動車産業と共に歩んだソミックの100年

ソミック石川の製品 左上タイロットエンド、左下コントロールアーム、右サスペンション(提供:ソミックグループ)

1916年、静岡県浜松市で織機用ボルトナット工場として「石川鐵工場」は設立された。

かつて「繊維のまち」と呼ばれた浜松市周辺では、のちに世界的な自動車メーカーとなるトヨタやスズキの前進となる会社が、織機工場として産声を上げていた。

織機の部品メーカーだった石川鐵工場に変化が訪れたのは、1937年のこと。その後、国産車製造に舵を切ったトヨタ自動車に伴い、自動車部品メーカーに変革していくことになる。

2016年に100周年を迎えた同社だが、100年間戦争や天災、そして景気の乱高下にたびたび船体を大きく揺すぶられてきた。第二次世界大戦中は国にビジネスをコントロールされるなか辛酸を舐める時代が続き、2代目が戦地ティモール島で散った。

戦死した2代目に代わり3代目が事業を引き継ぎ、トヨタからの声掛けでトラック用ボールジョイントの製造を始めた同社は、トヨタの戦後隆盛と共に、ボールジョイントメーカーとしての地位を確立していくことになる。

ソミックが手がけるボールジョイントは、現在では国産車の50%〜60%のシェアを占めている。

ボールジョイントとは、自動車の足回りを関節のように支え、安全性を引き出す重要な部品。トヨタを始め、日本車の安全性を語るうえで、同社のボールジョイントは欠かせない存在となっていった。

そして2016年、100周年を迎えた後から同社に、転換のときが訪れる。

「自動車業界100年に一度の大変革期」時代と共に排気ガスを出すガソリン車は、気候変動への主犯格として変革を余儀なくされ、EV系自動車メーカーのテスラや比亜迪などがゲームチェンジを引き起こしたのだ。

ソミックマネージメントホールディングス現副社長、石川彰吾さんは、以下のように語る。

「気候変動や技術の進化を背景に、モビリティ事業領域にある企業は変化を求められました。トヨタ自動車の前社長である豊田章男さんも、『すべての移動を自由にするモビリティカンパニー』への変革を図っています。主要自動車メーカーが変わろうとしているときに、いつまでも伝統的な経営に固執すれば乗り遅れてしまう。我々はこれからの100年に、しっかり向き合わなければなりません」。

次の100年に向けて掲げた、ソミックの「北極星」

100周年を迎えた後からソミックは持続可能な会社に生まれ変わるため、組織の大変革に着手した。

まずは純粋な持ち株会社として株主対応をする「ソミックグループホールディングス」のもとに、経営全ての責任を請け負う「ソミックマネジメントホールディングス」を置いた。

その下には枝分かれした6つの子会社が並び、それぞれ別の事業を展開する。

メインとなるボールジョイント事業を担うのは「ソミック石川」、2021年には新規事業を創造する「ソミックトランスフォーメーション」も設立した。

「社内編成を大きく変えている最中に、新型コロナウイルスによるパンデミックがやってきました。社内には変革を止めるべきだと主張する者もいましたが、コロナが来ているからこそ我々は新しい経営にシフトしていかなければなりません。そこで、コロナ禍でも事業再編を進め、2022年にパーパスとアイデンティティを新たに掲げました」

新しいソミックグループのパーパスは、「次世代へ笑顔をつなぐ」、アイデンティティは「製造業を変革し、創造する」。

さらに2030年までに10個の『世界初』を作り出すことを大変革目標とし、これらを「北極星」として掲げた。

「世界初といっても、我々は既存のビジネスを捨てるわけではありません。既存のビジネスを変革し、持続可能な形にしてさらに成長させていけば、そこにおのずと『世界初』は生まれてくるでしょう。そのためには、まずは北極星をしっかり示し、それに合わせた組織を作る。組織がうまく進むようにするための業務に関するプロセスやルールを変えて、人材を育てる。そして、全てがうまくいっているかどうかを、ちゃんとデータで見ていかなければなりません」

ルールを変えるのは簡単。しかし、人のマインドセットを変えるのが最も難しいと、石川さんは言う。

「もう大量生産・右肩上がりの時代は終わりました。既存事業の変革と新規事業の創出、そして新しい経営への変革を進めなければなりません。当社では、人がより新しいことにチャレンジするために、デジタルテクノロジーを導入することにも積極的に取り組んでいます」。

