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精神科医が開発した組織の心理的安全性を高める処方箋|メンタルコンパス株式会社 伊井俊貴

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メンタルコンパス株式会社 伊井俊貴
メンタルコンパス株式会社は、精神科医が「心理的安全性」を高める管理職トレーニング「カントレ」を提供し、管理職の育成を行っています。

心理的安全性とは、「psychological safety」を和訳した心理学用語。組織やチームのメンバーの一人ひとりが、安心して発言や行動ができる状態を意味します。Googleのリサーチチームが、「心理的安全性を高めると、チームのパフォーマンスと創造性が向上する」と発表して以来、心理的安全性というキーワードが注目を集めています。

「カントレ」では、知識学習ではなく、管理職の心の柔軟性(柔軟に対応して問題を解決する力)を高め、チームの心理的安全性を向上させることに特化。管理職の行動変容を促し、ヒューマンリスクの発生予防が可能となります。

メンタルコンパスの代表取締役 伊井俊貴さんは、精神科医としてメンタル不調の患者を治療していく中で、患者個人よりも組織の問題の大きさに気付き、この問題解決のために起業しました。「カントレ」の開発経緯や、管理職研修の現状、そしてステークホルダーとの向き合い方について、伊井さんに伺いました。

3年間、試行錯誤を繰り返して管理職トレーニング「カントレ」をリリース

──起業をした経緯についてお聞かせください。

私はもともと精神科の医師をしていたのですが、1対1の治療だけではメンタルの問題を十分に解決することが難しいと感じるようになりました。受診する患者さんは、本人の問題よりも、会社全体のストレスレベルが原因でうつになるケースが多かったのです。そういう現実を目の当たりにして、私は「病院で患者さんを治療するだけでは問題解決にならないのではないか」と感じるようになりました。

そのように悩んでいたときに助言してくれたのが、先輩の佐野亘さんです。厚生労働省の医系技官や、トヨタ自動車株式会社などのメンタル産業医を経験している、組織の仕組みに詳しい精神科医です。彼と共に、組織全体の問題を解決するために取り組もうと、2018年に起業したという経緯です。

──海外と日本を比べた場合、企業における心理学的安全性についての認識は異なりますか。

海外の企業では、心理的安全性が重要だということは、当たり前だと捉えています。日本の企業では、心理的安全性よりも空気を読むことのほうが優先されてしまいます。余計なことを言わない、忖度をすることで、結果的に企業の生産性が損なわれています。

──「カントレ」はどのように作り上げていったのですか。

最初はアプリを開発し、メンタル不調の社員の治療に貢献できれば組織全体が変わるのではないかというアプローチでした。しかし、残念ながら会社の中では、うつになるような人はなるべく排除したいという傾向があるため、なかなか組織全体を変える方向にはいかないのです。経営者に対するコンサルティングのような形で、トップから変えようと思っても、すぐに全体が変わるわけではありません。

結局、組織全体を変えるためにアプローチすべきは管理職だということが明確になりました。管理職の一人ひとりが変わるよりも、その管理職がまとめるグループ全体に対してソリューションを提供するということです。

そのソリューションは、なるべく単純なほうが浸透しやすいことが分かりました。単純化する中で、実際に効果があって一番分かりやすい方法が、管理職の心理的安全性を高めるということです。これが心理学的エビデンスに基づいて、一番うまくいくベストな方法だと言えます。

カントレのトレーニングセンターの内部の様子

心理的安全を高めるカントレのトレーニングセンター

ただし、誰にとってもプラスになるものでなければ、うまく進みません。特に企業にとっては、メンタル不調という課題に対して予算を確保することがネックになります。実際に生産性が向上しなければ、企業にとってはプラスになりません。トレーニングを受ける人にとっても、お客さまの会社全体にとっても、そして弊社にとっても、いいプロダクトでなければなりません。まさに三方よしという形です。

この落ち着きどころを見つけるまでには時間がかかりました。起業から3年間、実際に試し、フィードバックをもらう、という試行錯誤を繰り返して、2021年5月25日に「カントレ」をリリースすることができました。単発で2日間といった一般的な管理職研修とは異なり、半年間で心理的安全性が高められるようなトレーニングをしていきます。

メンタル不調の予防より、早めに相談できる雰囲気づくりが重要

──「カントレ」はどのような業種、規模、地域を対象としているのでしょうか。また費用はどれくらいでしょうか。

業種は特に限定されませんが、大きく分けると2パターンあります。一つは、医療や介護など、人の支援をしている業種です。もう一つは、企業の新規事業部門や、エンジニアなど、より一層の生産性を向上しなければならない分野です。

研修は、6~10人の管理職のグループワークでトレーニングする形式です。対象となる管理職には、5~6人の部下がいることを想定しています。

費用は1名当たり月額49,800円(税込)です。半年間の研修ですので、例えば8人であれば約40万円×6カ月です。

現在は、名古屋エリアの5社でスタートしています。ほとんどオンラインですから、地域に限定されるものではありません。今後、全国の企業に提供していきたいと考えています。

