
アミューズメントポーカールーム「MUSASHI POKER ROOM(むさぽ)」を運営する株式会社MUSASHI Entertainmentの代表取締役・須佐亮太氏が、2026年6月末をもって退任・退社することを6月8日に発表した。退任の理由として須佐氏は「想像以上に大きくなった組織の中で、自身が直接お客様と触れ合う機会が減り、自分のバリューを最大限に活かしづらくなった」と説明した。大企業からの転身、令和の虎への出演、大赤字からのV字回復、全国6店舗への拡大——3年半に凝縮されたその歩みは、ポーカー界隈のみならずビジネスSNS上でも大きな反響を呼んでいる。7月1日からは新体制へ移行する予定だ。
慶應卒の大企業マンから転身
LightTHREEによると、須佐亮太氏は慶應義塾大学を2010年に卒業後、パソナ・JTP・ソフトバンクという大手企業でキャリアを積んだ人物だ。「好きなことを仕事にする」「信頼する友人と仕事をする」という思いから、3年半前にポーカー業界へと転身した。当時は店舗経営の経験はゼロ。手探りの日々から出発したという。
当時、須佐氏には明確なミッションがあった。「日本一レベルの高いゲームができる場をつくる」「仲間との絆を最も大切にする共同体を作る」という2つの理念だ。この旗印のもと、アミューズメントポーカーの可能性に賭け、MUSASHI POKER ROOMの立ち上げに参画した。
マサキングと共闘、令和の虎出演で赤字寸前からV字回復
むさぽの創業に深く関わるのが、ポーカーYouTuber・マサキング氏だ。マサキング氏はポーカーの普及活動を展開しながら、2022年9月にMUSASHI POKER ROOMの渋谷1号店をプロデュースする形でオープンにこぎつけた。
ところが須佐氏が加わる以前のむさぽは、大赤字で「潰れる寸前」の状態だったとマサキング氏は語っている。6月8日、退任発表を受けてXに投稿したマサキング氏は「須佐さんが来る前のむさぽは大赤字で潰れる寸前だった。その後、須佐パワーで奇跡のV字回復。一緒に令和の虎に出たことも良い思い出」とつづり、3年半の共闘への感謝を示した。さらに「まちゃきんからの退職金として来年のWSOPに一緒にいこう!」と呼びかけ、ビジネスパートナー以上の親しみを伝えた。
2023年には須佐氏とマサキング氏が揃ってYouTube番組「令和の虎」に出演し、FC展開への協力を呼びかけた。番組でのプレゼンがきっかけとなり、「おウチdeお肉」創業者でもあるhamu(林眞右)氏が名古屋栄店のフランチャイズ加盟・立ち上げに関わることになった。hamuは須佐氏の退任発表に対してXで「須佐さんが令和の虎で志願者できた日が初めての出会いですが、あの日が懐かしいです。名古屋店立ち上げの際は尽力していただきありがとうございました」と感謝のコメントを寄せた。
3年半で渋谷年間2万人・全国6店舗・独自アプリリリース
須佐氏が代表として在任した3年半で、むさぽは目覚ましい成長を遂げた。渋谷店は年間来場者数が2万人を超える規模に達し、店舗は渋谷・名古屋・神田・仙台・大阪・福岡の全国6拠点へ広がった。組織もポーカースクール事業や運営支援アプリ開発を担うグループ会社を擁するまでに拡大している。
須佐氏が特に注力したのが「競技志向の環境づくり」だ。その象徴が独自アプリ「MUSASHI POKER ROOM」で、リングゲームの成績を可視化し、ゲーム収支の折れ線グラフやレート別プレイ時間などを管理できる。「お金を賭けるのではなく、戦績とランキングによって『負けたくない』という動機を生み出す」という発想に基づく設計だ。令和の虎でもマサキング氏が「ポーカーを面白くするのは負けたくないと思う気持ち。それをお金でなく戦績とランキングで生み出すためにアプリを作った」と語っていた。
また賭博罪や風営法に配慮した「プロ契約制度」も整備した。全店舗ランキング上位0.1%などの条件を満たすプレイヤーに月額10万円の業務委託契約(リングプロ契約)を結ぶ仕組みや、総額20万円の業務委託契約を懸けたトーナメントプロチャレンジも用意。さらに年4回の「USインターン」制度を通じ、優秀なプレイヤーを全額ステーキングで海外に送り出す取り組みも行ってきた。「日本に住みながらポーカープロとして生きていくのは現状ほぼ無理」という国内の構造的課題に対する、須佐氏なりの答えだ。
拡大する組織、経営者の葛藤
急成長が退任を招いたともいえる。渋谷店単体で年間2万人を超える集客となり、グループ会社を抱えるまでに組織が拡大した結果、須佐氏は「現場でお客様と直接向き合うこと」と「経営者として組織を動かすこと」の間で葛藤が生じたと吐露した。
「想像以上に大きくなった組織の中で、自分のバリューを最大限に活かしづらくなった」という言葉は、スタートアップが急拡大する際にしばしば直面する創業者のジレンマを正直に語ったものとして、X上でも共感を呼んでいる。
須佐氏は2026年3月のX投稿で、2026〜2030年を見据えた中期経営計画の骨子も一部公開していた。新業態への積極展開、プライズを100%スポンサー提供とする自社主催大会の構想、新任取締役・新任大会プロデューサーの参画などが示されていた。この中期計画が新体制でどう引き継がれるかは今後の発表を待つことになる。
X上にはポーカープレイヤーや業界関係者からねぎらいの声が相次いだ。「むさぽは僕がめっちゃGTO学んだお店。須佐さんお疲れ様でした」(ヒワキ@PR会社の社長)など、単なる店主への感謝を超えて、日本アミューズメントポーカーの底上げに貢献した人物への評価が集まっている。
須佐氏個人の今後については、プレイヤーとしての復帰を期待する声もあるが、発表時点では具体的な進路には言及がない。7月1日の新体制始動と、続報となる公式発表に注目が集まっている。



