
研修でどれだけ良い話を聞いても、職場に戻って行動が変わらなければ意味はない。そう考えるえひめ中小企業研究所は、自衛隊で培われた訓練や教育の考え方を民間企業向けに再構築し、サバイバルゲームなどを活用した体験型研修を行っている。代表の三好雄介氏が大切にするのは「行動こそ真実」という言葉だ。失敗と振り返り、再挑戦を通じて、人と組織にどんな変化のきっかけをつくろうとしているのか。
「行動こそ真実」を、研修の中で体験する
えひめ中小企業研究所が研修で届けたいと考えているのは、知識そのものではない。目指しているのは、参加者が自分の行動を振り返り、次の一歩を踏み出す「人が変わるきっかけ」をつくることだ。その考えを端的に表す言葉として、代表の三好雄介氏は「行動こそ真実」を大切にしている。
どれだけ良い話を聞いても、職場に戻った後の行動が変わらなければ、研修をした意味はない。そこで、自衛隊で経験してきた訓練や教育の考え方を民間企業向けに再構築し、サバイバルゲームなどを活用した体験型研修「Hands-ON Training」を行っている。
研修では、作戦を立て、仲間と動き、失敗し、振り返り、もう一度挑戦する。そこで重視しているのは、講師が答えを教えることではない。実際に動いた結果を自分たちで振り返る中で、自分の癖やチームの課題に自ら気づくことだ。うまくいかなかったことをそのままにせず、次の行動を変えてみる。そうした体験を重ねることで、研修の場で得た気づきを「知っている」で終わらせず、実際の行動へつなげようとしている。
三好氏が考える研修の役割は、人を一方的に変えることでも、正解を渡すことでもない。一歩踏み出すきっかけをつくり、その人自身が動いてみることにある。だからこそ、「行動こそ真実」という言葉は、研修の考え方だけでなく、その進め方にも重なっている。
14年間の自衛隊経験で見てきた「人」と「組織」
この考え方の原点には、三好氏が14年間にわたり陸上自衛隊で重ねてきた経験がある。普通科部隊での勤務をはじめ、ハイチPKO、東日本大震災の災害派遣、教育隊での隊員教育、広報・募集など、さまざまな立場から「人」と「組織」を見てきた。
その中で身に染みて学んだというのが、どれだけ立派な計画や言葉があっても、最後に組織を動かすのは一人ひとりの行動だということだった。知っていることと、実際にできることは別物である。いざという時に動けるようにするためには、訓練し、失敗し、振り返り、また訓練する。その繰り返しが必要になる。
この経験を民間企業の現場へ届けたいという思いが、えひめ中小企業研究所を始める原動力になった。三好氏は、中小企業では人が育たない、若手が定着しない、管理職が部下との関わり方に迷うといった問題が増えていると捉えている。その一方で、「人はきっかけがあれば変われます」と考えている。
だからこそ、自衛隊で培った「やってみる、失敗する、振り返る、もう一度やる」という教育の仕組みを、そのまま知識として伝えるのではなく、企業の中で実際に経験できる形へ組み替えている。人が変わる最初の一歩をつくること。それが、現在の研修の根底にある。

サバイバルゲームに表れる、普段の職場の姿
サバイバルゲームを使った研修では、普段の職場で起きていることが、そのまま表れるという。指示が伝わらない。必要な情報が共有されない。リーダーだけが考えている。ゲームに取り組む中で、チームの動き方や一人ひとりの行動が目に見える形で現れてくる。
そこで終わらないのが、この研修の特徴だ。自分たちで原因を考え、次のゲームですぐに試す。さっきの動き方では何がうまくいかなかったのかを振り返り、それを次の挑戦で変えてみる。失敗と修正を同じ研修の中で繰り返すことで、考えたことをその場で行動に移す機会をつくっている。
すると、さっきまで動けなかった人が声を出し始めたり、指示待ちだった若手が仲間に働きかけたりすることがあるという。講師から「こう動くべきだ」と答えを与えられた結果ではない。自分たちで振り返り、自分たちで次の行動を考えた後に起きる変化である。
三好氏は、こうした場面を「普段の職場の姿がそのまま表れます」と捉えている。ただし、そこで終わりではない。作戦を立てて仲間と動き、失敗を振り返り、次のゲームで別の動きを試す。その繰り返しの中で、自分の癖やチームの課題に自分自身で気づくことを重視している。研修の中で気づきと再挑戦を行き来できるようにすることが、「行動こそ真実」という考え方を体験へ落とし込む一つの形になっている。
「勉強になった」より、「行動が変わった」
三好氏が研修をしていて最もうれしいと感じるのは、「勉強になりました」と言われた時よりも、「あれから行動が変わりました」と聞けた時だという。自衛隊でも、知っているだけでは足りず、いざという時に実際に動けるよう、訓練と振り返りを重ねてきた。その感覚は、企業研修にも通じている。
研修の場で一時的に動き方が変わったとしても、それだけをゴールにはしていない。三好氏が仕事をしていて最も報われるのは、研修後もその変化が職場で続いていると聞けた時だ。研修中に声を出し始めた人や、仲間に働きかけるようになった若手の変化が、その場だけで終わらず職場へ持ち帰られることを大切にしている。
「行動こそ真実」という言葉が意味するのも、知識を得たかどうかではなく、その後にどう動くかということだ。参加者自身が考え、試し、修正する体験を通して、行動が変わるきっかけをつくる。そこに、えひめ中小企業研究所が研修で届けようとしている価値がある。
愛媛から「人が育つ会社」を増やしていく
自衛隊での経験をもとにしている一方で、三好氏は「自衛隊式」をそのまま企業へ押しつけたいわけではないと話す。企業には企業の文化があり、その会社に合う形へ変えることを前提にしている。自衛隊で学んだ組織づくりや人材育成の考え方の中から、民間企業でも生かせるものを、それぞれの現場に合わせて届けていく。
その先に目指しているのが、「自分で考え、自分から動ける人」を増やすことだ。社長だけが頑張る会社ではなく、社員一人ひとりが会社の未来を自分事として考え、行動する会社を増やしていく。5年後、10年後には、そうした「人が育つ会社」が愛媛からもっと増えている状態を描いている。
三好氏自身も、自衛隊時代から現在まで何度も失敗し、そのたびに動き、修正し、また挑戦してきたという。会社を良くしたい、人を育てたい、自分自身も変わりたい。そう思った時に、完璧な答えが出るまで待つ必要はないというのが、その考えだ。
「まず一歩、やってみる。その一歩が次の景色をつくります」。えひめ中小企業研究所が担おうとしているのは、その最初の一歩を踏み出すきっかけをつくることだ。愛媛から、人が育ち、人が動き、会社が変わっていく。そんな現場を一つでも多くつくることを目指している。




