
全国に100以上のクリニックを展開する「TCB東京中央美容外科」の運営法人が、国税当局から約9億円の追徴課税を受けていたことが判明した。院長を個人事業主として扱い、消費税の免税制度を利用した手法が問題視されている。国税局の指摘や業界の動向、今後の影響について詳しく報じる。
美容医療大手「TCB東京中央美容外科」に9億円の追徴課税
全国で美容医療を展開する「TCB東京中央美容外科」を運営する医療法人や関連会社が、国税当局から申告漏れを指摘され、約9億円の追徴課税を受けていたことが明らかになった。国税局は、クリニックの院長を個人事業主として扱い、消費税の免税措置を利用した手法が不適切だったと認定した。
院長を個人事業主として扱い消費税免税を利用
関係者によると、「TCB東京中央美容外科」を運営する「メディカルフロンティア」および関連する医療法人は、クリニックの院長を個人事業主として登録し、税務申告を行わせていた。これにより、新規開業の個人事業主に適用される消費税の免税措置を利用し、運営法人としての納税額を抑えていた可能性がある。
しかし、国税局の調査の結果、院長らは実質的には法人の従業員であり、クリニックの利益は運営法人の所得とみなされるべきだと判断。これにより、法人側に消費税の納税義務が発生していたことが判明した。
「雇われ院長」知らぬ間に個人事業主登録
複数の元院長によると、彼らは自らの立場を「雇われ院長」と認識していたものの、実際には個人事業主として税務申告が行われていたことを後から知ったという。
「私は雇われ院長として働いていたつもりだったが、実際には個人事業主とされており、確定申告もその形で処理されていた」と、ある元院長は証言する。
こうした手法により、TCBグループは消費税免税措置の適用を受けることが可能となっていたが、国税局はこの手法を問題視し、過去4年間の申告漏れ約8億円を指摘。過少申告加算税を含めた約9億円の追徴課税を課した。
追徴課税の詳細と運営法人の対応
仙台国税局や東京国税局などによる調査の結果、各地の運営法人に対しておよそ9億円の追徴課税が行われた。国税当局は、院長が法人の指示のもとで業務を遂行していた点を重視し、実態としては法人の一部であると判断した。
また、TCBグループの運営法人は、クリニックの院長らから「業務委託費」の名目で一定額の支払いを受けていたが、国税当局はこれを「実体のない利益回収」と認定。この点でも税務上の問題があったと指摘している。
本件に関して、TCBグループを運営する「メディカルフロンティア」は回答を控えているとのこと。
美容医療業界の急拡大と税務リスク
「TCB東京中央美容外科」は、2014年の設立以来、急速に事業を拡大し、現在では全国に100以上のクリニックを展開する大手美容医療グループの一つである。同グループは「業界最速」として創業から8年9か月で100院を突破したとPRしていた。
美容医療業界は、自由診療が中心であり、保険診療と比べて利益率が高いため、急成長するクリニックが多い。しかし、今回のTCBグループのケースのように、税務上の問題が表面化することも少なくない。
今後の展開と消費者への影響
今回の追徴課税により、TCBグループの経営にどのような影響が出るのかが注目される。特に、今後のクリニック運営において、税務処理の適正化が求められることは間違いない。
また、今回の問題が、美容医療業界全体に与える影響も懸念される。急成長する業界だからこそ、適切な経営管理が求められ、税務リスクを軽視することはできない。
消費者にとっても、美容医療を選択する際には、クリニックの経営体制や透明性にも目を向けることが重要となる。今後、TCBグループの対応と、国税当局の動きが注視されるだろう。