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ジャンプルーキー『先輩、距離感バグってます!』に「AI丸出し」批判殺到 ランキング上位で噴き出した“AI漫画への嫌悪”ともう一つの違和感

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ジャンプルーキー!『先輩、距離感バグってます!』
ジャンプルーキー!『先輩、距離感バグってます!』より引用

ジャンプルーキー!のラブコメ『先輩、距離感バグってます!』に「AI丸出し」「人体の破綻が気になる」と批判が相次ぎ、ランキング上位入りにも賛否。作者も「反AIの人たち」に言及した。そもそもジャンプルーキーで生成AI作画は規約違反なのか。AI漫画への嫌悪感と、ストーリーそのものへの拒否感を検証する。

「これがランキング上位?」ジャンプルーキーの話題作に“AI疑惑”で賛否

「ガチでAI丸出しでありえない」
「5秒で作れるようなAIマンガに負ける人が悪いとは思わない」
「こんなAI漫画掲載するとか編集部どうなってるんだ?」

漫画投稿サイト「ジャンプルーキー!」で公開されているラブコメ漫画『先輩、距離感バグってます!』をめぐり、SNSが荒れている。

同作は9月6日に連載を開始したオフィスラブコメ。
作者自身の紹介によれば、「距離感ゼロの天然巨乳先輩」と「女性経験ゼロの童貞後輩」の間で起きる、“何も起きていないのに妙にエッチな瞬間”を描く作品だ。
作品はランキング上位へ急浮上。作者は9月23日ごろには3位、25日時点では4位だったことを報告しており、一時は2位まで上昇していたという。

ところが、順位が上がるのと並行するように、別の意味でも注目が集まった。
「これ、AIで作っているのでは?」
という声だ。

 

人体、ポーズ、縦書きと横書きの混在…読者が感じた「AIっぽさ」

SNSでは作品について、作画の“AIっぽさ”を指摘する投稿が相次いでいる。

「キャラクターのポーズや人体の破綻が気になる」
「同じページ、同じコマに縦書きと横書きのセリフがあって読みづらい」
「1コマずつ生成した方がまだよかったのでは」
など、かなり具体的な指摘もある。

現在の画像生成AIは急速に進化しており、その進化にともないユーザーの”AIっぽさ回避”の技術も上がり、一枚絵だけを見れば人間が描いた作品との区別が難しいケースも増えた。

一方、漫画となると話は別だ。
同じ人物を別角度から何十コマも描いたり、服装や髪型を維持したり、身体の位置関係をつなげるなどの、「連続した絵による物語」を作る際には、一枚絵とは違った難しさがある。

『先輩、距離感バグってます!』に寄せられた批判も、単純に「絵柄がAIっぽい」というものだけではなく、漫画として読んだ際に生じる違和感を指摘するものが目立っている。

 

作者も「反AIの人たち」に言及 コメント欄に批判殺到か

一方、作品をめぐってAI批判が起きていること自体は、作者自身も認識しているようだ。
作者・虫松氏は9月25日、カクヨムの近況ノートで作品がランキング4位になったことを報告。

そのうえで、1話のコメント欄について、「反AIの人たち」から批判的なコメントが多数寄せられているとして、集計終了後にコメントを非表示にする意向を示している。
つまり、SNSだけでなく作品のコメント欄にもAI利用をめぐる批判が押し寄せていたようだ。
作者は批判に対してかなり強気な姿勢も見せている。

しかし、ここで一つ疑問が浮かぶ。
そもそもジャンプルーキー!では、AIを使って漫画を作ってはいけないのだろうか。

 

ジャンプルーキーで「AI作画」は規約違反なのか?

