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漫画が105万円の高額出品でも完売の謎 メルカリに出現した”何でも105万円”の闇市を追う

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メルカリのコーポレートサイトのサステナビリティ欄
メルカリのコーポレートサイトのサステナビリティ欄より

SNSを凍りつかせた一枚のスクリーンショット

9月8日午後6時半。X(旧Twitter)に投稿された一枚のスクリーンショットが、瞬く間に2万4千の「いいね」を集めた。

「メルカリでのマネロンの闇を教えてもらって恐怖してる。なんじゃこりゃ…」

 

添えられた画像に写っていたのは、フリマアプリ大手・メルカリの商品一覧だった。「魯迅選集 改訂版 全13巻セット」「とらドラ!コミック版 1-8巻セット」「宇宙兄弟 コミック1-31巻セット」「ソニー DVDポータブルリモコン」「折りたたみ式ヘッドホン」――。並んでいるのは、どこの家庭にもありそうな古本と家電の類である。

異様なのは、その値札だ。

すべて、105万円。

中古のリモコンが105万円。ビジネスフォンが105万円。2018年発行の月刊誌1冊が105万円。そして何より背筋を寒くさせるのは、その多くに赤い「SOLD」の帯が誇らしげに貼られていることだった。

つまり、売れているのである。

なぜ「105万円」なのか 絶妙すぎる価格設定

 

まず誰もが抱く疑問は、この不可解な数字だろう。100万円でも110万円でもなく、なぜ105万円なのか。

「この価格設定は、素人の思いつきではありません」

そう指摘するのは、資金決済に詳しい金融関係者だ。

「注目すべきは贈与税の基礎控除、年間110万円というラインです。110万円を超える贈与を受けると申告義務が生じ、税務署の目に留まりやすくなる。105万円という数字は、その一歩手前に置かれている。さらにメルカリの販売手数料10%を差し引くと、出品者の手取りは94万5千円。仮に『資金の受け渡し』が目的だとすれば、100万円弱を一度に、しかも”商取引の体裁”で動かせる計算になります」

もう一つの見方が、税法上の「生活用動産」の扱いだ。自分が使っていた家具や衣類、書籍などの日用品を売った利益は、原則として非課税とされている。

「汚れた金を『不用品を売って得た、税務上まっさらな収入』に化けさせる――そういう筋書きを疑う声がSNS上で相次いだのは、この非課税ルールの存在があるからです。もちろん、実態が商行為や資金移動であれば話は別で、課税や犯罪収益移転防止の網がかかり得る。しかし、外形上は『古本が高く売れただけ』に見えてしまう」(同前)

漫画のセットが105万円で売れること自体は、法律のどこにも触れない。値段は売り手と買い手が合意すれば成立する。その「建前」の隙間に、この奇妙な市場は根を張っているように見える。

 

誰が売り、誰が買うのか 想定される三つのシナリオ

では実際、105万円のリモコンを買っているのは何者なのか。取材を進めると、ネット上の詐欺・不正決済事情に通じた関係者から、想定されるシナリオがいくつか浮かび上がってきた。

第一のシナリオは、単純な「送金」の偽装である。

「AさんがBさんに100万円を渡したい。しかし銀行送金は記録が残り、理由も問われかねない。そこでBが適当な古本を105万円で出品し、Aが購入する。外から見えるのは『中古品の売買』だけ。振り込め詐欺の被害金の回収役への分配、闇バイトの報酬支払い、反社会的勢力への上納――用途はいくらでも想像できます」

第二のシナリオは、不正入手されたクレジットカードの現金化だ。

「フィッシングやスキミングで盗んだカード情報は、そのままでは”数字の列”にすぎません。しかし、その情報で自分(あるいは仲間)の出品物を買えば、カードの与信枠が売上金という現金に変わる。SNS上でも『スキャニングしたクレジットカードの現金化ではないか』と指摘する投稿が拡散しました。投げ銭サイトを使った資金洗浄と同じ構図だ、という声もあります」

