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長友佑都「W杯が終わる頃には称賛しかない」 森保ジャパンで担う“空気清浄機”の使命

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長友佑都
長友佑都 公式インスタグラムより

名前が呼ばれた瞬間だった。

日本代表発表会見の壇上。鋭い視線を前に向けていた39歳の男の目が、ゆっくりと潤んでいく。これまで4度のW杯を経験し、数々の修羅場をくぐってきた長友佑都が、初めて感情を抑えきれなかった。

「感謝1000%」

その涙の裏で、ネット上では“不要論”が渦巻いていた。最終予選全試合ベンチ外。それでも森保一監督は、長友を北中米W杯メンバーに選んだ。

そして長友は、自らの役割をこう表現した。

「空気清浄機」

この異色の言葉は、いまの森保ジャパンが抱える“見えない不安”を象徴しているのかもしれない。

 

 

「長友佑都」の名前が呼ばれた瞬間、涙があふれた

都内で行われた日本代表会見。フラッシュが飛び交う中、長友は晴れやかな表情を見せていた。

しかし、その数日前。W杯メンバー発表の場では、様子が違った。

森保監督が「長友佑都」と読み上げた直後だった。険しいほど真剣だった表情がわずかに崩れ、目に涙が浮かんだ。

4年前のカタール大会では微動だにしなかった男である。

理由は明白だった。

今年3月、長友は右ハムストリングを負傷した。39歳という年齢での肉離れ。回復への焦り。復帰できるのかという不安。そして、「もう終わりなのではないか」という現実。

本人は会見で「焦りや不安があった」と率直に認めている。

だからこそ、選出は特別だった。

会見では「支えてくれた人たちの顔が走馬灯のように浮かんだ」と振り返った。そこには妻・平愛梨の存在もあった。

会見終盤には、平と4人の息子たちがサプライズ登場。子どもたちが着ていたTシャツには、「ほぼ父の遺伝子」の文字が並ぶ。

張り詰めた会見場に、一瞬だけ柔らかい笑いが広がった。

だが、その和やかな空気とは対照的に、世論は割れていた。

 

なぜ“長友不要論”はここまで広がったのか

今回のW杯メンバー発表で、最も議論を呼んだ選手の一人が長友だった。

理由は明確だ。

W杯アジア最終予選で全10試合ベンチ外。所属するFC東京でも絶対的なレギュラーではない。さらに、負傷明けだった。

ネット上では、

「貴重な1枠を使うべきなのか」
「スタッフでも同じ役割はできるのでは」
「いま必要なのは精神論より戦力では」

といった声が噴出した。

実際、現代サッカーは“情”だけで勝てる世界ではない。

データ、走行距離、強度、スプリント回数。すべてが数値化される時代だ。特にW杯は、たった一つの交代カード、一つの選手枠が勝敗を左右する。

だからこそ、「経験枠」に見える長友選出へ厳しい視線が向くのは自然でもある。

しかも今回は、三笘薫や南野拓実といった主軸不在も予想される状況だった。だからこそ、「なぜ長友なのか」という疑問はさらに強まった。

しかし、その疑問に対して長友は逃げなかった。

 

「空気清浄機」発言に込められた“W杯の嗅覚”

長友は会見で、自身の役割をこう説明した。

「W杯には独特のにおいがある」

そして、

「淀んだ空気を浄化できる」
「空気清浄機のような役割を果たせる」

と語った。

一見すると比喩的で抽象的な表現だ。しかし、歴代のW杯を振り返ると、この言葉は決して大げさではない。

W杯は、通常の大会とは空気が違う。

たった1敗でチームが崩壊しかけることもある。出場機会を巡る不満。メディア報道。SNSでの批判。期待と重圧。選手たちは1カ月以上、極限状態で共同生活を送る。

長友自身、2014年ブラジルW杯ではチームが崩れていく空気を体感した。

初戦敗戦後、日本代表は急速に自信を失った。ピッチ外にも重苦しい空気が漂い、立て直せないまま大会を終えた。

だからこそ長友は、「空気」の怖さを知っている。

森保監督が長友を選んだ理由も、そこにあるのだろう。

 

本田圭佑が語った「見えない仕事」

この長友の役割について、元日本代表の本田圭佑も理解を示している。

本田は取材に対し、「凄いこと。刺激というより尊敬」と語ったうえで、W杯期間中のチーム状態についてこう表現した。

「チームは生き物のように変化する」

勝てば勢いづく。負ければ沈む。その浮き沈みをどう制御するかが、W杯では極めて重要になる。

本田はさらに、「森保さんが見えない部分をつなぎ合わせていくこと」と語り、長友のような存在の必要性を指摘した。

これは興味深い視点だ。

現代サッカーでは戦術分析やフィジカル強化が進む一方、“空気”や“感情”は数値化できない。

しかし、人間が戦う以上、そこが勝敗を左右する場面は確実に存在する。

長友は、まさにその“見えない領域”を担う存在として期待されている。

 

日本代表は「次の段階」に進めるのか

一方で、批判側の意見にも確かな説得力はある。

世界で勝つ国は、最終的に「情」ではなく「実力」で選ぶ。クロアチアのモドリッチやポーランドのレバンドフスキのように、年齢を重ねても第一線で結果を出し続ける選手とは状況が違う、という指摘もある。

実際、日本代表はこれまで何度も「ベスト16の壁」に阻まれてきた。

そこを超えるには、“精神的支柱”ではなく、純粋な戦力強化が必要ではないか。そう考える人が増えているのも事実だ。

つまり今回の長友選出は、単なる一選手の問題ではない。

「日本代表は何を重視して勝とうとしているのか」

という問いそのものなのである。

 

“不要論”を称賛に変えられるか

それでも長友は言い切った。

「W杯が終わる頃には称賛しかないでしょう」

この言葉には、自信だけではなく、覚悟もにじむ。

批判を受けることも理解している。それでも逃げない。39歳になってなお、世界一を本気で口にする。

2010年南アフリカW杯後、長友は「世界一のSBになる」と宣言した。当時、それを笑う声も少なくなかった。

だが、その後インテルへ渡り、日本サッカーの歴史を変えた。

今回もまた、多くの人が「もう無理だ」と言っている。

しかし長友佑都という男は、そうした声を燃料にしてきた選手でもある。

“空気清浄機”という言葉が名言になるのか、それとも迷言で終わるのか。

答えは、北中米W杯のピッチで明らかになる。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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