
収入が途絶え、貯金が少しずつ減っていく。家族に申し訳ない――。うつ病で働けなくなり、お金の不安から安心して療養できない人は少なくない。そんななかで、うつ病に特化して「障害年金」の受給をサポートしているのが、社会保険労務士法人全国障害年金パートナーズだ。代表の宮里竹識氏は、妻のうつ病と、障害年金の申請に挫折した自身の経験を原点に同法人を立ち上げた。98.98%という高い成功率を支える支援へのこだわりや創業の背景、そして「自分たちがいらなくなる社会」を目指す理由を伺った。
「うつ病の障害年金」だけを深く。受給率98.98%を支える専門特化
うつ病で働けなくなったとき、生活を支える公的な仕組みの一つに「障害年金」がある。病気やけがによって、生活や仕事が制限されるようになった場合に受け取れる年金だ。障害者手帳がなくても、一定の要件を満たしていれば受給できる。
しかし実際には、手続きの煩雑さや審査の難しさから、制度がありながらも受給までたどり着けない人は少なくないという。その壁を取り払うべく、うつ病の障害年金を専門に受給をサポートしているのが、社会保険労務士法人全国障害年金パートナーズ(以下、全国障害年金パートナーズ)だ。
うつ病の障害年金は、なぜ受給が難しいのか。代表の宮里氏はこう話す。
「目や耳の障害の場合は、視力や聴力を数値で測れるので、障害の程度を客観的に判断できます。でも、うつ病にはそうした基準がありません。日常生活にどの程度支障があるか、働けているかを書類から読み取って総合的に判断しなければならず、人によって見方や結果が変わってしまうこともあるのです」(宮里氏)
そのため、社労士のような専門家にとっても難しい分野なのだ。だからこそ全国障害年金パートナーズは、あえてうつ病に絞って支援を行ってきた。
「障害年金自体は、いろいろな病気やけがが対象となりますが、それぞれ認定基準が異なります。全部やろうとすると、どうしても広く浅くなってしまう。それなら対象は狭くてもいいから、より深くサポートしようと考えました」(宮里氏)

全国障害年金パートナーズは、電話やメール、郵送を中心に全国に対応しており、47都道府県すべてから依頼が寄せられている。2025年に受給代行を手がけた491名のうち、年金を受け取ったのは486名。成功率は、実に98.98%にのぼる。難しい分野でありながら、なぜこれほどの成功率を実現できるのか。その裏には、うつ病の障害年金を専門にしてきたからこそ蓄積された、膨大なノウハウと事例がある。
加えて、障害年金は審査によって1級から3級までの等級が決まり、その等級によって受け取れる金額が変わる。ここで結果を大きく左右するのが、審査に提出する書類の中身なのだ。
「審査にどんな情報を書くか、逆に書かないか、いろいろな選択肢があります。正しい判断材料をきちんと伝えれば本来の等級になりますが、制度や審査の実情を知らないまま思ったことを書くだけでは、本来より低い等級になってしまうこともあるんです。一方で、余計なことを書きすぎると、審査する側を迷わせたり誤解させたりして、審査が遅れることもある。だからこそ、書類に何を書くかは、ノウハウや経験がものをいうところです。審査の判断基準になる情報を正確に伝えつつ、何を書かないかも非常に大切にしています」(宮里氏)
障害年金の中でも、最も難しい部類に入るうつ病。その一分野に絞り込み、深く掘り下げてきた姿勢が、同法人の確かな実績を支えている。
書類の向こうにいる「人」を見る。封筒や声にまで行き届く配慮
障害年金の申請は「書類を書いて出せば終わり」と考えがちだが、現実はそう簡単ではない。年金事務所の窓口では、まず書類の形式が整っているかが確認され、記載漏れや誤りがあれば受け付けてもらえない。診断書の修正を病院にお願いしなければならないこともあれば、状況によって必要な書類が変わることもある。役所や病院を何度も往復させられるなかで、申請にたどり着く前に諦めてしまう人も多いのだという。
全国障害年金パートナーズは、こうした書類の取り寄せから作成、提出、年金事務所とのやり取りまでを一貫して担っている。なかでも力を注いでいるのが、審査の要となる医師の診断書だ。どれほど医師が真剣に患者を診ていても、言葉の選び方一つで審査結果が変わってしまうことがあるからだ。
過去には、診断書に記された「比較的安定してきた」という一文が、医師の意図とは違う形で受け取られたケースもあったという。医師はうつ病特有の気分の波が落ち着いてきたという意味で書いたが、審査側は「病状が改善した」と解釈したのだ。
