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茨城・下妻市長急死 須藤豊次氏の訃報とSNSで過熱する「不法就労通報制度」他殺説

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下妻市長 急逝のおしらせ
画像:下妻市 HP

15日未明、茨城県下妻市の須藤豊次市長(67)が急逝した。今年4月の市長選で初当選を果たし、市政の新たな舵取りを期待された矢先の突然の悲報であった。

しかし現在、この静かな地方都市で起きた首長の死を巡り、インターネット上では異様な事態が進行している。現場の状況から警察が自殺の可能性も視野に調べているという報道に対し、県が推進する「不法就労通報制度」と結びつけ、事件性を疑う声がSNSで急速に拡散しているのだ。

 

深夜の訃報と、一枚の画像が引き起こした波紋

訃報は15日夜、Yahoo!ニュースをはじめとする各メディアを通じて「【茨城・下妻市長 遺体で発見される】」という速報で一斉に報じられた。下妻市公式ウェブサイトの発表によれば、須藤市長の死亡が確認されたのは同日午前0時50分頃である。地方自治法の規定に基づき、次期市長が就任するまでの間、職務代理者を務めることとなった渡辺尚副市長は、「4月に新下妻市長に就任したばかりだったことから、私をはじめ職員一同唯々驚いており、言葉もありません」「ご家族の皆様のお気持ちを考えますと、その悲しみはいかばかりかとお察しいたします」と、市のホームページ上で痛切なコメントを発表している。

だが、遺族や市職員の深い悲しみをよそに、ネット上では瞬く間に一つの物語が形成されていった。発火点となったのは、ある一枚の画像を含むSNSの投稿である。それは、Yahoo!ニュースが11日に配信した「『逮捕で報奨金1万円』不法就労外国人が全国最多の茨城県、全国初の雇用者通報制度1カ月」という記事のスクリーンショットだった。

記事は、高市早苗政権が掲げる外国人との秩序ある共生に向けた現場の試みとして、不法就労外国人を雇う事業者の情報を募り、逮捕につながれば約1万円の報奨金を支払うという茨城県の制度を紹介している。問題となったのは、不法就労助長事件が摘発された現場周辺のネギ畑の写真に、「6月10日、茨城県下妻市」というキャプションが添えられていたことだ。あるSNSユーザーが、この記事の「下妻市」という部分と市長急死の速報を並べ、「え、絶対これやん」という短い言葉とともに投稿した。このポストは1500万件以上の表示回数を記録し、爆発的な勢いで拡散された。

 

「消されたのか」SNS空間で増殖する他殺説と陰謀論

これを機に、SNS上では須藤市長の死に裏があるとする他殺説や暗殺説が溢れ返ることとなった。

「不法滞在を一掃しようとしていた市長さんか、、、そりゃあ消されるわな」 「なぜ下妻市長が自殺偽装で殺されたのか不思議に思っていたが、不法移民の通報制度を始めた人だったのか。それで警察も、遺体発見後に司法解剖せず自殺と早々に公表したのね」

さらに憶測はエスカレートし、「用水路で死体が見つかったのに首吊りの跡があって事件性は無いってなんだそりゃ?」と報道の細部に疑問を呈する声や、「排水路で自殺する人間ているのか? 移民、不法滞在外国人対策に乗り出したのが関係しているのではないか」と推測する意見も飛び交った。また、「もし自殺なのは本当だとしたは、脅されていたんでしょう。想像ですが、家族に危害加える等の脅しがあったのではないでしょうか」と、事件の背景を独自の解釈で補強する者も現れた。

過去の著名人の急死報道を引き合いに出し、「彼も死亡時刻からわずか54分で検死も済まない中、自殺報道。再捜査するべきでは?」と訴えるユーザーや、「ドイツの移民反対派AfD政党の人達も不審死が続出しました」と海外の政治動向と結びつけるユーザーまで現れた。SNS空間において、須藤市長は「不法移民の闇に立ち向かい、巨大な力によって消された悲劇の政治家」という歪んだ偶像に仕立て上げられつつある。

 

虚像を打ち砕く事実と、地域行政のリアル

しかし、熱狂の渦の中で見落とされている重要な事実がある。事実誤認を的確に指摘する冷静なユーザーの声に耳を傾けてみたい。

「不法就労通報制度を推進してるのは県知事で、亡くなった市長の訴えは『市民文化会館』と『砂沼サンビーチ跡地』なんですよね。しかもその事件は通報制度が始まる前」

この指摘の通り、「不法就労通報報奨金制度」は茨城県警への情報提供を促す茨城県主導の施策であり、下妻市が単独で制定したものではない。須藤市長が先の市長選で重点的に訴えていたのは、より市民生活に密着した地域インフラの問題であった。

また、「下妻市内で不法就労者を大量に雇用してる企業は限られるだろうさ。茨城県警がクソ無能じゃなきゃ見当はつくだろうさ」と、安易に巨大な陰謀を疑うのではなく、捜査機関の地道な活動を注視すべきだとする至極真っ当な意見もある。

人は、理解の及ばない突然の悲劇に直面したとき、そこに何らかの因果関係や意味を見出そうとする傾向がある。特に、外国人労働者や不法滞在といった、社会全体の漠然とした不安を刺激するトピックが絡むと、根拠のない点と点の結びつけが、さも真実であるかのように振る舞い始める。

情報の海を漂う我々は、SNSのタイムラインに流れてくる分かりやすい物語に対して、常に立ち止まり、疑う知性を持たねばならない。現在、警察は慎重に現場の状況を調べている。いま我々が社会として為すべきことは、ネット上のノイズに加担して無責任な犯人探しに興じることではない。67年という生涯を閉じ、道半ばで倒れた一人の政治家の死を静かに悼むこと。そして、深い悲しみの中で渡辺副市長を中心に市政の立て直しを図り、新たなリーダーを選ぶことになる下妻市の行く末を、冷静に見守ることである。

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ライター:

Sacco編集・ライター。企業に直接出向く取材が中心。扱う記事はサステナビリティ、エンタメ関係が多め。

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