
電子廃棄物のリサイクル事業を手がける株式会社萬年は4月、廃棄リチウムイオンバッテリーを原料にグラフェンを製造・販売する新会社「株式会社GANNEN」を設立したと発表した。
同社プレスリリースによると、鋼鉄の200倍の強度を持つ先端素材グラフェンを従来市場価格の10分の1で安定供給することを目標に掲げ、2027年1月より国内での製造を開始する計画だ。
「夢の次世代素材」グラフェンとは何か
グラフェンは、炭素原子が蜂の巣状の六角形格子(ハニカム構造)で1層につながった2次元物質で、厚みはわずか原子1個分(0.3ナノメートル)。鋼鉄の約200倍の強度、銅を上回る高い導電性、優れた熱伝導性と柔軟性・透明性を兼ね備え、「夢の次世代素材」と称される。2004年に発見され、2010年にはノーベル物理学賞の対象となった。
電子デバイス、エネルギー、医療、自動車コーティングなど幅広い分野への実用化が進んでおり、2026年時点のグローバル市場規模は13億〜19億ドル(約2000億〜3000億円)に達する。わずか0.01〜0.2%の添加でも大幅な性能向上が得られることが実証されており、産業界の注目度は右肩上がりだ。
廃棄バッテリーからグラフェンを取り出す世界唯一の技術
グラフェンの最大の課題は、天然黒鉛から採取する従来法では高品質品の大量生産が困難で、価格が高止まりしてきた点にある。この壁を突き崩したのが、台湾・台中に拠点を置く處鋰科技株式会社だ。
同社は「なぜリチウムイオンバッテリーはリサイクルすると材料としての価値が失われるのか」という問いを起点に約10年の研究を重ね、バッテリーの負極材をグラフェンへと転換する独自技術を確立した。廃棄バッテリーからグラフェンを採取できる方法は世界でも唯一とされ、2023年には量産ラインの稼働と国際的・産業的評価を獲得している。
独占契約の取得と株式会社GANNENの設立
處鋰科技社の存在を知った萬年は2025年、両社の理念の一致を確認した上で同社にアプローチをかけた。萬年が掲げる「資源から、次の社会を見つけ出す」と、處鋰科技社の「先端材料は必ずしも鉱山から来る必要はない」という理念が共鳴し、単なる代理店ではなく共創者としての関係を構築。
日本における独占的OEM契約と製造ライセンスの独占使用権を取得し、2026年4月に株式会社GANNENを設立した。代表取締役社長は望月雄太氏が務める。
従来の1/10の価格で量産、循環型経済の実現へ
GANNENが提供するグラフェンは、廃棄リチウムイオンバッテリー(都市鉱山)を原料とすることで、高性能・低コスト(従来市場価格の10分の1)、量産対応、環境負荷の少ない製造プロセスという三つの特性を実現する。2027年1月から日本国内での製造を開始する予定で、産業界のグラフェン実用化ハードルを大幅に引き下げる可能性を持つ。 EV普及に伴いリチウムイオンバッテリーの廃棄量が急増するなか、その廃棄物を世界最先端の素材に変える。循環型経済の実現と日本産業の高度化という二つの価値を同時に追うこの試みは、素材産業の新たな可能性を切り開こうとしている。



