【体験で気づくインクルーシブ社会の扉】

大阪・関西万博の会場・夢洲(ゆめしま)で、毎日新聞社と非営利事業体「ビジョン・コンソーシアム」が共催するイベント「点字考案200年 視覚障害者の世界を体験する」が、4月19日から24日まで開催される。期間中、ギャラリーWESTには視覚に頼らないさまざまなコンテンツが並び、来場者が「見えない」「見えづらい」世界を実際に体験できる空間が広がる。
主催者の毎日新聞社は、世界的にも希少な点字新聞『点字毎日』を1922年から100年以上にわたり発行してきた。点字の考案者ルイ・ブライユによる功績から200年となる節目にあわせ、社会の包摂性を再考する場として同イベントを立ち上げた。
今回の企画は、2025年1月に設立されたビジョン・コンソーシアムによるインクルーシブ社会実現への初の共同事業でもある。
視覚障害のある方と共に「遊ぶ・知る」体験プログラム
会場では、視覚を遮断した状態で音に導かれながら進む「オーディオゲームセンター」や、白杖と仲間の声を頼りに〝迷宮〟を探検する「ノービジョン・ダンジョン」、手の感覚だけで迷路を抜ける「TOUCH PARK」など、多様な感覚を活かした体験型展示が展開される。
また、点字名刺を作成するワークショップや、ゴールボール・ブラインドサッカー・視覚障害者柔道といったパラスポーツ体験も予定されており、来場者が競技団体の指導のもと、視覚障害者のスポーツ文化にも触れられる。

特に注目を集めそうなのが、「音で旅する大阪今昔 博士と失われたレシピを探せ!」と題された音声ARを活用した仮想空間体験や、視覚を遮って洞窟を進む「SENSPHERE 知覚の境界をほどく旅」だ。日常とは異なる感覚の使い方に、来場者は新たな発見を得ることだろう。
103年の歴史を持つ「点字毎日」の軌跡を辿る展示も
展示コーナーでは、世界の点字文化や日本における点字の歴史、そして『点字毎日』の歩みを紹介。1922年(大正11年)創刊以来、視覚障害者の情報アクセスを支えてきた点字新聞の存在意義が、時代を超えて再認識される機会ともなっている。
さらに、インクルーシブデザインの展示も展開。雨の音を和らげ周囲の音を聞き取りやすくする傘や、前後・裏表を気にせず着用できる衣類、触覚に配慮したグラスなど、日本ならではの視覚障害者向けプロダクトが来場者の関心を集めそうだ。
MBSアナウンサーが登場する日替わりトークショーも
会期中は、毎日放送(MBS)の人気アナウンサーによる日替わりトークショーも実施。会場のコンテンツ紹介をはじめ、視覚障害にまつわる実体験や思いを語る内容が予定されている。
登壇者には河本光正、藤林温子、松本麻衣子、古川圭子、大吉洋平、関岡香の各アナウンサーが名を連ね、日ごとに異なる視点での案内が楽しめる。
理念を共有する企業や団体が集うコンソーシアムの取り組み
主催団体の「ビジョン・コンソーシアム」は、毎日新聞社の呼びかけで設立された共同事業体で、参天製薬、味の素、三井住友銀行、明治安田生命、羽田未来総合研究所、ニデック、セブン銀行など21の企業・団体が賛同。また、TBSやMBSなどのメディアパートナーも支援しており、視覚障害への理解と社会変革に向けた大きな推進力となっている。
イベントの詳細や最新情報は、毎日新聞大阪・関西万博特設サイトおよびビジョン・コンソーシアムの公式ページで公開されている。