そこで同法人では、事前に本人から入念に聞き取りを行い、障害年金の診断書に必要な情報を整理した資料を医師に渡している。医師が実態に即した診断書を書きやすくするためだ。審査する側がどう読み、どう解釈するかまで見通して書類を整える。そこに、うつ病の障害年金を専門としてきた全国障害年金パートナーズならではの強みがある。

全国障害年金パートナーズが支援のなかで常に意識しているのは、相手が「うつ病で苦しみ、思うように動けない人」であるということだ。だからこそ、細かな部分にまで配慮を欠かさない。
たとえば、依頼者に書類の確認をお願いする際には、同法人が記入した部分だけを青字にし、そこだけを確認すればよいようにしている。役所の書式には説明書きなども多く、すべてに目を通すのはうつ病の人にとって大きな負担だからだ。また、家族に病気や障害年金の手続きを知られたくない依頼者もいるため、封筒の差出人は「社会保険労務士」とだけ記し、社名に含まれる「障害年金」の文字は出さないようにしている。
さらにもう一つ、同法人が大切にしているのが「声」だ。依頼者とは電話でやり取りをすることがほとんど。それだけに、話し方一つが安心感を大きく左右するのだ。
「早口で話されると理解が追い付かない、大声で話されると怖くなってしまう、という方は少なくありません。だから、ゆっくり話す、相手が理解できているかを確認する、間や相槌のタイミングに気を配る、相手が疲れてきたと感じたら休憩をはさむ。そうした話し方を常に意識しています」(宮里氏)
話し方を訓練するため、同法人ではボイストレーナーを社員として雇い、全社員が週1回1時間のマンツーマントレーニングを受けている。さらに、トレーナーが実際の電話相談を聞き、日々フィードバックを行う。依頼者からは、「優しそうな声で安心できました」と言われることが増えたという。
また、料金体系にも覚悟がにじむ。同法人では所定の条件を満たす方を対象に、万が一年金が不支給となった場合には、着手金の10倍を返金する保証制度を設けている。専門家への依頼をためらう人の背中を押すためだ。さらに受給後も、1年間の無料相談や更新手続きのサポートを用意している。受給前から受給後まで、一貫して依頼者に寄り添う。それが全国障害年金パートナーズの姿勢だ。
届かなかった妻の障害年金。原点は「制度があるのに使えない」悔しさ
宮里氏は沖縄県出身。社会保険労務士として開業する父のもと、重度の知的障害を抱える兄弟とともに育った。支援を必要とする人が身近にいて、障害や生きづらさは特別なものではなく、当たり前にそこにあるものだった。その環境が、今の仕事に無意識のうちにつながっているのかもしれない、と宮里氏は振り返る。
学生時代、宮里氏は「沖縄を出たい」と考えるようになる。原付で島の中をどこへでも行ける環境に物足りなさを感じ、もっといろいろな場所で、知らない世界を見てみたかったのだという。もともと文化財や考古学が好きだったことから、山形県の東北芸術工科大学へ進学した。
しかし考古学の世界は、就職口がほとんどない狭き門だった。そこで現実的な道として選んだのが、父と同じ社労士だ。大学卒業後に上京し、社労士資格を取得。父の影響もあり、働き始めた頃から、いつかは独立したいという思いを抱いていた。まずは自分の実力を高めようと、経験を積む日々を送っていた。
そんな宮里氏の人生を大きく変えたのが、妻のうつ病だった。
「最初は少し調子を崩しただけだろう、しばらく休めば治るだろうと、あまり重く考えていませんでした。でもなかなか良くならず、気分の波が激しくなったり、ネガティブな言葉が増えたりして、どんどん大変な状況になっていったんです。そんなとき、本屋さんで『ツレがうつになりまして。』という本を見かけて、初めて妻もうつ病なのではないかと気がつきました」(宮里氏)
心療内科を受診すると、うつ病と診断された。治療を続けたものの、社会復帰までには時間を要した。そんななか、うつ病でも障害年金を受け取れると知り、手続きに乗り出す。社労士である宮里氏は書類を書けるつもりでいたが、年金事務所に提出すると不備を指摘され、何度も突き返された。役所や病院、年金事務所を行き来するうちに妻はついて来られなくなり、宮里氏が一人で手続きを進めたものの、結局、受給にはたどり着けなかった。
「手続きがあまりにも大変で、うつ病の方が自分でやるのはかなり難しいと感じました。また、出しては断られることを繰り返すと、どんどん自分を否定されているような気持ちになります。こんな思いを、うつ病の方に味わわせたくないと思いました」(宮里氏)
