
北中米ワールドカップで、日本代表の決勝トーナメント1回戦の相手が見えてきた。F組を1位で抜ければモロッコ、2位ならブラジル。SNSには不安の声が広がるが、森保ジャパンに必要なのは相手の名前に一喜一憂することではない。スウェーデン戦で順位を決め切り、次の舞台へ進むだけの強度を示すことだ。
日本代表は首位通過ならモロッコ、2位通過ならブラジル
北中米ワールドカップは日本時間25日、1次リーグC組の順位が確定し、ブラジルが首位、モロッコが2位で決勝トーナメント進出を決めた。スポーツ各紙によると、ブラジルはスコットランドを3-0で下し、ヴィニシウス・ジュニオールが3戦連発となる得点を記録。モロッコもハイチに4-2で逆転勝ちし、同じ勝ち点7に到達したが、得失点差で2位となった。この結果、F組の日本は首位通過ならモロッコ、2位通過ならブラジルと対戦する見通しになり、オランダ戦を2-2で引き分け、チュニジア戦に4-0で勝った森保ジャパンは、スウェーデンとの最終戦で大会の流れを大きく左右する局面を迎えている。
日本は勝ち点4でF組2位。スウェーデン戦で引き分け以上なら2位以内が決まる一方、勝てば首位通過の可能性があり、敗れれば3位に落ちる危険も残る。決勝トーナメント進出に近づいているようで、まだ足元は固まっていない。そこへブラジル、モロッコという具体的な名前が並んだことで、SNSにはどちらも避けたいという空気が広がった。ブラジルの名前には歴史と威圧感があり、モロッコには強豪を苦しめてきた粘りがある。相手が見えた瞬間、日本の突破条件はただの数字ではなく、重さを持った現実に変わった。
ブラジルの怖さ、モロッコのしぶとさ
2位通過でブラジルと当たるなら、1位でモロッコへ回りたい。そう考えるのは自然だ。ブラジルにはヴィニシウス・ジュニオールをはじめ、一度の加速で試合の景色を変える選手がいる。日本がボールを持ち、押し込んでいるように見える時間でも、中盤でのロストや守備のわずかなずれが、そのままゴール前の危機に変わる。内容では大きく崩れていないのに、気づけばスコアだけが動いている。強豪相手の試合で起きるあの嫌な流れを、ブラジルは平然と作ってくる。
ただ、モロッコを引けば楽になるという見方も危うい。モロッコは相手を派手に殴り倒すチームではないが、守備のまとまりと切り替えの速さがあり、試合の温度を自分たちの都合のいいところまで下げてくる。日本がボールを握っても、ペナルティーエリア周辺を固められ、クロスやミドルに逃げる回数が増えれば、時間だけが削られていく。ブラジルが個の圧力で一気に来る相手なら、モロッコは焦りを誘いながら試合を重くしてくる相手だ。どちらがましなのかという雑な比較では、日本が準備すべきものは見えてこない。
日本はチュニジア戦で4得点を奪った攻撃には手応えがある。だが、決勝トーナメントでは前を向く前に寄せられ、パスコースを消され、奪われた瞬間の危険度も上がる。そこで距離感を崩さず、攻撃が単調にならず、少ない好機を仕留められるか。ブラジルかモロッコかという話の前に、強度が上がった相手に同じサッカーを出せるのかが、すでにスウェーデン戦から試されている。
スウェーデン戦で崩れれば、相手選びの話は消える
森保一監督はスウェーデン戦を前に、1位通過か2位通過かという空気に流されず、目の前の試合の難しさを強調した。外から見れば、関心はどうしてもブラジルかモロッコかに向かう。だが、F組3位のスウェーデンは日本戦に勝てば状況を変えられる立場にあり、前線にはスピードと推進力を持つ選手がいる。日本が引き分けでもいいという温度で入れば、その曖昧さはすぐ相手の勢いに変わる。
チュニジア戦の快勝は、日本に勢いを与えた一方で、次も同じように進むという危うい感覚を残す。攻撃がはまった後の試合ほど、入り方を間違えると修正に時間がかかる。ワールドカップの最終戦は、勝ち点表を眺めながら都合よく運べる試合ではない。相手も生き残りをかけてピッチに立ち、裏カードの結果も動き、得失点差も絡む。そこで計算を先に置けば、判断は半歩遅れる。日本がやるべきことは、ブラジルを避けることでも、モロッコを選ぶことでもなく、スウェーデンを上回ることだ。
2位通過にも意味はあるが、狙って選べるものではない
2位通過が必ず悪いわけではない。理由は相手ではなく、会場と移動にある。2位通過なら決勝トーナメント1回戦はヒューストンで行われる見通しで、移動や準備環境の負担は比較的抑えられる。スタジアムの空調設備も含め、コンディション面では無視できない。1位通過の場合はモンテレイでの試合が見込まれ、日本は事前合宿やチュニジア戦で経験しているとはいえ、高温多湿、天候の変化、練習会場までの移動など、選手の体に残る要素は少なくない。
決勝トーナメントは中3日、中4日の連戦になる。1試合の消耗が次の90分に残り、回復の差が終盤の一歩に出る。だから、ブラジルだから2位は最悪、モロッコだから1位が正解とは言い切れないのだ。大会が進むほど、相手の名前だけでなく、移動、気候、回復、練習環境が勝敗のそばまで迫ってくる。ただし、条件面で2位通過に合理性があっても、日本が都合よく順位を調整できるわけではない。スウェーデンは勝ちに来る。オランダの結果も同時に動く。最適なルートを語ることはできても、ピッチで必要なのは計算ではなく、相手の圧力を受けても崩れない強度だ。
3位通過の保険に逃げてはいけない
今大会は48チーム制で、各組上位2チームに加え、3位のうち成績上位8チームも決勝トーナメントに進む。日本は勝ち点4を持っており、3位でも突破の可能性は残る。しかし、それは安心材料というより、最悪を避けるための保険に近い。3位通過になれば相手はさらに読みにくくなり、報道ではI組首位との対戦可能性が高く、フランスやノルウェーが候補に挙がっている。
特にフランスとなれば、ブラジルやモロッコとは別の重さがある。エムバペを中心としたスピードと決定力は、守備陣のわずかな判断ミスを見逃さない。相手だけではなく、会場も移動も読みづらくなり、準備の精度は落ちる。ブラジルかモロッコかという話題が大きくなるほど、日本がまだ3位に落ちる可能性を抱えていることは見えにくくなる。だが、先の相手ばかり語って足元を飛ばせば、日本は自分たちで試合を難しくする。
強豪を怖がるだけの日本ではない
ブラジル、モロッコ、場合によってはフランス。名前だけを並べれば、どれも重い。SNSで不安の声が出るのは自然だが、日本代表はもう強豪の名前だけで飲み込まれるチームではない。昨年10月の国際親善試合ではブラジルに3-2で逆転勝利し、過去14戦目で初白星を挙げた。親善試合とワールドカップ本番は別物だとしても、最初から膝を折る理由にはならない。
ここから先は、日本の現在地がはっきり出る。ブラジルの個の力にどこまで耐えられるのか。モロッコの堅い守備をどう崩すのか。その前に、スウェーデンの圧力を受けても距離感と判断を保てるのか。チュニジア戦で見せた攻撃の勢い、オランダ戦で拾った勝ち点、そこにあった粘りを、順位と内容の両方が懸かる最終戦で出し切れるか。決勝トーナメントの相手は選べない。日本が選べるのは、スウェーデン戦を受け身でやり過ごすのか、自分たちの大会を前に進める一戦にするのかだけだ。



