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社会課題を科学技術で解決する【産総研】の研究成果2選

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日本最大級の公的研究機関、産総研。科学技術によるイノベーションの創出で、社会課題の解決を目指している。本記事では、産総研によるAI技術を用いた画期的な研究成果を紹介する。

産総研とは何か?

産業技術総合研究所(通称:産総研)とは、日本最大級の公的研究機関である。1882年に設立された農商務省地質調査所にルーツを持ち、140年以上に渡る研究活動の歴史がある。2001年に独立行政法人として発足し、“ともに挑む。つぎを創る。”をビジョンに、社会課題解決につながる様々な研究開発をおこなっている。

産総研は、東京とつくばの2カ所に本部機能を持つ。また、全国に12カ所の研究拠点がある。12カ所の研究拠点とは、北海道センター、東北センター、福島再生可能エネルギー研究所、つくばセンター、柏センター、臨海副都心センター、北陸デジタルものづくりセンター、中部センター、関西センター、四国センター、中国センター、九州センターである。

各センターでは総勢約2,300名の研究者が、「エネルギー・環境領域」「生命工学領域」「情報・人間工学領域」「材料・化学領域」「エレクロトニクス・製造領域」「地質調査総合センター」「計量標準総合センター」の7つの研究領域に対して研究を進めている。

そんな産総研が近年力を入れているのが、社会実装である。特に、①エネルギー・環境制約への対応、②少子高齢化の対策、③強靭な国土・防災への貢献、④防疫・感染症対策の4つの社会課題の解決に結びつく革新的な技術を、製品やサービスとして社会に送り出すことに注力している。

では具体的に、社会課題の解決を導く産総研の研究成果にはどんなものがあるのか。2つの事例を紹介する。

茨城県の産総研が電池の有無をAIで自動検出するシステムを開発

2023年7月、使用済みのスマホやタブレットなどの廃棄物に、電池が含まれているかどうかをAIを用いて自動判別するシステムが開発されたことが発表された。

スマホにはリチウムイオン電池が内蔵されている。リチウムイオン電池は、強い衝撃が加わるとショートを起こし、発火につながる可能性がある。そのため、全国のリサイクル施設では、スマホなどの廃製品の電池の有無を作業員が手作業で確認している。この確認作業の手間と時間を解消すべく、茨城県の産総研が開発したのがAI技術を用いた自動判別システムである。

スマホやタブレットの内部構造をX線で透視し、その透視画像を深層学習させたAIで分析することで、高精度かつ網羅的に電池の有無を自動で検出することができる。

産総研が考案した懸濁粒子の自動計測手法、深海での鉱物資源開発に寄与期待

産総研によるAI技術の活用例をもう一つ。深海での鉱物資源の開発に寄与すると期待されているのが、産総研の地質調査総合センター地質情報研究部門が考案した懸濁粒子(けんだくりゅうし)の観測手法である。

懸濁粒子とは、水中に浮遊し、水に溶けない固体粒子のことである。海底で鉱物を採掘しようとすると、採鉱機器の稼動により海底堆積物が巻き上げられることで懸濁粒子が発生する。懸濁粒子が拡散すると、さまざまな生き物の住み家や産卵場所となっているサンゴが埋められてしまい、生態系に悪影響が及んでしまう。深海における資源開発を積極的に進めるためには、懸濁粒子への影響をきちんと評価することが必要だと考えられていたが、既存の手法では深海の懸濁粒子を観測することは困難であった。

そこで産総研によって考案されたのが、物体検出というAI技術を活用して、水中画像から懸濁粒子数を自動で計測する手法である。深海の海水を採取して直接観測する手間を省き、短期間で懸濁粒子のデータ収集ができると期待されている。

最先端の研究成果を見学できる産総研の施設

産総研の最先端の研究成果をこの目で確かめられる施設がある。

それが、つくばセンター(茨城県つくば市)の「サイエンス・スクエア つくば」「地質標本館」と、臨海副都心センター(東京都江東区)の「ライフ・テクノロジー・スタジオ -臨海副都心-」。

これらは産総研の見学施設となっており、研究成果の展示や標本などを見ることができる。

気になった方はぜひ予約のうえ、訪れてみてはいかがだろうか。

【参考】
産総研ホームページ
作業員の経験に頼らず廃棄物内のバッテリーの有無を自動で判別
AI技術を用いた深海における環境影響評価手法を考案

ライター:

1991年東京生まれ。中央大学法律学部出身。卒業後は採用コンサルティング会社に所属。社員インタビュー取材やホームページライティングを中心に活動中。

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