結論からいえば、少なくとも現在公開されているジャンプルーキー!の公式情報を確認した限りでは、生成AIを利用した作画そのものを一律禁止するルールは確認できなかった。
ジャンプルーキー!のガイドラインでは、差別表現、性表現、暴力・残虐表現、違法・反社会的行為、第三者の権利を侵害する表現などが禁止事項として整理されている。
漫画賞についても、ガイドラインや利用規約に違反した作品は審査対象外になることが明記されている。

しかし、「生成AIで描いた漫画は投稿禁止」という明示的な規定は、今回確認できた公開情報には見当たらない。
そして、さらに重要な実例がある。

 

実は「作画:生成AI」の作品がルーキー賞最終候補になっていた

ジャンプルーキー!には過去、堂々と

「作画:生成AI。ネーム:人間」

と明記した漫画が投稿されている。

オキヌケ船長氏による『JKになったおっさんがファミレスで駄弁る話』だ。

作者は、作画には生成AIを使用する一方、ネーム、背景、トーン、コマ割り、描き文字などは人間が担当していると説明している。
そして同作は、なんと2024年7月期の「月間ルーキー賞」最終候補作になっている。

つまり少なくとも過去の運用実績を見る限り、
「AIを使った=ジャンプルーキー!ではアウト」
とは言えない。
ここは今回の騒動を考えるうえで非常に重要だ。

「ジャンプ編集部、何してる?」は少し違う、ジャンプルーキー!は投稿プラットフォーム

SNSでは、
「ジャンプ編集部、そろそろさ……」
「こんなAI漫画掲載するとか編集部どうなってるんだ」
といった趣旨の批判も出ている。

ただ、ここには少し誤解がある。
ジャンプルーキー!は、「少年ジャンプ+」編集部が一本一本を選び、商業作品として掲載している媒体とは仕組みが違う。

公式自身が「誰でもジャンプでデビューできる、マンガ投稿サービス」と掲げているように、基本的にはクリエイターが自ら作品を投稿するプラットフォームだ。

したがって、
「ジャンプルーキー!に載っている」=「ジャンプ編集部が作品を選んで掲載した」
ではない。

もっとも、ランキング上位作品が注目を浴びたり、月間ルーキー賞などを通じて編集部との接点につながったりする仕組みはある。
だからこそ、AI漫画がランキング上位へ来ることに、手描きの漫画家や読者が複雑な感情を抱くのだろう。

 

「5秒で作れるAI漫画に負ける人が悪いとは思わない」

今回、特に象徴的なのが、
「5秒で作れるようなAIマンガに負ける人が悪いとは、僕は絶対に思わない」
というSNS上の反応だ。

もちろん、本作が実際に「5秒」で作られているという意味ではない。
AI漫画であっても、プロンプト作成、画像選定、修正、コマ割り、セリフ、編集などに相応の作業が必要な場合もある。
それでも、手描きの漫画家が一枚の原稿に何時間もかけていることを考えれば、制作速度に大きな差が生まれ得るのは確かだ。

一日かけて数ページ描く人と、大量の画像を生成して短期間で作品を投稿できる人が、同じランキングで競う。
そこに「同じ土俵でいいのか」という感情が生まれるのは理解できる。

 

なぜAI漫画はここまで嫌われるのか

しかし今回の炎上を眺めていると、単なる作品批評以上の熱量を感じる。
「絵が下手」
「漫画として読みづらい」
という批判だけではない。

「AIを使っていること自体が嫌だ」
という拒否感がかなり強いのだ。

背景には、生成AIをめぐって続いてきた著作権や学習データ、クリエイターの仕事への影響など、さまざまな論争がある。
特に漫画やイラストの世界では、AIの学習に既存作品が使われることへの反発も根強い。

何年もデッサンを練習し、背景を描き、人体を学ぶ。
ネームを切って、何度もボツを食らう。
そうして技術を積み上げてきた人の横で、生成AIを使った作品がランキング上位に入る。

そこに理屈を超えた抵抗感を覚える人がいるのも、不思議ではない。

 

ただ、本当に「AIだから」気持ち悪いのか?

