農業と福祉が連携し、障がい者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展と共に、障がい者の自信や生きがいを創出する取り組みを「農福連携(のうふくれんけい)」と言います。年々高齢化する農業現場での貴重な働き手として農業界からの期待も大きく、それが障がい者の生活の質の向上等にも貢献できるという仕組みです。そんな社会問題の解決への思いを持って取り組んでいるのが「ハーブ農園ペザン -PAYSAN-」です。今回はその運営会社である、株式会社ポタジェの代表取締役 澤邉友彦さんに、大切なステークホルダーへの思いについてお話を伺いました。
株式会社ポタジェとは?
─「株式会社ポタジェ」の事業について教えてください。
私たちは「ハーブ農園ペザン -PAYSAN-」を運営しています。ペザンでは約3ヘクタールの栽培面積で、およそ25種類のハーブを栽培しています。メインの事業はフリーズドライハーブで、ハーブティーを販売しています。それ以外にも、保育園さんにハーブガーデンを施工するといった、ハーブガーデンのプランニングも手掛けています。農林水産省発行の技術指導の資格を取得しており、農福連携における栽培指導も行っています。
ハーブ農園ペザンのホームページ(画像提供:株式会社ポタジェ)
─御社はどのような経営理念をお持ちなのでしょうか。
私たちは、社会課題を解決するため「より豊かに、より幸せに」という理念を掲げてハーブ園を運営しています。「豊かさ」と「幸せ」は時代や個々人のそのときそのときの状況によって変わります。常に変化するものだと考えています。いま私たちは障がい者の方々が農業で活躍することで社会参画を実現していくための、農業と福祉を融合した取り組み「農福連携」に取り組んでいます。障がい者の方に働く場を提供することで、私たち農園にとっても貴重な担い手というだけでなく、新たな価値を生み出し、お互いを高めあい、より豊かで幸せに生きていく関係を追求していきたいと考えています。
株式会社ポタジェの各ステークホルダーに対しての感謝
─各ステークホルダーに対する感謝の気持ちを聞かせてください。
お客様に対する感謝
自然栽培パーティ
自然栽培パーティさんは、公益財団法人ヤマト福祉財団さんが支援している、全国的に農福連携に取り組んでいる農家さんや福祉施設が集まっている団体なのです。私たちの商品をさまざまなイベントで取り扱ってくださっていて、大変感謝しています。農福連携を行っている企業としてこの団体に参加したことで、ハーブ農園ペザンの情報をさまざまな方が拡散してくださり、東京にあるレストラン・結婚式場「八芳園」さんのメニューに私たちのハーブティーを載せていただけるまでになりました。これは私たちだけでは実現できなかったことですので、本当にありがたく思っています。
-どういった形で自然栽培パーティさんに参加されたのですか?
もともと存じ上げていたという部分もありますが、農福連携に取り組もうと思った際に、石川県内で農福連携の活動に取り組んでいる方に注目したんです。そういった方の動きを辿っていくと自然栽培パーティさんに辿り着いたので、私たちもアクションを起こして参加した、という形です。
-感謝の言葉をお聞かせください。
無名だった私たちを受け入れてくれた、という点も本当にありがたいのですが、私たちのハーブの価値を1段階も2段階も引き上げていただいたことには本当に感謝しています。団体に加入し、多くの方と触れ合うことで、さまざまな学びがありましたし、八芳園さんのような私たちだけでは手の届かない企業さんともつながりを持つことができました。つまり、参加しなければ見ることができなかった世界を見せてくださったのです。
農福連携を行うにあたっても、例えば、障がい者の方との触れ合い方や、指示の出し方について「こういう風に言ったら、こういうことをやってくれるよ」といった本当にきめ細かで具体的な指導をしてくださり、なかなかアドバイスをもらうのが難しい分野においての知識を得ることができました。そういった部分で非常に助けになりました。
-自然栽培パーティさんに何か聞きたいことはありますか?
