
16年ぶりにスクリーンへ帰ってきた『新劇場版☆ケロロ軍曹』。公開前には福田雄一総監督が「完成は試写会の2日前」「シンプルに言うと怒られた」と舞台裏を明かし話題を呼んだ。一方、公開後はSNSを中心に「福田色が強すぎる」と賛否の声も上がっている。
果たして令和の小学生にも通用するのか。その答えを知りたくて、筆者は小学3年生の息子と映画館へ向かった。
映画ケロロ軍曹の完成は試写会2日前?福田雄一総監督が明かした制作舞台裏
モデルプレスなどの報道によると、本作の完成披露試写会の壇上に立った福田雄一総監督は、映画がようやく完成したのはイベントのわずか2日前だったと明かし、「上層部にシンプルに言うと怒られた」と苦笑交じりに振り返った。
実写作品で数々のヒット作を手掛けてきた福田監督が、本格的なアニメ映画の総監督を務めるのは今回が初めて。その制作現場がどのような雰囲気だったのか想像したくなるが、その挑戦ぶりは本編の冒頭から伝わってくる。何せ、「しばらく音沙汰ないと思ったらまたガンプラか」「どうせ最近の子どもは我々を知らないであります」と、ケロロたちがメタ全開の自虐ネタを連発するのだ。
完成が試写会直前までずれ込んだ理由は明かされていないものの、無難な復活劇ではなく、福田監督らしい遊び心を前面に押し出した作品づくりに挑んだことはスクリーンから十分に伝わってきた。
「鬼滅」でも「呪術」でもない 『ケロロ軍曹』とは?令和の子どもにも新鮮な理由
1999年に連載が始まった『ケロロ軍曹』は、地球侵略のためにやって来たカエル型宇宙人・ケロロ軍曹たちが、侵略そっちのけでガンプラ作りや日常の騒動に明け暮れるギャグ作品だ。アニメ化されると子どもだけでなく大人にも支持され、平成を代表する人気シリーズとなった。
一方、現在の小学生にとってはリアルタイム世代ではない。しかし近年は公式YouTubeや動画配信サービスを通じて作品に触れる子どもも多く、「昔のアニメ」というより「初めて見るギャグアニメ」として受け止められている。
近年のアニメは『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』のように、命懸けの戦いや重厚なストーリーが人気を集めてきた。その一方で、宇宙人が地球侵略を忘れ、ガンプラ作りやくだらない騒動を繰り広げるケロロの世界観は、今だからこそ逆に新鮮だ。
実際、劇場には親子連れだけでなく、テレビシリーズを見て育った世代の姿も少なくなかった。子どもにとっては新しいギャグアニメであり、大人にとっては青春を思い出す一本。同じ作品を見ながら、それぞれ違う理由で笑っている。そんな世代を超えた空気こそが、16年ぶりの劇場版ならではの魅力だった。
SixTONESジェシーが一人二役で存在感 あのちゃんら豪華キャストの見どころ
今作が注目を集める大きな理由の一つが、令和を代表する豪華キャストの起用だ。
事前のプロモーションでは、あのちゃんの出演も大きく取り上げられていたが、劇中では出番はそれほど目立たない印象だった。それでも短い登場時間のなかで強い存在感を残しているのは、さすがと言える。
一方で、物語の中心となる新キャラクター、アルルとデルルを一人二役で演じたSixTONES・ジェシーは、出番も多く、その低く落ち着いた声で作品を支えている印象を受けた。
豪華タレントで話題性を高めながら、物語の中核は実力派キャストが担う。そんな配役のバランスも、本作の見どころの一つと言えるだろう。
福田雄一のパロディは小3には不評?ジェシーの渋い美声で寝落ちした息子のリアルな限界
筆者が公開当日、とある郊外の映画館へ小学3年生の息子と足を運ぶと、上映が進むにつれ、福田監督らしい遊び心が次々と飛び出してきた。
いかんせん元ネタを一切知らないケロロ初心者とも言える息子は、ジェシーの低く落ち着いた声を子守歌代わりに、上映後半には「眠くなっちゃった……」と、まさかのギブアップ宣言。少なくとも、大人のメタギャグや内輪ウケの波状攻撃は、わが家の小3息子の笑いのツボには1ミリも響いていなかったのである。
それでも映画が終わると、純粋に「ケロロが好きだから」とグッズ売り場でアクリルキーホルダーを大事そうに買い求め、大喜びしていた。
福田監督らしい個性的な演出については好みが分かれるかもしれない。しかし、ケロロたちキャラクターそのものの魅力は、今もなお子どもたちを惹きつける力を持っている。そんなことを、息子の素直な反応が教えてくれた。
福田組の身内ノリが寒い?新劇場版ケロロ軍曹の公開直後にXで賛否が分かれた理由
上映直後からX(旧ツイッター)などのSNSでは、古参ファンを中心に「作品よりも福田雄一監督のカラーが前面に出ている」といった厳しい意見も見られた。
例えば、
「これただケロロ使って福田が遊んだだけやん。僕が好きなケロロ軍曹を返して欲しい」
「身内ノリというかアドリブが寒い。初のアニメ作品でビビっていつものメンバー呼んだとしか思えない」
「長年の作品で一番怖いのは作品じゃなくて監督カラーの方が前に出ちゃうこと。旧ファン向けじゃなくて酷くガッカリした」
といった声がある一方で、
「いつものケロロですし、色々出てくるパロディは最高でした。ジェシーの渋い声には注目!」
と、満足する感想も投稿されていた。
初代アニメをリアルタイムで見てきた世代は旧シリーズの空気感を期待し、福田作品のファンはいつもの笑いを期待し、子どもたちは純粋なドタバタ劇を楽しみに劇場へ足を運ぶ。
一つの映画に異なる期待が同居しているからこそ、「面白い」「つまらない」という単純な評価ではなく、「一体誰に向けた作品なのか」という議論にまで発展しているのだろう。
本作には福田監督らしい遊び心が随所に散りばめられているが、その中身はここではあえて語るのはよそう。
驚くか、笑うか、戸惑うか。その答えは、ぜひ劇場で確かめてみてほしい。