──リモートワークの推進によって、メンタルの課題が、これまで以上にクローズアップされるのではないかと思いますが。

そのとおりです。そもそも、リアルな職場であってもコミュニケーションは難しいものです。リモートワークでは、さらに意思の疎通がしにくくなります。雑談の機会も減り、休憩時間のちょっとした相談もできなくなります。リモートワークが推進され、これまで以上にメンタル不調を訴える人が増えることを危惧しています。

──社員のメンタル不調を予防するには、どのような方法がありますか。

心理的安全性が低い会社、つまり意見を言いにくい会社の場合、先回りして言いやすい環境をつくることが重要です。心理的安全性さえ先に高めておけば、問題を早めに相談してくれるので、対応は比較的取りやすいのです。社員から気軽に言ってくれるわけですから、会社が問題を予測するよりも効率的ですし、結果的にうまくと考えています。

一方で、さまざまなケース別に対応策を事前に検討するなどの予防策は難しいと思います。会社の中ではいろいろな問題が起きますが、それらの原因を一つ一つ予測し、つぶしていくということは、現実的には不可能に近いでしょう。人の心は複雑なものですから、あらゆるケースを想定することは極めて困難です。

ですから、何か問題が起きたときに、まだそれが深刻にならないうちに、社員が「ちょっと調子が悪いのですが」、「この仕事はうまくいかないかもしれません」、「こういうことを言われて、少しつらかったです」などと言うことができる会社の雰囲気づくりが重要になります。そういう訴えがあったときに、直ちに対処することができればいいのです。

カントレのグループセッションの様子

カントレのグループセッションの様子

 

メンタルコンパスのステークホルダーとの向き合い方

──ステークホルダーに関してお聞きかせください。

私は精神科医ですので、どのようにしてビジネスを展開したらよいか分からず、苦労しました。

そもそも金もうけのためにこの事業を始めたわけではありません。組織からのストレスを受けてメンタルに不調を来すという問題を改善したい。この思いをお伝えしていく中で、いろいろな方に興味を持ってもらい、サポートをしていただいたことは、本当にありがたいことだと思います。

結局、自分で悩んでいるよりも、人に聞いて助けてもらって動いたほうが、活動の輪が広がるということは常に実感しています。組織同士の壁を意識せずに賛同してくれる人と一緒にやっていくということは、本当に大事だと思っています。「カントレ」のサービスが役に立つということで、広げることに協力してくれる人もいます。多くの皆さんに助けていただいています。

 

お客様との向き合い方
エイトデザイン株式会社さん

エイトデザインさんは、名古屋市で住宅リノベーションや店舗デザインなどの事業を行っている会社で、カントレセンターをつくってもらいました。カントレセンターとは、新型コロナウイルス感染症対策を講じたトレーニングスタジオです。通常はオンラインで感染リスクを抑え、必要に応じて十分な距離を取ったオフラインでの対応を組み合わせることで、対面と同等のトレーニングを提供します。
 
エイトチェンジ代表取締役の藤井厚志さんとは、創業当時から知り合いで、よく相談に乗ってもらいました。「カントレ」がリリースされてからは、これから組織を発展・継続していこうとされる上で、心理的安全性をベースとした組織づくりに興味を示され、顧客になっていただきました。かなり密に、いろいろ提供し合っています。
 
──藤井さんと付き合っていく中で、印象に残っているシーンや言葉はありますか。
 
「お客さんにとって親切かどうか」を、いつも強調されます。最初は思いを持って始めたわけですけれども、その後は販売しなければなりません。しかし藤井さんは、「どうやったら売れるかを考えるよりも、その人のためになるためにはどうしたらいいか、どのように親切にしてあげればいいかということを考えたほうがいい」と言われました。そのほうが喜ばれるし、結果的に買ってもらえるということは、今の自分の中で基準になっています。
 
例えば広告の文面にしろ、メールにしろ、こちらは売りたいわけなので「メリットはこうです」と主張したくなります。しかし、どうしたら親切にしてあげられるかということを考えて提案する意識を持つことで、自分の中で軸がつくりやすくなりました。
 
──今、藤井さんに聞いてみたいことはありますか。
 
ビジネスのことは全然知らない頃から相談に乗ってもらったのですが、一体どういうところがいいと思って応援してくれたのか、伺ってみたいです。

 

社員・家族との向き合い方
佐野亘さん

共同創業者の佐野さんは、もともと同じ職場で働いていた先輩で、精神科医としてのスキルは私よりもはるかに上です。私が尊敬する精神科医でもあります。私の思いを実現するために協力してくださり、アイデアを出してくれたことは非常にありがたかったです。
 
私が実現したいことは、精神科医として一般的な方向ではありません。リスクもあります。医者をしていれば経済的にも安定していますが、起業したわけですので今後は経営を軌道に乗せなければなりません。医者がビジネスをするということに対して、良く思わない人もいます。そういう中で、協力していただいたことに大変感謝しています。
 
1人で決めて1人で行動することは、なかなか難しいですね。賛同してくれる人がいるということは、とても大事です。1人で考えると詰まってしまいます。誰か1人、きちんと話せる人がいるということは、物事を決断しながら動くきには、とても大事だと常に思います。
 
──今、佐野さんに聞いてみたいことはありますか。
 
心理的安全性は高く運営しているつもりなので、言いたいことは言っているし、聞きたいことは聞いていると思いますが、あらためて感想を聞いてみたいですね。どういうところが楽しくて、どういうところにやりがいを感じているのか。この1年間、一緒に取り組んでみて、いかがでしたか?