団体の規模感が大きくなると、まとめていくのが難しくなる、という側面があります。その中で団体をどう動かしていくのか、ですね。農福連携としての自然栽培もですが、今後どういった新たな価値を付けていくのか。私たちがチャレンジした部分ではある程度の成果を出せていると思いますので、お互いにさらに上を目指すとしたらどういった形を描けるのか、という部分を一緒に考えたいですね。
八芳園
八芳園さんは東京都港区白金にあるレストラン・結婚式場で、自然栽培パーティさんを通じてお引き合わせいただきました。私たちのフリーズドライは色目が強く、きれいにドライされているという見た目の部分や、飲みづらいという印象を持たれがちなハーブティーですが、ハーブの爽やかな香りをしっかりと残しながらも青臭さやえぐみがなく飲みやすいと評価いただいています。
自然栽培であることや、ハーブティーそのものの「味」を純粋に認めてくださったことが何よりうれしいことです。八芳園さんは海外からのお客様がいらっしゃる場所でもあるので、そういった場所で使っていただけることで、私たちのハーブの価値が高まり、ブランディングにつながっていますので非常に感謝しております。
-八芳園さんに何か聞きたいことはありますか?
純粋に、もっとこうしてほしい、と言ったご要望ですとか、求められていることを聞きたいですね。いちハーブ農家として、こういう商品が欲しい、こういったことをお願いしたい、という課題をぜひご提示いただければと思います。
フレンチTAWARA
「フレンチTAWARA」さんは、ハーブ農園ペザンの前オーナーの息子さんが経営されている、金沢市片町にあるフレンチレストランです。フランスで修業をされたオーナーシェフによる、地元金沢と本場フランスの素材を使用した、和洋折衷の創作料理がとてもおいしいレストランです。地元金沢の特産品であるイカスミやホタルイカを使った料理も絶品でした。私たちのハーブティーを使っていただいているだけでなく、ハーブティーのブレンドや新しい商品開発、「こういったフレッシュハーブを栽培するといいよ」といったアドバイスもいただいています。そういった点で、私たちの可能性を教えてくださった恩人ですので、本当に感謝しております。
-フレンチTAWARAさんにお聞きしたいことはありますか?
やはりフランスならではのハーブの凝った使い方があると思いますので、現状まだ私たちができていない、新しい本場でのハーブの使い方があればぜひお教えいただきたいですね!
社員への感謝
─社員の方への感謝の言葉をお聞かせください。
九里 愛さん
弊社は私以外に1人しか社員がいないので、その方への言葉になります(笑)。九里 愛さんという方で、会社を立ち上げたスタート時から、共に会社を作り上げてきたスタッフです。今年で4年目を迎える弊社で、少し上から目線のようになってしまいますが、3年目からすごく伸びてきたと言いますか、方向性を含めて変わってきたなと感じています。それは九里さんが努力した結果だと思いますし、彼女にはすごく可能性を感じます。そういった点でさらなる期待を込めて感謝の言葉にしたいなと思いますね。
彼女にはフラワーアレンジメントの心得がありますので、私にはない武器である美的センスを持っています。それこそワークショップであったり、ハーブガーデンの施工であったりの際にそのセンスが活きていますね。私だけではなかった新たな価値をハーブ農園ペザンにもたらしてくれていますので、本当に感謝しています。いつも思っていることではあるのですが、「支えてくれて、ありがとう」と改めて言いたいです。
─九里さんに何か聞きたいことはありますか?
私を含めて社員が2名ですので、普段から会話やコミュニケーションはすごく多いんですよね(笑)。あえて何か聞くのであれば、これからどういう人間になりたいのか、といった目標を聞いてみたいです。
家族への感謝
─家族の中で、感謝の言葉を伝えたい相手はいらっしゃいますか?
そうですね、私には兄が2人いるのですが、2人とも職場でペザンのハーブを宣伝してくれています。長男は自営業、次男は消防車を製造する企業に勤務していまして、そういった私にないつながりの部分で宣伝をしてもらっているのは、本当にありがたいですね。
取引先への感謝
─取引先への感謝をお聞かせください。
増江会計
増江会計という金沢QOL支援センターの岩下さんからご紹介いただいた事務所さんです。会計士さんの仕事を飛び越えて会社の方向性なども含めて面倒を見てくださいます。また、担当の三田さんという方が非常にペザンのハーブティーを気に入ってくださり、さまざまな場所で宣伝してくださっているんですよね。家族への感謝の部分で2人の兄についてもお話ししましたが、やはり私につながりのないフィールドや人脈の中で宣伝していただけることは非常にありがたいですし、本当に助かっています。
-何か聞いてみたいことはありますか?
