
17日、株式会社集英社は『週刊少年ジャンプ』33号の全国的な品薄状態を受け、大人気トレーディングカードゲーム『ONE PIECE CARD GAME』の付録展開を当面見合わせると発表した。
転売目的の買い占めに対する出版界きっての巨人の異例の決断は、大きな波紋を広げている。
株式会社集英社が下した苦渋の決断と『週刊少年ジャンプ』33号の救済措置
13日に発売された『週刊少年ジャンプ』33号は、発売直後から全国の書店やコンビニエンスストアから姿を消す事態となった。事態を重く見た株式会社集英社の少年ジャンプ編集部、Vジャンプ編集部、最強ジャンプ編集部は17日、連名で声明文を投稿した。少年ジャンプ編集部の公式Xアカウントの発表によると、集英社は今回の異常事態に対して大きく分けて三つの異例の対応を実施するという。
第一の対応は、買い逃した読者が本誌を読めるよう、紙版の33号を付録カードなしの特別版として、自社通販サイトであるジャンプキャラクターズストアにて受注販売するというものだ。これは純粋に漫画を楽しみたい読者に対し、確実に行き渡るための救済措置である。
第二の対応として、今後の付録展開の中止と見合わせが挙げられる。8月21日発売予定の『Vジャンプ』10月号で予定していたカード「シャーロット・プリン」の付録を急遽中止し、さらに上記3誌での同カードゲームの綴じ込み付録展開を当面の間見合わせるとしている。ただし、紙面には記載されている通り「麦わらの一味3人の最強セットカードの応募者全員大サービス」は予定通り実施される。
第三の対応は、読者向け継続企画への救済措置である。33号を買えずにジャンプチケットラリーチャレンジの応募用チケットを入手できなかった読者へ向け、7月27日発売の35号に同時に利用できるチケットを2枚封入することで不利益が生じないよう配慮した。
集英社は声明の末尾で、公平な購入機会を阻害するような転売を目的とした過度な買占めはお控えいただくよう改めてお願い申し上げますと、利ざやを狙う層へ向けて強く警鐘を鳴らしている。
SNSで交錯する株式会社集英社への支持と送料負担への不満の声
この迅速かつ思い切った決断に対し、SNS上では様々な意見が飛び交っている。あるXユーザーは集英社の対応を妥当な対応だと冷静に評価し、別のユーザーもここまでやるのは異例中の異例であり、現時点で出来る限りの事はしたと思うと、想定外の事態に直面した出版社の苦境に一定の理解を示している。長年の読者と見られる層からは、カードが付録に付くことは昔からあったわけで、ジャンプ購入者が喜んでくれたら良いくらいのものがこういう騒動になるのは悲しいと、熱狂が招いた現状を憂う声も聞かれた。
一方で、代替案として提示された救済措置に対する不満も根強い。通信販売という性質上、本体価格とは別に送料が発生する可能性が高いためだ。あるユーザーは、転売ヤーは送料なしで買えて、純粋な読者は送料プラスで払えというのかと、正直者が損をするような構造に憤りを隠さない。また、1冊320円のために送料を倍払うことになる理不尽さを嘆く声も上がっている。
さらに、ジャンプ単体をいつもより安く売ってカードも単体で販売すればいいのではないかといった販売形態の分離を提案する意見や、付録付きを受注生産にするべきではないかと根本的な販売方式の見直しを求める声も存在している。過去に株式会社集英社から出版された関連ムック本『ONE PIECE magazine』でも同様の買い占め騒動があったと指摘し、カードを本の付録につけないでほしいと懇願する悲痛な叫びも確認できる。こうした声の根底には、読者がないがしろにされているという強い危機感がある。
「主客転倒」の付録文化と出版業界が直面する現代の課題
本来、雑誌の付録とは、作品の世界観を広げ、純粋に読者を喜ばせるためのおまけであるはずだ。しかし、昨今のトレーディングカードゲーム市場の異常な過熱ぶりは、そのおまけに本誌を遥かに凌駕する金銭的価値を持たせ、モラルなき転売行為を助長する結果を招いてしまった。一部のユーザーが皮肉交じりに指摘するように、二束三文のために近所のコンビニを駆けずり回って集める存在が、作品を愛する一般読者の機会を無慈悲に奪い去っているのが今の現実である。
株式会社集英社という出版界の巨人が、自社の看板とも言える人気コンテンツの付録を休止するという重いカードを切った意味は計り知れない。これは、短期的な部数の増加や話題性を犠牲にしてでも、純粋に漫画を読みたいと願う本来の読者を守り抜くという確固たる意思表示であると言える。
だが、この決断をもってしても問題の根本解決には至っていない。今回の受注生産措置で浮き彫りになった送料の自己負担問題は、企業側の自助努力だけではいかんともしがたい流通構造の理不尽さを突きつけている。特定のカードに過剰なプレミア価格がつく市場の歪みが是正されない限り、形を変えて同じ問題が繰り返されるだろう。転売を規制する法整備が追いつかない現状において、フリマアプリなどを運営するプラットフォーム事業者の社会的責任や、我々消費者自身の倫理観がかつてなく問われている。
漫画雑誌が純粋な夢と冒険だけを詰め込み、次号を心待ちにする子どもたちの元へ適正な価格で届く。そんな当たり前の光景を取り戻すために、社会全体でこの狂騒の時代にどう向き合っていくべきか。今回の騒動は、その重い問いを投げかけている。



