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「一度狙われた家」がまた狙われる…警視庁が警戒する“標的情報”共有の実態

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標的情報
DALLーEで作成

東京・新宿区の酒店が、短期間のうちに二度狙われた。さらに埼玉県や東京都内では、同じ住宅に対する侵入被害や不審者の出没が繰り返し確認されている。警視庁が注視しているのは、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」の間で共有されている可能性がある“標的情報”の存在だ。

なぜ同じ場所が何度も狙われるのか。その背景を追うと、SNSと情報社会が生み出した新たな犯罪構造が浮かび上がってくる。

 

新宿の酒店で起きた“二度目の被害”

東京・新宿区百人町の酒店で強盗未遂事件が起きたのは4月だった。

男たちは配達員を装って事務所に侵入し、クマよけスプレーを噴射して金品を奪おうとしたとみられている。現場からは大量の手袋や登山用ステッキなども押収されており、警視庁は計画的な犯行だったとみて捜査を進めている。

この事件では、20歳の男や高校生ら合わせて6人が強盗未遂容疑などで逮捕された。捜査関係者によると、最初に19歳の少年が「闇バイト」に応募し、その後、友人や知人へ声をかけて実行役を集めていったという。

しかし、事件で特に注目されたのは別の点だった。

実は、この酒店は事件の約1か月前にも窃盗未遂被害に遭っていた。3〜4人のグループが窓ガラスを割って侵入しようとしたとみられている。

警視庁は、それぞれ別グループが関与した可能性も視野に捜査している。つまり、「狙うべき場所」の情報が、複数の実行役グループの間で共有されていた可能性があるということだ。

 

「一度狙われた場所」が、再び狙われる理由

同じ場所が繰り返し狙われるケースは、新宿だけではない。

埼玉県さいたま市では、今年2月に現金などが盗まれた住宅へ、4月にも不審者が侵入した。住人は警察の助言を受け、一時的に別の場所へ避難していたという。

また、東京・小金井市でも、過去に侵入被害を受けた住宅が再び狙われた可能性があるとして、男らが逮捕されている。

従来の強盗事件では、一度失敗した場所を再び狙うケースはそれほど多くなかった。しかし現在は、「入りやすい」「現金がある可能性が高い」といった情報そのものが共有され、別グループによる“再挑戦”が行われている可能性が指摘されている。

捜査関係者は、「一度失敗した後、別の実行役に再び行かせるケースも考えられる」とみている。

ここに、現在の匿名型犯罪の特徴がある。

実行役は入れ替わっても、情報だけは残る。そして、その情報をもとに別の若者たちが動かされていく。

 

「闇バイト」は、なぜ若者を取り込むのか

事件で逮捕された実行役の多くは、10代後半から20代前半だった。

近年、SNSでは「高額案件」「即日現金」といった言葉で実行役を募集する投稿が相次いでいる。軽い気持ちで連絡を取った若者が、運転免許証や顔写真を送るよう求められ、その後、個人情報を握られて脅迫されるケースも少なくない。

「家族に危害を加える」
「逃げても住所は分かっている」

そうして抜け出せなくなり、強盗や特殊詐欺へ加担させられる。

最近では「闇バイト」という呼び方が一般化しているが、実際に行われているのは強盗や監禁、詐欺、さらには強盗殺人だ。

しかも特徴的なのは、従来型の暴力団とは異なり、SNSや秘匿性の高い通信アプリを通じてゆるくつながっている点にある。

トクリュウは、固定メンバーを持たない。事件ごとに実行役を集め、犯行後は離散する。そのため、実行役が逮捕されても、指示役や首謀者にまでたどり着きにくい構造になっている。

 

「標的情報」はどこから漏れるのか

警察が警戒する“標的情報”は、どこから流出しているのか。

現時点で、警視庁が具体的な流出経路を公表しているわけではない。ただ、専門家や捜査関係者の間では、「日常生活の中から情報が集められている可能性」が指摘されている。

たとえば、リフォーム業者や買い取り業者、配送業者、訪問営業など、住宅内部へ入る機会のある仕事は少なくない。

その過程で、間取りや家族構成、生活時間帯、防犯設備の有無などが把握される可能性がある。

「高齢者だけで暮らしている」
「昼間は留守が多い」
「防犯カメラが少ない」

こうした情報は、本来なら単なる生活情報に過ぎない。しかし、犯罪グループにとっては侵入計画を立てる材料になり得る。

さらに、SNSの投稿もリスクになり得る。

旅行中で家を空けていることが分かる投稿や、高価な買い物を公開する写真、家族構成が推測できる内容などは、犯罪側から見れば“情報”として利用される可能性がある。

つまり現在の犯罪は、「誰を狙うか」より、「どんな情報を持っているか」で成立する側面が強くなっている。

 

警察が始めた「仮装身分捜査」

こうした匿名型犯罪に対し、警察も新たな捜査手法を導入している。

それが「仮装身分捜査」だ。

警察官が架空の身分証を使い、闇バイト応募者を装って犯罪グループへ接触する。警察庁によると、すでに複数の事件で実施され、実行役や上位メンバーの逮捕につながっているという。

従来は、事件発生後に実行役を追うしかなかった。しかし仮装身分捜査では、犯行計画の段階からグループ内部へ入り込み、指示役との接点を探ることができる。

一方で、この捜査には課題もある。

架空の身分証使用については、公文書偽造との線引きをどう考えるのかという議論がある。また、潜入捜査の範囲が拡大しすぎれば、プライバシーや監視強化につながる懸念も指摘されている。

ただ、それだけ現在の犯罪が従来型の捜査では対応しにくくなっていることも意味している。

 

「情報」が犯罪を動かす時代へ

今回の一連の事件で浮かび上がったのは、「情報」が犯罪の中心に置かれている現実だった。

かつての犯罪は、人間関係や縄張り、対面でのつながりによって成り立つ部分が大きかった。しかし現在は、SNSや秘匿アプリを通じて匿名のまま指示が出され、実行役はスマートフォン越しに動かされる。

そこでは、人間よりも先に「情報」が流通する。

どこに現金があるのか。誰が住んでいるのか。防犯は弱いのか。そうした情報が共有されることで、「一度狙われた場所」が繰り返し標的になる。

トクリュウ事件が突きつけているのは、単なる治安悪化ではない。

情報社会そのものが、犯罪の形を変え始めているという現実なのかもしれない。

 

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ライター:

Webライター。きれいごとだけでは済まない現実を、少し距離を置いて綴っています。

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