ビジネスの第一歩を踏み出す高校生たち
福岡女子商業高等学校とクラウド型経営プラットフォームを提供するフリー株式会社が手を組み、若き世代にビジネスの種をまいた。二者が展開する「起業プログラム」の最終発表会が11月25日、福岡市中央区にあるGROWTH1で行われた。
このプログラムは、同校ビジネスビューティーコースに在籍する高校2・3年生を対象に、今年4月から全50時間の授業として開講された。生徒たちは自らの「なんとかしたい」という課題を掘り下げ、社会に新しい価値を提供するビジネス案を練り上げていった。そして、最終選考に残った10名がこの日、集大成として自らの起業案をプレゼンテーションした。
最優秀賞に輝いた「おしらせふれんず」
審査員をうならせたのは、3年生の長野幸芽さんが提案した「ペット見守りサービス『おしらせふれんず』」だった。このサービスは、ペットの健康状態や異変をいち早く察知するための「ハーネス型デバイス」を活用するものだ。発案の背景には、長野さん自身の苦い経験があるという。
「飼い猫が押し入れの中で熱中症になっていたんです。気付いたときには苦しそうな姿を目の当たりにして……」と、彼女はプレゼンの中で語った。この体験が、悲劇を防ぎたいという強い思いを生み出したのだ。同案は技術的な実現可能性と、ペットへの深い愛情が結びついた点が高く評価された。
受賞後、長野さんは「選ばれたことが信じられませんでした」と語ったが、表情には次第に喜びが浮かんでいった。「私のアイデアが認めてもらえて、本当にうれしいです」と口にしたその姿は、自信と達成感に満ちていた。
挑戦によって得た自信
起業プログラムに参加した当初、長野さんは「私にはできない」と考えていた。しかし授業を通じ、調査設計やプレゼンテーションといったスキルを学び、何度も試行錯誤を重ねるうちに自信をつけていった。「難しいと感じたこともありましたが、繰り返し挑戦することで乗り越えられました」と彼女は振り返る。
プログラムは、単にビジネスを学ぶ場にとどまらず、社会に目を向け、自分がやりたいことを深く考えるきっかけとなった。「高校生のうちに起業したい」という思いはプログラムを通じてより強まり、今では「夢を諦めずに前に進みたい」と語るまでになっている。
個性が光る起業案たち
最終発表会では、長野の案を含めた10個の起業案が披露された。その中には、メイクのサブスクリプションサービス「chou chou Box」や、忘れ物防止アプリ「わすれないモ!」、段ボールのアップサイクル事業「UNIQUE」など、個性豊かなアイデアが並んだ。
審査員たちは、これらの起業案の多様性や実現可能性に感嘆していた。プレゼンテーションの会場では、生徒同士が互いを応援し合う姿も見られた。発表を終えた仲間をハイタッチで迎え、時には笑顔や真剣な意見交換が交わされる。その光景は、競争だけではない温かな場を作り上げていた。
起業がもたらす未来への展望
起業プログラムには、「起業は生き方の一つであり、自分らしく挑戦するための手段である」という考えが込められている。フリー株式会社の担当者は「生徒たちにとって、自分の思いを形にする体験は将来の財産となる」とその意義を語った。
福岡女子商業高校とfreeeが手を携えたこのプログラムは、若い世代に新たな可能性を開く舞台となった。高校生たちが社会に目を向け、自らのアイデアを形にしていく姿は、多くの人々に刺激を与えるに違いない。未来の起業家を育てるこの取り組みが、次なる一歩を刻む日を期待したい。