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「新しい資本主義」の実現条件 日本経済は生き残れるか?②日本株式会社は生き残れるか?

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写真:pixabay

大中忠夫(おおなか・ただお)

株式会社グローバル・マネジメント・ネットワークス代表取締役 (2004~)
CoachSource LLP Executive Coach (2004~)
三菱商事株式会社 (1975-91)、GE メディカルシステムズ (1991-94)、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタントLLPディレクター (1994-2001)、ヒューイットアソシエイツLLP日本法人代表取締役 (2001-03)、名古屋商科大学大学院教授 (2009-21)
最新著書:『持続進化経営力測定法』2022 

前回のコラムでは、日本経済と日本株式会社というテーマで話を展開しました。

上場企業持続可能性の定量測定

新たに持続進化経営力の評価指標を導入する。

日本株式会社、特に上場企業がどれだけ持続的な成長の活力「持続進化経営力」を減退させているかを定量評価する指標が必要となります。現代企業が評価を委ねている短期業績評価指標とそれに大きく依存する株価のみでは、持続進化成長力は測定できないからです。

企業総生産 (GCP: Gross Corporate Product)

そこで、企業の持続進化成長力・経営力をどうすれば定量測定できるのかを考えてみましょう。それほど難しいことではありません。短期業績評価指標が、株主財産の原資である当期利益とその産出効率である総資本利益率(ROE: Return on Equity)のみである事実に着目すればよいのです。

会社が産出している価値は株主財産原資だけではありません。社員に対する報酬である人件費、そして社会に対する報酬である法人税も会社の産出価値です。そして合計額は、実体経済の基盤である個々の会社が外部の会社から購入したすべての価値、材料費、設備費、電気ガス水道費、運営保守サービス費などを差し引いた個々の企業の正味の産出価値の合計値でもあります。

したがって、国内総生産(GDP: Gross Domestic Product)を産出面から計算する場合には、国内企業などのすべての経済単位が産出するこれら3要素を総計しています。(注:米国商務省経済分析局 産業別国内総生産総覧:https://www.bea.gov/products/industry-economic-accounts/underlying-estimates )

この企業毎の総額は、企業別の国内総生産でもあることから、企業総生産 (Gross Corporate Product) と呼称します。この会社毎の企業総生産とその一定期間の増減率がその会社の持続的な進化成長力・経営力を定量的に示してくれます。図1は、東証プライム企業の内一般認知度が高いと思われる50社の2017-21年の企業総生産の一覧です。図2は同50社の企業総生産の増減率一覧です。

この企業総生産指標の計算値からは、当期利益やROE値では見えていない事実が明らかになります。たとえば、図2に示すように、これらの東証プライム50社の実にほぼ4割の19社が2017-21年の5年間に企業総生産額を減少させているのです。これは年度毎の当期利益やROE値の同一5年間の傾向のみでは把握できない現実です。一般的に企業はこれらの二つの短期業績評価指標が減少しないことをほぼ最優先で意識して経営をしているからです。(データ出典:「EDINET」有価証券報告書および「持続進化経営力測定法」大中忠夫著2022年)

図1.東証プライム50社企業総生産(2017-21)一覧

データ出典:「EDINET」有価証券報告書、「持続進化経営力測定法」2022

図2.東証プライム50社の2017-21年の企業総生産の増減率一覧

データ出典:「EDINET」有価証券報告書、「持続進化経営力測定法」2022

企業総投資 (GCI: Gross Corporate Investment)

会社の全方位関係者に対する正味の産出価値合計である企業総生産とともに、それを実現する会社の総投資額を把握することで、会社毎の持続進化経営力がさらに包括的に定量測定できます。この企業総投資額とその増減率が、会社経営チームの 持続可能性追求の覚悟と行動を示してくれているからです。

この企業総投資には、従来の未来投資項目と考えられてきた研究開発投資額と設備投資額にさらに総人件費を加えます。近年特に社員を大切にする学び直しなど人材育成の重要性が叫ばれていますが、人材の最大の重要性は、企業が持続的に進化成長する原動力である創造力の唯一の源泉であることにあります。
言い換えれば企業の持続的な進化成長はマネジメントと社員の創造力を抜きにしては実現できないということでもあります。したがって、その人材に対する投資額とその増減率も、経営チームの持続的な進化成長へのコミットメント、持続進化経営力の重要な要素であり、定量測定対象となります。

図3は、東証プライム50社の2017-21年5年間の企業総投資の一覧、図4は企業総投資の増減率一覧です。50社の3割15社で当該5年間に企業総投資額が減少しています。(データ出典:「EDINET」有価証券報告書および「持続進化経営力測定法」大中忠夫著2022年)

図3.東証プライム50社企業総投資(2017-21)一覧

データ出典:「EDINET」有価証券報告書、「持続進化経営力測定法」2022

図4.東証プライム50社の2017-21年の企業総投資の増減率一覧

 データ出典:「EDINET」有価証券報告書、「持続進化経営力測定法」2022

持続進化指数 (CSI: Corporate Sustainability Index)

企業総生産とともに企業総投資も定量把握することで、さらにこれらの倍率、すなわち正味のアウトプット額とインプット額の倍数比率、あるいは、企業総生産が企業総投資をどれだけ上回っているかの比率、も計算できます。
この比率は、会社経営チームの持続的な進化成長へのコミットメントがどれだけ実際に効果を産み出しているかの定量評価指標です。すなわち会社の持続進化経営力の実際の梃子(てこ)効果の定量測定指標でもあります。この指標は会社の持続的な進化成長のスピードの定量表示でもありますから、これを持続進化指数(CSI: Corporate Sustainability Index)と呼称します。
持続進化指数が1.0未満であればその会社の当年度の成長はマイナスであることになります。またその複数年度の増減率がマイナスであれば、その会社は持続可能性を減退させつつあります。

図5は、東証プライム50社の持続進化指数の一覧です。東証プライム50社の7割超の36社が2017-21年の5年間で持続進化指数1.0未満となっています。図6は、同期間の持続進化指数とその増減率の4領域分類です。持続進化指数が1.0以上でその増減率がプラスである会社は全体の2割に満たない8社のみとなっています。(データ出典:「EDINET」有価証券報告書および「持続進化経営力測定法」大中忠夫著2022年)

図5.東証プライム50社の2017-21年の持続進化指数一覧

 データ出典:「EDINET」有価証券報告書、「持続進化経営力測定法」2022

図6.東証プライム50社 (2017-21) 持続進化指数と増減率の4領域分布

 データ出典:「EDINET」有価証券報告書、「持続進化経営力測定法」2022

次回は、日本株式会社の新たな役割と戦略というテーマを展開します。
また、筆者の最新著書は以下より購入することができます。
持続進化経営力測定法

ライター:

株式会社グローバル・マネジメント・ネットワークス代表取締役 (2004~) CoachSource LLP Executive Coach (2004~)三菱商事株式会社 (1975-91)、GE メディカルシステムズ (1991-94)、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタントLLPディレクター (1994-2001)、ヒューイットアソシエイツLLP日本法人代表取締役 (2001-03)、名古屋商科大学大学院教授 (2009-21) 最新著書:「日本株式会社 新生記」全13巻

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