 

地域社会・地球環境との向き合い方
弊社を支援してくださる金融機関さん

 

全く新しいモデルなので、当初は金融機関からの融資は受けられませんでした。そのような中で、日本政策金融公庫さんや百五銀行さんなど、幾つかの金融機関が支援してくださいました。ご理解いただける金融機関さんがいてくれたからこそ、3年という試行錯誤の期間を乗り越えていけました。大変感謝しています。これから、しっかりご恩返しができるように頑張ってまいります。

地域社会への貢献

 

職場は、人生の中で多くの時間を過ごすわけですから、そこがどのような環境であるかで人生が変わってくると思います。本来、働くことは楽しいことであるはずですが、心理的安全性が低い状態では仕事に行きたくなくなり、ストレスレベルが上がってしまいます。その結果、家庭や地域社会でも人間関係がうまくいかなくなる、といった影響が出かねません。
 
職場の心理的安全性が高ければ、地域のために何かしようかという余裕が生まれます。結局、働きやすい会社をつくっていくことこそ、地域の中でも心理的安全性を高め、お互いのために生き合う社会を築くことになります。
 
心理的安全性を高めるには、人に優しくしなければならない。傾聴しなければならない。コミュニケーションを取らなければならない……。ただでさえ忙しい職場で、あれもこれも考えて取り組むことは難しいでしょう。多くの企業でそういったマルチタスク的な目標の立て方をしますけれども、それでは結局何をしていいか分かりません。
 
やるべきことは簡単です。数人のチームの中で、話しにくい人にもきちんと話しているかどうか。その点だけ気をつけるだけでいいのです。重要なことは、それだけです。このことを繰り返していけば、きちんと皆のアイデアも出てくるし、うつのときには早めに言ってくれる、アイデアが出た後は行動をしてくれる、行動してくれることによって生産性が高まります。話しにくい人ともきちんと話す。それさえ保たれていれば、いい循環になっていきます。
 
よく、人に優しくしなければならないと言われます。でも、怒鳴ってはいけないというわけではないのです。心理的安全性の高め方は人それぞれです。部下に厳しいことを言う人もいるかもしれません。そういう人が、周囲から「いや、あなたのやり方は、もう時代遅れだ」と言われると、逆につらい立場におかれます。必ずしもそれが間違いとは言えません。そういうリーダーシップも存在します。
 
ただし、それがうまくいかない場合もあるということなのです。要するに、その組織の心理的安全性が高いか低いかということに尽きるのです。怒鳴った結果、相手が黙って何も言えなくなってしまっては駄目ですけれども、「怒鳴られて考えて直してみました。こういうことを私はやってみたいと思います」ということを引き出せれば、そのコミュニケーションスタイルは間違っていないのです。
 
組織ごとにそれぞれ合うやり方があります。これが正しいというものを押し付けるのではなく、それぞれのやり方の中で、どうやったら意見を言いやすくなるかということを考えていくというほうが、気持ち的にも楽です。このような取り組みが、結果的に地域社会への貢献につながっていくと考えています。

 

<プロフィール>

伊井俊貴(いい・としたか)

2008年 富山大学卒業

2010年 名古屋市立大学病院で研修

2012年 名古屋市立大学精神認知行動医学分野大学院入学

2013年 日本若手精神科医の会理事長就任

2018年 メンタルコンパス株式会社を起業

2019年 愛知医科大学非常勤講師を兼務

 

<企業情報>

メンタルコンパス株式会社

https://www.web.mentalcompass.co.jp/

所在地:愛知県名古屋市中区大須4-13-28

電話番号:050-5327-7199

代表者名:伊井俊貴

設立:2018年02月

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WRITER
サイエンスジャーナリスト
小林 浩
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1964年生まれ、群馬県出身。国立群馬高専卒。専攻は水理学と水文学。卒業後、日刊紙『東京タイムズ』をはじめ、各種新聞・雑誌の記者・編集者を務める。その後、映像クリエーターを経て、マルチメディア・コンテンツ制作会社の社長を6年務める。現在は独立し、執筆と映像制作に専念している。執筆は理系の読み物が多い。 研究論文に『景観設計の解析手法』、『遊水モデルによる流出解析手法』、著書に科学哲学啓蒙書『科学盲信警報発令中!』(日本橋出版)、SFコメディー法廷小説『科学の黒幕』(新風舎文庫、筆名・大森浩太郎)などがある。

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