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台風25号で印旛沼決壊 ウナギ5万匹流出 被害は数千万円超、復旧未定

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台風25号 印旛沼 決壊 うなぎ
台風25号の大雨で、千葉県北部の印旛沼が1968年の管理開始以来初めて堤防決壊した。
22日早朝のピーク水位は5.04メートル。
成田市の印旛沼漁業協同組合の養鰻場が浸水し、井戸水で育てたウナギ約5万匹が流された。
雨が止んだあとに水が広がる時差災害が、住宅、田んぼ、道路、養魚場を同時に襲っている。
水位は少しずつ下がっても、決壊口の着工時期は見えない。周辺の養鰻では、設備被害だけで数千万円と語る業者もある。
種苗と設備が同時にやられれば、被害は億円単位に達する事業もある。
 

雨が止んだあと、堤防が切れた

21日から強い雨が流域を覆い、成田では日降水量239.5ミリ、佐倉では278.0ミリを観測した。
48時間雨量は300ミリを超えた。22日早朝、西印旛沼は基準点から5.04メートルと過去最高を記録した。
8月豪雨時の4.33メートルも上回る。計画高水位の4.25メートルを超えた状態が1日以上続いた。

水資源機構は17日から予備排水を始め、20日夜からは利根川と東京湾へポンプ排水していた。
担当者は「計画の想定を超える雨量だった。8月から続いた雨で土中の水分量が多かったことも一因ではないか」と説明する。
北印旛沼の船形干拓で約100メートル、角川でも破堤し、栄町の長門川も決壊した。
東京理科大の二瓶泰雄教授は「流域に雨が降り続き、排水能力を超えて水位が上がった」と指摘する。
高低差の小さい沼では、上流の水が遅れて集まり、雨のピーク後に堤防へ負荷が乗る。
決壊は管理開始後、初めてだった。

 

井戸水で育てた5万匹が、泥水に消えた

成田市の養鰻場では、九十九里沖など県内で獲った稚魚を井戸水で28度に保って育ててきた。
漁協は約180人で構成され、輸入物が多い時代にも地元産にこだわった。
直営レストランでは「輸入物とは味が違う」と県内外の客が訪れていた。
22日、水位は約2メートル近くまで上がり、飼育池から井戸水をくみ上げるモーター、温度調節装置まで水没した。

組合担当者は「きれいな水で育ててきたから泥が混じったような水ではすぐに死んでしまう。全滅だ」と話した。
24日も駐車場にはウナギの死骸が沈んでいた。
近くで養鰻を営むやまきねの臼井優太郎社長は魚の流出は免れたが、「機械が水没して使えない。何千万とかいくんじゃないですかね。無残ですよね、絶句というか」と語った。
種苗と加温、循環装置が一度にやられる養鰻では、被害が数千万円から億円単位に膨らむ業者もある。

 

沼の水は、まだ引かない

24日午後6時、北印旛沼の水位は3.38メートルまで下がった。
この時期の平常水位は約2.3メートルとされ、まだ1メートル以上高い。
西印旛沼もはん濫注意水位の3.40メートル付近を行き来する。
栄町の印旛水門付近ではポンプ車11台が利根川へ排水し、花見川方向にもポンプを置いている。

知事は佐倉市街の水が徐々に引いてきたと説明したが、成田市や栄町の沼際では田んぼと道路が水に残る。
栄町の60代女性は「まさか、ここまで水が来るとは」と肩を落とした。
住宅街ではカヌーで自宅に戻る光景も報じられた。
住宅浸水は県全体で床上床下合わせて884棟の暫定値で、成田市分はこれから増える。
浸水した太陽光パネルの発火も確認された。
成田市は公津小と八生小の避難所を開き、通行止め解除の見込みを未定とする。

 

着工の水位すら、まだ決まっていない

印旛沼は利根川と東京湾へポンプで出す治水の要だ。
沼の水位が高いと高崎川など周辺河川も吐き出せず、佐倉市では床上300棟が水に漬かった。
県担当者は「水位が下がれば国と復旧するが、どこまで下がったら着工するかなど詳細は決まっていない」と話す。
国のTEC-FORCEは入ったが、期限は早期の機能回復を目指すまでだ。
約100メートルの破堤は、水が十分下がってからでないと盛土も矢板も入れられない。

低平地の干拓は自然排水が弱く、決壊口が開いたままでは浸水域と沼がつながり続ける。
次の雨があれば下げ止まりや再上昇もある。
養鰻の再開は泥の除去、井戸と加温の復旧、種苗の再確保がそろってからだ。
水が引くことと、池が再び使えることは別である。

 

どこかで生き延びてほしい

組合長の小川佳男さん(89)は、毎日新聞の取材にこう答えた。
「印旛沼のウナギは他と違うと喜んでもらえるのがうれしかった。天災だから仕方がないが、逃げたウナギには、水が引いた後もどこかの用水とかで生き延びてほしい」。
記事に寄せられた声でも「どこかで生き延びていてほしいという言葉に涙が出そうになった」「生き物を育てて生計を立てることは単なる商売ではない」との反応が続いた。
保険があれば足りる、という見方もあるが、現場では商品以上の損失として語られている。
5万匹は数字である前に、何年も水温を守って育てた仕事そのものだ。水位は少しずつ下がっている。
爪痕が消えるのは、排水と堤防修復と、同じ池でまた育てられるかどうかの先になる。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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