
東京都新宿区の名門私立・成城中学・高校で教壇に立っていた「マジシャン先生」こと龍野洋介容疑者(45)が、児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで警視庁に逮捕された。被害に遭ったのは高校2年の女子生徒(当時16歳)。龍野容疑者は「身に覚えがない」と容疑を否認しているが、警視庁はSNSを通じた勧誘の実態と、継続的な不適切行為の可能性も視野に入れて捜査を進めている。
SNSで接触、1万円を手渡しインターネットカフェでわいせつ行為か
警視庁少年育成課によると、事件が起きたのは2024年7月9日。豊島区西池袋のインターネットカフェ店内で、龍野容疑者は女子高生に対し、現金1万円を渡してわいせつな行為に及んだ疑いが持たれている。きっかけはSNSだった。女子生徒が投稿した内容に目をつけた龍野容疑者が、自ら誘い出したとみられている。
サイバーパトロール中の警察が不審なやりとりを検知し、事件の発覚につながった。供述によれば、龍野容疑者は「年下の女性に興味があり、これまで10〜30代の女性とSNSを通じて同様の行為をしていた」と語っているという。警視庁は、余罪の可能性も含めて慎重に調べを進めている。
教育現場と“マジック”の二足のわらじ 生徒に親しまれた教員の裏の顔
龍野容疑者は、数学や情報を教える非常勤講師として20年以上の教育歴を持つ一方で、都内の“マジックレストラン”のオーナーという別の顔を持っていた。授業中にもマジックを披露するなどして、生徒からは「マジシャン先生」の愛称で親しまれていた。
成城中学・高校は新宿区に所在し、伝統と進学実績を誇る私立校として知られている。学校関係者は取材に対し、「事実関係を確認中」と述べるにとどまった。
子どもを守るべき教師が“加害者”に 繰り返される教育現場の不祥事
教員によるわいせつ事件は後を絶たない。2024年には全国で児童買春などで摘発された教職員が相次ぎ、信頼回復は容易ではない状況が続いている。SNSの普及により、教師と生徒の境界が曖昧になりがちな現代において、教育現場にはより厳格な倫理観と監督体制が求められている。
今回の事件がサイバーパトロールによって発覚した点も、予防的な監視の重要性を示唆している。一方で、教育機関内部の通報制度や、教職員の私的活動へのモニタリング体制については未整備の面も多く、今後の制度設計の見直しが急務である。
“マジシャン先生”の信頼は、魔法のように消えた
授業中に見せる手品で生徒の心を掴み、「魔法のように楽しい先生」と称されていた男は、今や犯罪容疑者として報道の対象となった。「マジシャン先生」と呼ばれた教員の手元から、誰かの未来を明るくする“タネ”は失われたのだろうか。
最後の“手品”は、教育者として積み重ねた信頼を、一瞬で消し去るマジックだった。あまりにも皮肉な幕切れである。