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教員不足と過重労働に歯止めなるか 給特法改正が成立、現場の声は

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給特法改正が成立
DALL-Eで作成

公立学校の教員を取り巻く労働環境に変化の兆しが訪れている。教員の処遇と働き方を改善することを目的とした「教員給与特別措置法(給特法)」などの改正法が、2025年6月11日に成立した。制度開始以来初の「教職調整額」引き上げや、業務管理の強化、新職位の導入など、複数の対策が盛り込まれたが、長年積み上がってきた課題の解消には、なお時間を要するとの指摘も根強い。

■過労と人手不足が続く教職現場、処遇改善へ法改正

長時間労働や慢性的な人手不足が指摘されてきた公立学校教員の働き方を見直すため、「教員給与特別措置法(給特法)」の改正法が2025年6月11日、参議院本会議で可決・成立した。改正法には、教職員の待遇改善と業務の適正化を柱とした措置が盛り込まれ、2026年1月以降、段階的に施行される見通しとなっている。

■「教職調整額」引き上げは制度開始以来初めての改正

現在、教員には原則として時間外勤務手当(残業代)は支払われず、その代わりとして「教職調整額」が給与月額の4%上乗せされる制度が採られてきた。この水準は1972年の制度開始以来、実質据え置かれたままとなっていたが、今回の改正により段階的に10%まで引き上げられる。

文部科学省の試算では、月20時間程度の残業を行っている教員にとっては、実態に見合った補償とは言いがたく、4%では「実質的な無償労働を強いている」との批判が相次いでいた。教職調整額の見直しは、こうした声を背景に、50年超ぶりの大きな制度変更となる。

 

■業務量の「見える化」と若手支援も強化へ

処遇の見直しに加え、各教育委員会には教員の業務量を適正に管理するための「業務量管理計画」の策定と公表が義務付けられる。これにより、学校ごとの教員の業務負担を「見える化」し、無理のない業務配分が期待される。

さらに、若手教員の育成支援を目的に新たな職位「主務教諭」も導入される。主務教諭は、若手教員の指導やチームでの業務分担の中核を担う存在と位置づけられており、職場内の支援体制強化につながるとされている。

 

■残業時間「月30時間以下」目標も ただし努力目標にとどまる課題も

改正法の附則では、教員の時間外勤務を2029年度までに「月平均30時間程度以下」に抑えることを目指す目標が明記された。ただし、この目標はあくまで「努力義務」にとどまっており、強制力のない中で実効性を担保できるかが今後の焦点となる。

学校現場では、「部活動の指導」や「保護者対応」「膨大な事務作業」など、勤務時間外の業務が常態化しているケースも多い。全国の教員を対象にした文科省の2022年度調査では、小学校教員の約60%、中学校教員の約80%が、過労死ラインを超える月80時間以上の残業をしていると回答しており、制度の限界が長年指摘されてきた。

 

■「教員になりたい」が減る現実 背景に待遇への不満も

教員採用試験の応募者数も年々減少傾向にある。文部科学省の発表によると、2023年度の教員採用試験の応募倍率は過去最低を記録し、小学校教員では一部自治体で1倍を切る状況も見られた。背景には、他産業に比べて処遇が見劣りする実態や、労働時間の長さによる離職・志望離れがあるとされる。

政府としては、今回の法改正を契機に教職の魅力回復と人材確保を進めたい考えだが、現場では「制度変更より先に、抜本的な業務削減がなければ効果は乏しい」との声も根強い。

■「魅力ある教職」へ 制度と現場の両輪での改革が必要

処遇改善は教職の魅力を取り戻す一歩であるが、実効性を担保するには、学校現場の業務改革とセットでの対応が不可欠である。教育委員会や自治体ごとの取り組みの違いが成果を分ける可能性もあり、現場の裁量と支援の両立が問われる局面を迎えている。

 

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SHOEHORN くつべらマン

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児童養護施設の職員。特に中学~新卒年齢の若者の生活・医療・福祉・自立支援に従事している。勤務時間外では、様々な職業の方へ取材活動を実施しており、大人になる若者たちへ情報を提供している。

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