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綾辻行人「十角館の殺人」偽続編がAmazon Kindleで横行 生成AI悪用でファン騙す無法地帯の実態

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綾辻行人氏
綾辻行人氏 Xより
人気ミステリー作家・綾辻行人氏の名作『十角館の殺人』の続編を装った偽書籍が、AmazonのKindleストアで堂々と販売されていた。生成AIを駆使して本物そっくりの表紙とタイトルを作成し、架空の著者名で出品する手口は悪質極まりない。
作家本人がXで緊急注意喚起を行い、版元と連携して対処を急ぐ事態に発展した。この事件は、誰でも簡単に電子書籍を出版できるKindleプラットフォームの審査の甘さを浮き彫りにし、クリエイターの権利が脅かされる深刻な問題を改めて露呈している。
 

偽本の詳細 本物そっくりの表紙と嘘の宣伝文句でファン誘導

事件の中心となった偽書籍は2冊。タイトルは『続・十角館の殺人』と『十角館の再訪』で、著者名はどちらも「阿津川」となっている。これらは綾辻行人氏が1987年にデビュー作として発表した『十角館の殺人』を直接的に連想させるものだ。表紙デザインは特に問題視されている。

本物の『十角館の殺人』の表紙を担当した漫画家・喜国雅彦氏のイラストをAIで模倣したような画像が使用されており、綾辻氏本人が「こんな書影までAIで作って。喜国雅彦さんの絵のパクリもいいところ。あきれます」と強い不快感を表明した。さらに悪質なのは宣伝文句だ。一部の偽本では「映像化決定」という完全な虚偽の情報を記載し、ファンの興味を煽っていた。

価格は低めに設定され、Kindle Unlimitedの読み放題対象にもなっていた可能性が高く、気軽にダウンロードさせる狙いが明らかである。内容自体も生成AIによる自動生成とみられ、文体やプロットの粗雑さが指摘されているが、購入前に気づくのは難しい。被害は綾辻氏だけに留まらない。

同じ「阿津川」名義で、ミステリー作家・阿津川辰海氏の代表作『蒼海館の殺人』の続編を装った偽書籍も販売されていた。阿津川辰海氏本人も無関係を強調し、「もちろん私は関わっておりません……悪質」と憤りを露わにしている。このように人気作家の名前や作品世界を悪用するパターンが、複数のクリエイターに及んでいる点が深刻だ。

こうした偽本は、生成AIツールの進化により短時間で大量生産可能になった。タイトルを本物に似せ、表紙をAI画像生成で作成し、簡単なプロットを自動で出力するだけで出品できる。ファンが「続編が出た」と勘違いして購入するケースが続出する恐れがあり、著作権侵害だけでなく、読者への欺瞞行為としても問題視されている。

 

綾辻行人氏がXで緊急注意喚起 版元に連絡し対処中

4月3日、綾辻行人氏本人が自身のXアカウントで詳細を公表し、ファンに直接注意を呼びかけた。投稿では次のように述べている。

「AmazonのKindleで『続・十角館の殺人』『十角館の再訪』という作品が『阿津川』という著者名で売られていますが、綾辻はまったく関知しておらず、驚きました。誰かが生成AIで勝手に作ったもののようです。ご注意ください。『十角館の殺人』の版元(講談社)に伝えて対処中です。」さらに追加投稿で、喜国雅彦氏のイラストのパクリを指摘し、呆れを隠せない様子だった。

この迅速な注意喚起により、事件は一気にネット上で広がり、多くのファンが偽本の存在を知ることになった。綾辻氏は新本格ミステリの旗手として知られ、『十角館の殺人』は館シリーズの原点となる重要な作品だ。長年ファンに愛され続け、映像化の話も過去にあった名作を、こうした形で汚されるのは作家として耐え難いはずである。版元である講談社との連携で、現在は削除に向けた手続きが進んでいるとみられるが、類似の偽本が新たに登場しない保証はない。

阿津川辰海氏についても同様の被害が確認されており、両作家の投稿が相まって、ミステリー界全体に波紋を広げている。クリエイターが自ら声を上げなければ、被害が放置される可能性が高いことを示す事例だ。

 

Amazon Kindleの審査の緩さが招く危機 誰でも偽本を出品可能

この事件の根幹にあるのは、AmazonのKindle Direct Publishing(KDP)システムの構造的な問題だ。KDPは誰でも無料で電子書籍を出版・販売できるプラットフォームとして普及したが、審査プロセスが極めて緩い。出品者は実名や本人確認を厳しく求められるわけではなく、タイトルや表紙、内容の真正性を事前に精査されることはほとんどない。生成AIで作成した粗悪なコンテンツでも、アップロードすればすぐにストアに並ぶため、悪意ある第三者が容易に悪用できる。

過去にも同様の被害が相次いでいる。村上春樹氏、東野圭吾氏、京極夏彦氏、伊坂幸太郎氏などの人気作家の名前を騙った偽書籍が登場し、綾辻氏自身が以前に「ニセモノの作品がAmazonのKindleに──って、最低」と指摘した経緯がある。吉本ばなな氏も自身の名を冠した偽本に注意喚起を行い、Amazon側が後から削除対応を取ったケースが報告されている。

これらの事例で共通するのは、表紙のAI生成らしさや、あらすじの不自然な日本語、虚偽の宣伝文句だ。にもかかわらず、プラットフォーム側は積極的な予防策を講じていない印象が強い。Kindle Unlimitedのような読み放題サービスが普及する中、低価格や無料でダウンロードを促す偽本は、読者の財布だけでなく、作家のブランド価値をも損なう。

Amazonは世界最大の書籍販売プラットフォームとして、クリエイター保護の責任を負っているはずだ。しかし、現状は「無法地帯」との批判が絶えない。出品後の通報でようやく対応する後手後手の姿勢が、被害を拡大させている。

 

生成AI悪用の波がクリエイターを襲う 著作権侵害と信頼崩壊の恐れ

生成AIの急速な進化は、創作の民主化を促す一方で、こうした悪用を容易にしている。

テキスト生成、画像生成、音声生成が高度化する今、小説のスタイルを模倣した偽続編や、著名イラストのパクリ表紙を短時間で作れるようになった。今回の事件では、喜国雅彦氏の既存イラストを基にしたAI画像が使われた疑いが濃厚だ。著作権法上の翻案権や複製権の侵害は明らかで、不正競争防止法違反の可能性もある。

阿津川辰海氏の作品を同じ「阿津川」名義で偽造した点も、なりすまし行為として悪質性を増している。ミステリー作家にとって、シリーズ物の続編はファンとの絆を深める重要な要素だ。それをAIで粗製濫造され、市場に氾濫させられるのは、創造意欲を削ぐ行為である。

東野圭吾氏や京極夏彦氏らも過去に被害に遭ったように、著名作家ほど標的になりやすい。問題は作家だけではない。読者が偽本を購入し、失望や誤解を招くことで、本物の作品への信頼が損なわれる恐れがある。長期的に見て、電子書籍市場全体の質低下を招きかねない。クリエイター側は、版元との連携やSNSでの情報発信を強化する必要がある。

一方、プラットフォームにはAI検知ツールの導入や、出品時の著作権チェックの義務化が求められる。法規制の整備も急務だ。この一件は、生成AI時代における知的財産保護のあり方を問う警鐘である。綾辻行人氏の迅速な対応が功を奏し、早期削除につながることを願うばかりだ。ファンも公式出版社の作品のみを購入する習慣を身につけ、怪しい続編には警戒を怠らないでほしい。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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