
しゃぶしゃぶ食べ放題チェーン「しゃぶ葉」で、配膳ロボットが運ぶ肉を別の客に取られたという報告が再び相次いでいる。しかも、問題になっているのは高価格帯コースの肉だ。2025年にも同じような騒動があり、運営するすかいらーくホールディングスは対策を進めていた。それでも約1年半後に再発し、今度は他人の商品を取ろうとするとロボットが音声で知らせる機能まで導入するという。料理を運ぶために導入された配膳ロボットが、ついに客の行動まで注意する役割を担うことになった。
「自分が頼めない肉」が途中で取られる
しゃぶ葉では、選んだ食べ放題コースによって注文できる肉が異なる。低価格帯では豚肉や鶏肉が中心となり、上位コースになると国産牛やブランド豚などが加わる。注文した肉はネコ型の配膳ロボットが席まで運び、客は自分のテーブルで指定された棚から料理を受け取る。1台のロボットが複数テーブル分の商品をまとめて運ぶこともある。
ところが2026年9月、高価格帯コースを注文した利用者から、運ばれてくる途中で肉を取られたという趣旨の投稿がXで注目を集めた。その後も似た経験談が相次ぎ、すかいらーくHDも店舗と本部で状況を把握しているという。単なる取り間違いなら説明不足の問題として整理できるが、自分のコースでは注文できない肉まで取れば話は変わる。正規料金を払った客の肉が、別の客に途中で取られるという不公平が生じるからだ。
2025年にも起きたのに、なぜまた繰り返されたのか
今回の騒動で気になるのは、初めて起きた問題ではないことだ。2025年2月にも、別の客の料理を配膳ロボットから取られたという投稿がSNSで相次いでいた。当時、すかいらーくHDは、ロボットが複数卓分を運ぶ場合があることを説明し、「青く光っている棚の商品を取る」よう案内していると回答していた。
さらに、テーブル端末に商品到着をアニメーションで表示し、どの棚から取ればよいか分かりやすくする改善も進めた。それでも2026年、同じ問題が再び表面化した。そこで見えてきたのが、単に表示を分かりやすくするだけでは防ぎきれないという現実だった。
配膳だけでなく「入店」まで機械化したことで生まれた隙間
すかいらーくHDは今回、近年導入した「入店案内機」の影響にも触れている。以前なら、店員が客を席まで案内する際に、配膳ロボットの使い方や料理の受け取り方を説明できた。ところが、入店案内まで機械化したことで、そうした説明が十分に届かないケースが出ていたという。
注文はタブレット、配膳はロボット、入店案内も機械、会計もセルフレジ。人手不足への対応や店舗運営の効率化という意味では合理的だが、その一方で、店員が何気なく担っていた「説明する」「確認する」「間違いに気づく」といった役割まで薄くなる。今回の騒動は、機械化によって減った作業の裏側で、新たな隙間が生まれていたことを示している。
ついに配膳ロボットが客を注意する役に
すかいらーくHDは今後、別の客の商品を取ろうとすると音声で知らせる追加機能を、しゃぶ葉全店に導入する予定だ。もともと配膳ロボットの仕事は、店員に代わって料理を運ぶことだった。そこへ、正しい棚を光らせる機能が加わり、端末でも到着を知らせるようになり、今度は間違った商品を取ろうとする客への警告まで求められる。
対策を重ねるたびに、ロボットが担う仕事も増えている。最初は「運ぶ」だけだったものが、いまでは「案内する」「知らせる」「注意する」ところまで広がった。ここまで機能を追加しなければならないこと自体が、今回の問題の根深さを表している。
「客のマナーが悪い」で終わらせると見えないもの
他人の商品だと分かっていて取る行為は、当然ながら利用者側の問題だ。2025年の騒動では、意図的な横取りについて窃盗罪が成立する可能性を指摘する専門家の見解も報じられている。ただ、店側が今回さらに仕組みを変えるのは、「マナーを守ってください」と呼びかけるだけでは再発を防げなかったからだ。
食べ放題では、コースごとに価格差があり、注文できる商品も違う。そこへ複数卓分の商品をまとめて運ぶ配膳ロボットが入ることで、「目の前に来たものは取れてしまう」という状況が生まれる。利用者の善意だけを前提にした仕組みでは、一定数の取り間違いや意図的な横取りまで完全に防ぐことは難しい。だからこそ、今回の対策は「客を信じる仕組み」から「機械が間違いを防ぐ仕組み」への転換ともいえる。
人を減らした結果、機械に求める仕事が増えていく
すかいらーくグループは、2022年末までに全国約2100店舗へ3000台の配膳ロボットを導入してきた。従業員の歩行量削減や片付け時間の短縮など、現場の負担軽減につながった成果も公表している。飲食店の人手不足が続く中、ロボットが必要な存在になっていることは間違いない。
一方で、人が料理を運んでいた頃なら、違う皿に手を伸ばした客へ、その場で声をかけることもできた。使い方が分からない客にも説明できた。そうした細かな対応まで機械に置き換えるには、別の機能を足していく必要がある。2025年に表示を改善し、2026年には音声警告まで加えることになった流れは、その象徴だ。
しゃぶ葉の「高い肉の横取り」が映しているのは、迷惑客だけではない。便利さと省人化を追求した先で、人が無意識に担っていた仕事の多さが見え始めている。配膳ロボットが客を注意するところまで来た今、外食の自動化は次にどこまで進むのか。しゃぶ葉で起きた小さな騒動は、これからの飲食店のあり方まで問いかけている。