第三のシナリオは、より古典的な資金洗浄(マネーロンダリング)である。

 

犯罪で得た現金を、フリマの売上として口座に戻す。「不用品がたまたま高値で売れた」という説明を用意した上で、だ。

「かつてメルカリでは現金そのものや、チャージ済みのプリペイドカードが額面以上で出品され、社会問題になった経緯があります。運営が規制すれば、手口は姿を変えて生き残る。現金がダメなら古本を”現金の器”にすればいい。イタチごっこの最新形態が、この105万円市場だという見方です」(同前)

念のため付言すれば、個々の出品が実際にこれらの手口に該当するのか、現時点で捜査当局や税務当局の判断が示されたわけではない。中には物好きな富豪の”爆買い”が混じっている可能性も、理屈の上ではゼロではない。だが、ジャンルも状態もバラバラの品が、判で押したように105万円で並び、次々とSOLDになっていく光景を「偶然」で説明するのは、あまりに苦しい。

「全部SOLDなのが怖い」 放置され続ける理由

 

今回の騒動でユーザーたちが最も不気味がったのは、出品の存在そのものより、「売れている」という事実だった。

「出品するだけならええやんと思ったら全部SOLDなの怖っ」 「令和の闇市の日常」 「AIで即検知できるはずなのに、どこが頑張ってるんですかねぇ」

まとめサイトのコメント欄には、恐怖と呆れの入り混じった声が並ぶ。中でも運営への矛先は鋭い。

「メルカリは売れれば10%の手数料が入る。105万円の取引が成立するたびに10万円強が転がり込む計算です。『場を提供しているだけ』という建前で逃げられる以上、積極的に潰すインセンティブが働きにくいのではないか――そう勘繰る声が出るのは当然でしょう」(前出・金融関係者)

もっとも、これはあくまでSNS上の疑念であり、メルカリが意図的に見逃していると断定できる根拠はない。同社はこれまでも現金出品の禁止や不正検知システムの導入など、規約と監視体制の強化を重ねてきた。だが、ユーザーの目にすら「明らかに異常」と映る105万円の均一相場が、堂々と取引履歴に残り続けている現実は重い。検知が追いついていないのか、優先順位が低いのか。プラットフォームの説明責任が問われる局面である。

 

「ちゃんと税務調査は入ってんのかな? もう不用品を売るレベルじゃなくて完全な商いだよね」――マイナンバーカードとの紐付けで金の流れを透明化すべきだ、という提案までSNSでは飛び出した。

実は制度の網は、静かに狭まりつつある。デジタルプラットフォーム上の高額・反復的な取引については、取引情報を当局が把握する仕組みの整備が国際的にも進んでおり、「フリマだから足がつかない」という時代は終わりに近づいている。それでもなお105万円市場が消えないのは、摘発コストと利益を天秤にかけた”確信犯”が動いているからではないか――関係者はそう見立てる。

「日本の宝」が犯罪インフラになる日

 

メルカリは月間2千万人以上が利用する、日本発の数少ない成功したプラットフォームだ。不用品に再び命を吹き込む循環型経済の旗手として、その社会的意義を疑う者はいない。

だからこそ、である。

善良な主婦が子供服を売り、学生が読み終えた参考書を手放す同じ画面の中で、105万円の”古本”が音もなく売買されている。この落差こそが、今回の騒動が人々を凍りつかせた本当の理由だろう。

魯迅の選集が105万円で「SOLD」になる国。文豪が生きていたら、この光景を何と書いただろうか。阿Q正伝ならぬ「阿Q送金」の顛末に、当局のメスは入るのか。

フリマの棚の奥で蠢く”何でも105万円”の正体――その答え合わせは、そう遠くない日に訪れるはずだ。

 

※本記事は、2026年9月8日にSNSで拡散した投稿および関連するネット上の反応をもとに構成したものです。個別の出品・取引が違法行為に該当するかどうかは、現時点で確認されていません。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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