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ディズニーシー“地べた飯”騒動 外国人批判の裏で来園者が本当に失望したもの

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東京ディズニーシー
DALLーEで作成

東京ディズニーシーで、外国人グループが通路付近の地面に座り込み、飲食していた写真がSNSで拡散された。運営会社はキャストが声をかけ、移動してもらったと説明している。

だが、多くの人がざわついたのは、単なるマナー違反だからではない。高いお金を払い、非日常を買いに来た場所で、現実を突きつけられた。その失望こそ、今回の騒動の火種だった。

 

 

夢の国の床に広がった、冷める光景

東京ディズニーシーで撮影されたとされる一枚の写真が、SNS上で大きな波紋を広げた。洞窟の入口付近のような場所に、外国人とみられる男女十数人が地面に座り込み、食事をしている。手には料理の容器があり、周囲にはカップ麺のようなものや水筒も見える。

場所は人気アトラクション、センター・オブ・ジ・アースの入口付近とされる。J-CASTニュースによると、運営会社のオリエンタルランドは、6月1日昼過ぎに複数のキャストがこの行為を目撃し、スマートフォンの翻訳アプリなどを使って声をかけたと説明している。その結果、グループは座り込みや飲食をやめ、移動したという。つまり、運営側が何もしていなかったわけではない。それでも、この騒動は簡単には収まらなかった。写真に写っていた光景が、あまりにもディズニーシーと噛み合っていなかったからだ。

東京ディズニーリゾートは、ただの遊園地ではない。来園者はアトラクションの数だけにお金を払っているわけではない。火山、港町、洞窟、音楽、照明、キャストの立ち居振る舞い、きれいに保たれた通路。そのすべてが組み合わさって、現実から少しだけ遠い場所をつくっている。だから人は高いチケット代を払い、混雑を覚悟し、食事代の高さにもある程度は目をつぶる。ディズニーだから。そう自分に言い聞かせられるだけの空気が、そこにはあるはずだからだ。

その場所で、地面に座り込んで食事を広げる集団が目に入る。冷静に考えれば、駅前や公園なら珍しくもない光景かもしれない。だが、ディズニーシーでそれを見ると、まったく別の意味を持つ。夢の国の床に、急に日常のざらつきが置かれる。非日常を買いに来た人の前に、現実がむき出しのまま転がり込んでくる。その違和感が、多くの人の感情を刺激した。

 

「外国人だから」ではなく「非日常を壊された」怒り

今回の騒動で危ういのは、批判がすぐに外国人観光客のマナー問題へ寄っていくことだ。もちろん、言語や文化の違いはある。パーク内のルールを十分に理解していなかった可能性もある。だからこそ、キャストが翻訳アプリを使って説明した対応には意味がある。ただ、この問題を外国人だからという言葉で片づけると、話は一気に雑になる。同じことを日本人グループがしていても、おそらく批判は起きただろう。

場所取り、割り込み、撮影マナー、パレード待ちをめぐる迷惑行為は、これまでも日本人来園者の間で問題になってきた。国籍が問題なのではない。その場の空気を壊す振る舞いが、見ている人の気持ちを冷まさせるのである。

SNSには、ルール違反を許すべきではないという声が多く並んだ。持ち込み飲食が疑われるなら対応が甘いのではないか、キャストはなぜもっと強く注意しないのか、真面目にルールを守る人が馬鹿を見るのではないか。そうした不満が相次いだ。

一方で、写真を撮影してネットに広げる行為そのものに疑問を示す声や、外国人だけを標的にするような空気を危うく見る声もあった。怒りは一色ではない。だが、中心にあったのは、外国人への反感というより、せっかく買った非日常を乱されたことへの失望だった。

ディズニーでは、多くの来園者がかなりの我慢をしている。長い列に並ぶ。混雑した通路で立ち止まらないよう気を配る。レストランが混んでいれば時間をずらす。ベンチが空いていなければ、休める場所を探して歩く。園内のルールを調べ、持ち込めるものと持ち込めないものを確認する人もいる。誰もが完璧ではないにしても、多くの人は、この場所の雰囲気を壊さないように少しずつ自分を抑えている。

その横で、通路付近に腰を下ろし、食事を広げる集団がいる。事情は分からない。食べ物の入手先も断定できない。それでも写真を見た人の胸に浮かぶのは、だったら自分たちの我慢は何だったのか、という感情だ。この不満は、かなり根が深い。単に飲食ルールを破ったかどうかの話ではない。ルールを守っている人の努力が、軽く扱われたように見えたことへの反発である。