実はいま新しい事業を始めてみたいと考えているんです。三田さんにそれについて相談をして、何かご意見であったり、アドバイスであったりを聞いてみたいですね(笑)。まだ三田さんにはその内容をお話ししてはいないので、次回お会いする機会にぜひご相談したいです。
地域社会への感謝
─地域社会に関して、感謝の言葉を伝えたい方はいらっしゃいますか?
レンコン部会
ペザンは河北潟で農園をやらせていただいております。地域の農家さんで、レンコン部会長の北さんには、いつも乾いたレンコンの実をおすそ分けしてくださるなど、さまざまなことで気にかけてくださいます。河北潟は特徴のある土地です。この土地に適した農業の方法を教えてくださり、さまざまな農家さんをご紹介いただくなど、河北潟での農業を非常にやりやすくしていただき、本当に感謝しています。
-何か聞いてみたいことはありますか?
ストレートに、レンコン部会として農福連携をしてみませんか? と聞いてみたいですね。北さんも私たちの活動に興味をお持ちくださっていますので、ぜひ話を進められればと思っています。
株式会社桑原
弊社のビジョンとして、将来的にハーブの栽培を福祉事業所から受託し、栽培指導を行い、栽培されたものを買い取って私たちで販売していく、という構想があります。株式会社桑原さんはそれを現在共同で取り組んでくださる富山県の企業さんです。「ミュール」というブランド名でハーブの販売を始めていくのですが、ハーブとホタルイカのような富山県の特産品を組み合わせた商品を開発して営業・販売していこうと考えています。
農福連携を含めて桑原さんが興味を持って来園いただいたところから、つながりが始まったのですが、私のような若手の話にも耳を傾けてくださるので本当に感謝しています。
─何かお聞きしたいことはありますか?
今後のビジョンについては、連携させていただきながら検討中の段階ですので、何か不安に感じることやご不満などがありましたら遠慮なくお聞かせいただければと思います。
金融機関への感謝
─金融機関への感謝の言葉があればお聞かせください。
北國銀行 津幡支店
北國銀行さんは私たちのメインバンクです。ポタジェを立ち上げる段階で、北國銀行さんも立ち上げ当初から当座貸越の枠を用意していただき、返済を3年後から開始していただけました。そのため、起業当初の苦しい状況において非常に助かりました。担当者の方も、現在も頻繁に足を運んでくださって、現状を見ていただいているのもありがたいですね。
自然環境への取り組み
─株式会社ポタジェとして、地球自然環境の分野で取り組んでいることがあれば教えてください。
自然栽培によって持続可能な農業を続けていこうという取り組みですね。自然栽培とは、化学肥料のような有限な資源を使わずにハーブを栽培することです。以前はたい肥などは利用していましたが、ポタジェで運営するようになってからは、それすらも使わずに自然栽培を行っています。
未来性代への取り組み
─株式会社ポタジェとして、未来をこう良くしていく! というメッセージがあればお聞かせください。
現在、国連が定める持続可能な開発目標「SDGs」も含めて、さまざまな部分でよりよい社会づくりに向けた環境を整えようという活動が進められています。弊社として、持続可能な社会を目指していくという点に関しては、社会問題、環境問題を含めて解決できるように、理念である「より豊かに、より幸せに」の実現を目指して活動を続けていこうと考えています。
─お話を通じて、さまざまな社会問題に真摯に向き合う姿勢を拝見することができました。本日はありがとうございました。
【企業概要】
株式会社ポタジェ
https://paysan.co.jp/
代表取締役社長 澤邉 友彦
〒929-0328 石川県河北郡津幡町字湖東197
TEL:076-289-6287
info@paysan.co.jp
2001年設立 ※法人化は2017年5月2日
事業概要
・ハーブの生産
・ハーブの販売 (ハーブティー各種、お風呂ハーブ、ハーブ苗)
・ガーデニング事業