社運を賭けた100年目のアイデア「SUPPOT」誕生秘話

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SUPPOT(提供:ソミックグループ)

新しいテクノロジーを導入し、自社だけでなくみんなで一緒に問題解決ができる仕組みを作りたい。

その一環としてソミックトランスフォーメーション社で取り組んでいるのが、「作業支援ロボット・SUPPOT」の開発だ。

「このアイデアは、100周年に向けて新規事業を検討していたとき、『悪路でも進める車椅子を作ろう』というアイデアから始まりました」

しかし、自動車部品メーカーが人を乗せるモビリティを作ることは難しい。

そこで、まずは物を運ぶことからスタートしたらどうかと検討されたのが『SUPPOT』だった。この作業支援ロボットが実用化すれば、建設現場での人手不足解消にも繋がる可能性がある。

そこで、SUPPOT開発のために新規事業を創出する会社としてソミックトランスフォーメーションを設立、2022年4月からまずはレンタルからサービスをスタートするまでにこぎつけた。

「みなさん興味を持ってくださるんですが、SUPPOTを実際に走らせるためには、床に置いた物を片付けるなど、少々環境調整が必要です。今はまだ、習慣を変えることに抵抗を感じ、導入を躊躇される会社が多いのが現状です。しかし、DX推進に前向きな経営者は、積極的にトップダウンでSUPPOTを導入してくださいます。一旦導入してみると、人を追従するロボットがまるでペットのようでかわいいというお声もいただいています」

SUPPOTの活用は建設現場だけに止まらない。公園のメンテナンスなどにも活用され、今後は災害時の活躍も期待されている。

変革は1社だけでやる必要はない。社外の専門家や応援してくれるパートナーも巻き込んで、みんなで解決に向かえばいい。

SUPPOTは、デザイン会社やコンサルティング会社を巻き込み、ヒューマンスケールの運搬DXの実現に向け取り組んでいる。

100年製造業に関わって来たからこそ、これからの製造業を変える

2023年に108年目を迎えるソミックグループでは、自前主義だけにこだわらず、多様なステークホルダーと共に問題解決に向けた仕組み作りを目指している。

東京大学発のAI総合研究所、NABLAS社とのコラボレーションもその一環だ。AI技術を活用した外観検査を共同開発し、人による目視作業の負担を減らすなどのDX化にも積極的に取り組んでいる。

また、地域の小学校やスポーツチームなどとタイアップしながら、物質的なモノづくりに囚われず、アイデアを起点とした「コトづくり」の創造を目指すなど、自社の新しい価値の探求にも前向きだ。

2022年8月には、一般社団法人「森林健康経営協会」と共に、浜松市天竜区にあるKicoroの森の健康づくりへの参画も表明している。

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kicoroの森 森林健康経営協会(提供:ソミックグループ)

「当社では製品単位で発生させるCO2の90%が物流関係、つまり材料を購入する際に発生しています。ですから、自社単独ではCO2削減は解決できません。そこで我々は、事業以外のところで自然保護活動やCO2削減に何らかの形で貢献し、その活動を事業にリターンさせることはできないかと考えました」

森を健康に維持する活動に参加することで、自分たちが排出しているCO2を削減するのにはどれほどの環境が必要なのかを認識できる。

また、深刻なシカの食害から田畑や森林を守るための活動支援も行なっているという。

Kicoroの森 c
Kicoroの森

ソミックグループ全体では、社会課題を世界中の人々が垣根を超えて解決していく社会、そして人とロボットの関係が働き方を変えていく世界を「ソミック・ソサイエティ」と名づけ、その実現を目指している。

「我々は100年間、製造業に関わってきました。だからこそ、日本の製造業を持続可能な産業にしたい。そのために共感していただける仲間を増やし、一緒に未来を共創していきたいと考えています」

100年前の地方都市、わずか2畳程度の土間から始まった鍛冶屋は今、世界7ヵ国約7,000人の乗組員を乗せ、仲間を募りながら「北極星」を目指している。

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ライター:

フリーライター・リーガルライター。静岡県浜松市在住。 立命館大学法学部卒。2008年から2021年まで13年間パラリーガルとして法律事務所に勤務。破産管財から刑事事件まで、各分野の法律事件に主任として携わる。独立後は主に法律メディアでの執筆やインタビュー取材などを中心に活動中。

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