
「もし親の顔をSNSに出した場合、2人の写真を全国に公開します」。人気YouTuberグループ「コムドット」のリーダー、やまとが発した警告が思わぬ波紋を広げている。家族を無断撮影された怒りから投稿した言葉だったが、今度はやまと自身が法的責任を問われる可能性が浮上したのだ。弁護士からは脅迫罪に当たる可能性も指摘されている。家族のプライバシーを守るための警告が、なぜ問題視されたのか。過去の盗撮トラブルやSNSの反応から、その背景を探る。
親を撮影したカップルに激怒
コムドットは、幼なじみ5人で活動する人気YouTuberグループだ。2018年に結成され、チャンネル登録者数は約430万人。リーダーのやまとは、率直で強気な発言でも知られ、SNSでたびたび注目を集めてきた。今回の騒動が起きたのは10月18日。やまとはInstagramのストーリーズで、親と撮影していた際に、周囲の人から無断でカメラを向けられたと訴えた。景色を撮影するふりをしてスマートフォンをこちらに向けている人が複数いたという。特に遠くから撮影していたカップルに対しては、親の顔をSNSに投稿した場合、相手の写真を全国に公開すると警告した。
この投稿に対し、SNSでは「親まで盗撮されたら黙っていられないという気持ちはわかる」と共感する声が上がる一方、「本当に盗撮していたのか」「有名人が一般人を晒すと脅すのはどうなのか」といった疑問も広がった。さらにやまとは、自身に届いた批判的なDMのスクリーンショットを、送り主のアカウント名などが見える状態で公開。J-CASTニュースによると、DMには公共の場所で撮影していることへの批判が書かれていたという。家族を守るための発信だったはずが、今度はやまと自身の行動が批判の対象となった。
「全国に公開する」は脅迫罪? 弁護士が指摘した危険性
やまとの発言について、弁護士ドットコムは10月22日、顔写真の公開を予告する行為が脅迫罪に当たる可能性を取り上げた。また、弁護士YouTuberの岡野タケシ氏もXで、今回の警告について脅迫に当たるのではないかと指摘している。
刑法222条の脅迫罪は、相手の生命や身体、自由、名誉、財産に危害を加えると告げる行為を対象とする。顔写真を全国に公開するという警告も、相手の名誉などに害を加えると告げたものと評価される場合がある。しかも、コムドットのYouTube登録者数は約430万人。やまとのInstagramも100万人を超えるフォロワーを抱えている。その影響力で一般人の顔写真が拡散されれば、個人の特定や誹謗中傷につながる恐れがある。
さらに、「もし親の顔を公開したら」という条件付きの発言も、脅迫罪が成立する可能性を排除する理由にはならない。実際の判断では発言の内容や状況、相手にどのように伝わったかなどが重要になる。やまとが警告した相手のカップルが投稿を見たかどうかは、現時点で明らかになっていない。家族を守ろうとした発言であっても、その手段によっては自ら法的責任を負う可能性があるということだ。
盗撮した側より、やまとが責任を問われる?
今回の騒動で気になるのは、無断で撮影した側と、相手の顔写真を公開すると警告した側では、どちらが責任を問われるのかという点だ。一般に盗撮と聞けば犯罪を連想するが、公道などで人物を無断撮影する行為は、撮影場所や状況、内容によって法的な扱いが異なる。性的な部位などの撮影を処罰する法律とは別に、通常の人物撮影でも肖像権やプライバシーの侵害として民事上の問題が生じることがある。
一方、無断撮影への報復として相手の顔写真をSNSに公開した場合、今度は公開した側がプライバシー侵害などを問われる可能性がある。今回のやまとは顔写真の公開を予告した段階であり、実際に公開したという事実は確認されていない。しかし、数百万人に届く発信力を使って相手を威嚇する行為には、それ自体に問題が生じる余地がある。無断撮影への怒りを示した結果、今度は相手のプライバシーを脅かす立場になってしまうという皮肉な構図だ。
学生証を控えた過去も
実は、やまとが盗撮に強い態度を示したのは今回が初めてではない。2021年には、カフェのテラス席で撮影していた際、無断でカメラを向けた人物に厳しく注意する様子が動画に収められた。さらに2025年11月に公開されたYouTube動画では、無断撮影していた学生を呼び止め、学生証の情報を控えたうえで、今後も同様の行為があれば学校や勤務先へ報告すると宣言している。
やまとは以前から、有名人であっても無断で撮影されることには強く反発してきた。2025年の動画では、知名度があるから盗撮を我慢すべきだという意見を批判し、撮影される側の気持ちを考えるよう訴えている。今回もその姿勢は変わらず、特に家族まで撮影されたことに怒りをあらわにした。ただ、相手を注意することと、顔写真を大勢のフォロワーに公開すると警告することでは、周囲に与える影響が大きく異なる。これまで繰り返し盗撮を批判してきたやまと自身が、相手のプライバシーへの配慮を問われることになった。
クロちゃんも意味深投稿 人気者の「晒す」発言に広がる波紋
やまとの投稿が話題になった10月18日、お笑いトリオ「安田大サーカス」のクロちゃんもXを更新した。クロちゃんは、SNSで相手を晒したり、仕返しを予告したりする発信について、周囲には脅しのように聞こえると指摘。具体的な人物の名前は挙げていなかったが、投稿のタイミングから、SNSではやまとの騒動に関連した発言ではないかと受け止める人もいた。
今回、やまとへの批判が広がったのは、盗撮被害を訴えたことよりも、その後の強硬な対応が原因だ。家族を守ろうとする姿勢には共感できても、相手を公の場で威嚇する発言には疑問が生じる。特に著名人が一般人の写真やアカウント情報を公開すれば、本人の意図を超えて批判が過熱する可能性がある。投稿を見た第三者が相手を特定し、攻撃する事態へ発展すれば、問題はさらに深刻になる。クロちゃんの投稿も、SNSで誰かを晒すという行為が持つ危険性を考えさせるものだった。
家族を守るために「晒す」は必要だったのか
やまとは今回、親を撮影したとみられるカップルに対し、SNSへの投稿を思いとどまらせようとした。その目的は家族のプライバシーを守ることだったのだろう。しかし、相手の顔写真を全国公開すると警告したことで、自らの行動にも厳しい視線が向けられた。無断撮影された場合には、その場で撮影の中止や画像の削除を求める方法がある。SNSに投稿された場合も、運営会社への削除申請や弁護士への相談など、法的な手段を取ることができる。
コムドットは、若い世代を中心に大きな影響力を持つグループだ。やまとが無断撮影への抗議を続けてきたことで、有名人のプライバシーについて考えるきっかけを得たファンもいるだろう。だからこそ、今回の「全国に公開する」という警告は残念な対応にも映る。家族を守るための行動が、結果的に相手への脅迫と受け取られる可能性を生んだからだ。
そもそも、やまとが訴えているのは、自分や家族が勝手に撮影され、SNSで拡散されることへの恐怖や不快感である。そのやまとが、同じ方法で相手に対抗しようとしたところに、今回の騒動の矛盾がある。無断撮影された側が、今度は加害者として責任を問われる可能性も生じる。家族を守るという目的が正当であっても、その方法まで支持されるとは限らない。人気YouTuberの影響力の大きさと、それをどう使うべきかが改めて問われている。