一方で今回、もう一つ切り分けて考えたい問題がある。
『先輩、距離感バグってます!』への拒否反応は、本当にすべてAI作画への嫌悪感なのかということだ。

作品そのものにも、かなりクセがある。
公式に紹介されたあらすじは、
「距離感ゼロの天然巨乳先輩 × 女性経験ゼロの童貞後輩」。
そして「何も起きてないのに妙にエッチな瞬間」を描くオフィスラブコメだ。
作者の近況ノートによれば、その後は同棲編へ進み、恋のライバルなども登場している。

こうした設定自体はラブコメでは珍しいものではない。
ただ、「巨乳の女性先輩が無自覚に男性後輩との距離を詰める」という構図や性的なシチュエーションをどう受け取るかは、読者によって大きく分かれる。

AI作画への違和感と、作品の性的なノリへの拒否感。
この二つが混ざり合って、「AIすぎるし、話も気持ち悪い」という強烈な拒絶反応につながっている可能性もありそうだ。

 

人間が描いていたら、同じ漫画はここまで炎上したのか

ここで興味深い思考実験ができる。
仮に『先輩、距離感バグってます!』とまったく同じストーリーを、画力の高い漫画家がすべて手描きで制作していたら、同じように炎上しただろうか。

逆も考えられる。
ストーリーが圧倒的に面白く、セリフも魅力的で、キャラクターにも深みがあり、その作画だけがAIだった場合、ここまで拒絶されたのだろうか。

今回の反応を見る限り、「AIだから嫌い」と「漫画として好きではない」が混線している部分は少なくなさそうだ。
そして、この二つを切り分けない限り、「AI漫画はありかなしか」という議論も前へ進みにくい。

 

AI漫画が増えたとき、ランキングはどうなる?

今回、最も興味深いのは作品そのものより、これから起きるかもしれない未来だ。
生成AIの性能は今後も上がる。
キャラクターの一貫性が改善され、人体の破綻が減り、コマ間の連続性まで自動で生成できるようになれば、現在指摘されている「AIっぽさ」は急速に消えていくだろう。
そうなったとき、漫画投稿サイトには大量のAI漫画が投稿される可能性がある。

一人の作者が月に一本描く世界で、一人がAIを使って月に10本、100本投稿できるようになったらどうなるのか。
ランキングを人間とAIで分けるのか。
AI使用を明記するのか。
AIの使用割合によってカテゴリーを分けるのか。
それとも、作り方は問わず「読者が面白いと思った作品が勝つ」とするのか。

ジャンプルーキー!だけでなく、漫画投稿サービス全体がいずれ向き合う問題になりそうだ。

 

「AIを使ったか」より「何を作ったか」の時代は来るのか

『先輩、距離感バグってます!』をめぐる騒動は、一見すれば「AIっぽい漫画が炎上した」というだけの出来事だ。

しかし、その奥にはかなり大きな問いがある。
漫画にとって「描く」とは何なのか。
何年も絵を練習することに価値があるのか。
ストーリーと演出さえ人間が作れば、絵はAIでも漫画家なのか。
そして読者は、作品そのものではなく「誰が、どうやって作ったか」まで含めて漫画を評価するのか。

現状、ジャンプルーキー!では生成AI作画が一律禁止されているとは確認できず、過去には生成AI作画を明記した作品が月間ルーキー賞最終候補にも残っている。
つまり少なくともプラットフォーム上では、AI漫画がすでに「存在するかどうか」を議論する段階は過ぎている。
これから問われるのは、人間が描いた漫画とAIを利用した漫画を、同じランキング、同じ賞、同じ評価軸で競わせるのかということなのだろう。

そしてもう一つ。
AIへの嫌悪感をいったん脇に置いたとき、それでもその漫画を「面白い」と思えるのか。
『先輩、距離感バグってます!』をめぐる賛否は、AI時代の漫画がこれから何度も突きつけられるであろう、その厄介な問いを一足先に可視化したのかもしれない。

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軽田 カルダモン

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スパイスの妖精。ライター歴10年。

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