ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

歯科衛生士不足に「三方良し」で挑む、滋賀南部4市の歯科医師会

コラム&ニュース コラム ニュース
リンクをコピー
一般社団法人草津栗東守山野洲歯科医師会
画像出典:一般社団法人草津栗東守山野洲歯科医師会 プレスリリース

資格を持ちながら働いていない歯科衛生士は、全国に約17万人。免許保有者の半数以上にのぼる。この人材不足に、滋賀県南部の地域歯科医師会が本格的に動き出す。

草津・栗東・守山・野洲の4市の歯科医師で構成する一般社団法人 草津栗東守山野洲歯科医師会が、「歯科衛生士が輝ける地域づくりプロジェクト」を始動した。

 

就業率46.6%、数字が示す危機

歯科衛生士は、予防歯科や口腔ケアを担う国家資格の専門職である。歯科医師の指導のもとで予防処置や診療補助、保健指導を行い、むし歯や歯周病の予防を通じて患者の全身の健康を支える。

ところが、その担い手が足りない。厚生労働省の統計によると、免許保有者32万1241人のうち、実際に就業しているのは14万9579人。就業率は46.6%にとどまる。毎年約7000人が新たに資格を取得しているにもかかわらず、2年間の就業者純増はわずか4396人。同じ2年間で約9600人が、資格を持ちながら働いていない状態になっている計算だ。

「働きたいのに戻りづらい」構造

現場を離れる歯科衛生士が多い背景には、結婚・出産・育児・介護といった女性のライフステージの変化が大きい。「働きたい気持ちはある。でも、戻りづらい」。そんな声の裏には、一度現場を離れると復職しにくい構造的な課題や、育児・家事と業務を両立できる配慮の不足がある。

口腔の健康は全身の健康に直結する。歯科衛生士が地域からいなくなることは、定期検診や予防ケアが受けられなくなることを意味し、むし歯・歯周病の重症化、ひいては全身疾患のリスク増加につながる。「80歳で20本の歯を残す」という8020運動の達成においても、継続的なメインテナンスを担う歯科衛生士の役割は大きい。同会は、これを単なる人材不足ではなく「地域医療の未来を支える人づくり」の課題だと捉えている。

 

地元で学び、地元で働けない滋賀の現実

滋賀県南部には歯科衛生士の養成校がある。しかし近年、大阪や京都など近隣府県の養成校に進学する県出身者は年間50人以上にのぼり、県外に出た多くがそのまま地元に戻らないという現実がある。地域の学生が地域の医療を支える担い手になりきれていない構造が続く。

一方で、滋賀県には歯科衛生士を目指す学生を対象に、年額26万4000円を貸与し、卒業後に県内の医療機関で5年間勤務すれば返還が免除される「修学応援資金制度」がある。県内・県外どちらの養成校に在学していても申請できる。同会は、歯科衛生士が「滋賀で働きたい」と思える環境をつくることこそ、地域医療の未来を守る第一歩だと考えている。

近江商人の理念「三方良し」を土台に

プロジェクトの根底にあるのは、滋賀県に根付く近江商人の理念「三方良し」である。患者にとって安心できる歯科医療、歯科衛生士にとって働きやすい環境、地域医療にとって持続可能な体制。この3つがそろってこそ、本当の意味で地域医療は守られるという考え方だ。

この理念を、採用だけで終わらせない地域づくりへとつなげる。「目指したくなる」「戻りたくなる」「長く働きたくなる」。そんな循環を、歯科医師会として本気で生み出そうとしている。

 

認知拡大から労働環境改善まで5本柱

具体的な取り組みは5本の柱で構成される。第一に、TikTokやInstagramなどのSNSを活用し、歯科衛生士の仕事内容ややりがいを中高生や保護者へ発信する職業認知の拡大。第二に、養成校への進学を後押しする入学者増加の支援。第三に、返還免除のある修学応援資金制度の周知だ。そして第四に、育児・介護などで離職した歯科衛生士が安心して戻れる環境づくりを歯科医師会が主導する復職・定着支援。第五に、歯科衛生士が長く働けるよう勤務環境や働き方の改善を地域全体で進める労働環境改善である。

歯科衛生士は患者と接する時間が長く、「かかりつけの歯科医院」の顔とも言える存在だ。その担い手を地域でどう育て、どう定着させるか。滋賀南部の挑戦は、全国共通の課題への一つの答えになり得る。

Tags

ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、ウェルビーイング関係が多め。

関連記事

タグ

To Top