夢の国は、運営だけがつくるものではない。来園者もまた、その空気を守る一員になっている。だからこそ、ひとり、あるいは一組の振る舞いが目立つと、そこにいた人の気持ちは一気に現実へ引き戻される。

 

キャストにだけ背負わせるには重すぎる

オリエンタルランドは、キャストが声をかけ、グループに移動してもらったと説明している。まず説明し、理解を求め、改善してもらう。危険行為や暴力行為ではない以上、現実的な対応としては自然だろう。言葉が通じにくい相手に翻訳アプリを使って伝えたという点も、現場の対応としては当然ながら手間がかかる。注意されて移動したのであれば、その場では一定の解決が図られたことになる。

それでも不満が残ったのは、来園者が見ているのが「注意したかどうか」だけではないからだ。通路を占有する行為に対し、どこまで強く対応するのか。飲食ルールに反している疑いがある場合、どう説明するのか。相手が応じなければ誰が出るのか。こうした線引きが見えないままだと、現場のキャストだけが矢面に立たされる。

来園者はキャストに毅然とした対応を求めるが、混雑したパーク内で十数人のグループに声をかけることは簡単ではない。笑顔と丁寧さを保ちながら空間を守れというのは、かなり重い仕事だ。ディズニーの接客は、しばしば美談として語られる。だが、美談だけでは現場はもたない。

迷惑行為に対応するには、個々のキャストの勇気ではなく、運営としての明確な基準が必要だ。ここまでは案内で済ませる。ここからは別の担当者が対応する。必要なら退園を含めた措置を取る。そうした線が見えていなければ、来園者の不満はキャストへ向かい、キャストはさらに苦しくなる。夢の国の裏側にいる人間に、夢の維持を丸投げしてはいけない。

 

インバウンド時代に試される「同じルール」

今回の騒動は、インバウンドの増加とも切り離せない。観光地には、さまざまな文化や習慣を持つ人が訪れるようになった。これは悪いことではない。多くの観光地にとって、海外からの来訪者は大きな支えでもある。ただ、人が増えれば摩擦も増える。言葉が違うし、常識も違う。日本人同士なら何となく伝わる暗黙の了解が、まったく通じないこともある。

そこで必要なのは、外国人にだけ厳しくすることではないく、日本人にも外国人にも、同じルールを同じ基準で伝えることだ。守るべきことがあるなら、言語が違っても伝わるようにする。違反があれば、国籍に関係なく同じように対応する。これが崩れると、来園者はすぐに気づく。あの人たちは許されるのか、自分たちは守っているのに、という不信感が生まれる。ルールそのものへの信頼は、こういう小さな場面で削れていく。

一方で、SNSの晒しにも危うさがある。迷惑行為があったとしても、その場面を撮影し、ネット上で広げることが常に正しいわけではない。怒りが拡散されると、批判はすぐに個人攻撃へ傾く。外国人という属性が前に出れば、問題はさらに荒れる。

今回の件で必要なのは、特定の人々を叩き続けることではなく、なぜその光景がこれほど人々を冷めさせたのかを考えることだ。そこを見誤ると、ただの感情的な炎上で終わる。

ディズニーが売っているのは、現実を忘れる時間である。だからこそ、現実をむき出しにする行為には人々が敏感になる。地面に座って食事をすること自体が、社会のどこでも絶対に許されない行為というわけではない。だが、場所によって意味は変わる。高級ホテルのロビーで床に座り込めば違和感があるように、劇場の客席で大声で通話すれば空気が壊れるように、ディズニーシーの通路で食事を広げることは、その場の価値を傷つける。

 

夢の国が冷めるのは、一瞬だ

東京ディズニーリゾートの価値は、キャラクターやアトラクションだけでできているわけではない。来園者が安心して歩ける通路、清潔な環境、キャストの所作、利用者同士の遠慮。それらが重なって、ようやく夢の国は夢の国でいられる。どれか一つが欠けただけで、すぐにすべてが壊れるわけではない。だが、壊れたものを放置すれば、人はその空間を信じなくなる。

今回の騒動で見えたのは、外国人観光客のマナー問題だけではない。ディズニーがどこまで自分たちの商品価値を守れるのかという問題である。来園者は安くないお金を払っている。混雑にも耐えている。多少の不便も、ディズニーだからと飲み込んでいる。その代わりに求めているのは、特別な時間が守られているという安心だ。

ルールを知らなかった人には伝えればいい。従ったなら、その場で終わる話でもある。だが、同じことが何度も起き、守る人だけが我慢する空気になれば、夢の国はただの混雑した観光地になる。魔法が解ける瞬間は、派手なトラブルが起きたときではない。ちゃんと守っている人の目の前で、守らない人が何となく通れてしまったときだ。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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