消費関連株の好調が続く中、生活雑貨ブランド「3COINS(スリーコインズ)」が注目を集めている。若者の賃上げを追い風に、パルグループホールディングスの株価は2024年末比で13%上昇。独自の戦略とSNSマーケティングを活用し、成長を続ける3COINSの躍進の背景を探る。
若者の賃上げが後押し、消費関連株に注目集まる
日経平均株価の伸び悩みが続くなか、消費関連株が堅調な動きを見せている。なかでも生活雑貨を手がける「3COINS(スリーコインズ)」の成長が目立つ。同ブランドを運営するパルグループホールディングスの株価は、2024年末比で13%上昇し、最高値圏で推移している。
業績を牽引する3COINSの戦略
3COINSは当初、ファミリー層向けの店舗展開を行っていたが、近年では20〜30代の若年層の支持を集めるようになった。新型コロナウイルス禍による客足の減少を機に、税込300円を超える高価格帯の商品ラインナップを拡充し、オンライン販売を強化。さらに、駅近の商業施設への出店を増やしたことが、若者の需要を取り込む契機となった。
楽天投信投資顧問の平川康彦第二運用部長は、「SNSのインフルエンサーを活用した商品訴求力が3COINSの強みだ。インフレ下でコスト増の影響を受けながらも、販売数量の増加によって利益を確保できている」と評価する。
企業の軌跡とブランドコンセプト
3COINSは1994年に大阪・茶屋町に1号店をオープン。当初は「衝動買いを促す手頃な価格帯の雑貨」というコンセプトのもと、100円ショップとの差別化を図りながら成長してきた。2000年には東南アジアでの自社企画・生産を本格化し、全国展開を加速。2023年には全47都道府県への出店を達成し、店舗数は300を超えるまで拡大している。
ブランドコンセプトは「あなたの“ちょっと幸せ”をお手伝いする雑貨店」。手頃な価格でありながら、デザイン性や機能性に優れたアイテムを幅広く展開し、常に新しい発見がある店づくりを目指している。
若者の賃上げが消費を刺激
市場関係者が注目するのは、春季労使交渉(春闘)を前にした若者の消費動向だ。かんぽ生命保険の市場運用部で小売セクターを担当する井尻雅大課長は、「企業が労働力確保を急ぐなか、若年層を優先的に採用し、賃上げを続ける傾向が強まる」と指摘する。
三菱総合研究所のデータによると、20〜39歳の消費額は2024年初頭から前年同期比で増加しており、その勢いは今後も続く見通しだ。一方、40〜59歳の消費額は横ばい、60〜79歳の消費額は減少傾向にある。
SNSでも話題、消費拡大の兆し
3COINSの商品はSNSでも話題となっており、
「リコにまさに今求めていたやつがあってサンキュー!」 「スリコのカメラ、300円なのに仕掛けがいっぱいで楽しい!」 「今日スリコで550円で買ったふくらはぎマッサージグッズ、疲れ取れてスッキリ!」
といった投稿が相次いでいる。こうした口コミがブランドの認知度向上に貢献している。
今後の展開と市場の動向
若者の消費が引き続き拡大すれば、3COINSのような低価格帯のブランドはさらなる成長が見込める。特にSNSマーケティングの強化やオンライン販売の拡充が、今後の競争力を左右する要素となるだろう。企業はこの流れを捉え、若年層の消費意欲を高める戦略を積極的に展開する必要がある。
また、投資家にとっても、若者の消費を取り込める企業の選別が重要なポイントとなる。インフレ環境下でも成長できる企業への注目が高まり、今後の投資動向にも影響を与える可能性がある。
日本経済全体の活性化に向けて、賃上げと消費の好循環がどこまで続くかが、引き続き焦点となる。