助ける仕組みがあるのに、困っている人がそこにアクセスできない。その社会課題をどうにかしたいという思いから、2014年に全国障害年金パートナーズを立ち上げた。
設立当初から、年金受給の支援と並んで宮里氏が力を入れてきたのが情報発信だ。うつ病でも障害年金を受け取れることを知らない人は、いまだに多い。そこで宮里氏は、ブログやメルマガ、電子書籍、YouTubeなどで累計1万件以上のコンテンツを発信し、10年以上にわたって「うつ病でも障害年金という選択肢がある」ことを伝え続けている。
障害年金は、安心して休むための「2番目の薬」
―障害年金を受け取れることは、ご本人やご家族にとってどのような意味を持つのでしょうか。
宮里:うつ病の方にとって、お金の不安ってものすごく大きいんです。生活費や家賃、住宅ローン、子どもの養育費……何をするにもお金が必要なのに、働けなくなると収入が止まってしまう。預金通帳の残高が毎月減っていくのを見るだけでストレスになり、休みたくても心が休まりません。病気の改善どころか、悪化につながってしまうこともあります。そんなとき、障害年金という安定した収入があれば、経済的な不安が和らぎ、安心して休める環境ができます。
お金はご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな問題です。ご家族も不安になり、本人を責めるつもりはなくても、その不安が言葉や態度に出てしまう。それで無理に働いて病気が再発したり、悪化したりする場合もあります。でも障害年金があれば、「今は安心して休んで、しっかり治してから社会復帰しよう」という選択肢が取れるんです。そこが、障害年金の大きな意義だと思います。
また、うつ病になる方は真面目な方が多く、「働けなくて家族に申し訳ない」「自分はなんて無力なんだ」と罪悪感を抱えていることもあります。年金があることで、その罪悪感が軽くなったという声もよくいただきます。私たちは、障害年金はしっかり休むために必要な「2番目の薬」だと考えています。
―単にお金だけではなく、心や家族の関係まで支えるものなのですね。
宮里:そうですね。障害年金は更新制なので、更新のタイミングで近況を伺うのですが、年金のおかげで家族が離れ離れにならずに済んだ方や、生活保護から抜け出せた方もいらっしゃいます。「年金のおかげで最悪の選択をしなくて済みました」「自分も生きていていいんだと思えるようになりました」という言葉をいただくこともあり、それだけ追い詰められている方が多いんです。
―お話を伺っていると、書類の手続きというより、人と人とのコミュニケーションの仕事だと感じます。
宮里:おっしゃる通り、コミュニケーションはこの仕事において非常に大切なものです。しっかりコミュニケーションが取れなければ手続きは進みませんし、信頼もしていただけません。ですから私たちは、単に手続きをする、書類を書く仕事だとは考えていないんです。
障害年金の受給は、「うつ病で苦しむ人が、安心して休める社会をつくる」というミッションを叶えるための手段の一つ。そう考えると、書類の見せ方や封筒の差出人表記、声、医師との関わり方など、できることはどんどん広がっていきます。その積み重ねが、今につながっているのだと思います。

目指すのは「私たちがいらなくなる社会」
―今後の展望を教えてください。
宮里:「うつ病で苦しむ人が、安心して休める社会をつくる」。その実現に向けて、社会に対してできることをどんどん広げ、深めていきたいと考えています。
その第一歩として今取り組んでいるのが、AIの活用です。具体的には、障害年金の要件の一つである保険料の納付状況を確認できるAIや、障害年金で最も重要な書類である診断書をチェックするAIを開発しています。
一般的なAIは、ネット上にあるレベルの情報は学習していますが、実務家レベルの専門的なノウハウまでは学習していません。専門的な分野ほど、ネットには情報がないんです。だから、私たちが10年以上かけて蓄積してきた、頭の中にしかない知見をテキストにして、AIに学ばせています。その量は、現時点で約20万文字になっています。このAIを社内で運用して成果を出しながら少しずつ切り分けて公開し、一般の方でも使えるようにしていきたいと考えています。
それによって、自分で申請できる人は自分で手続きを行い、自分でできない人だけ私たちや他の社労士に依頼していただくような状態にできたらと思っています。そして、うつ病の方が障害年金という選択肢にたどり着き、実際に受給までたどり着けるようにしたいです。

―そのAIを公開することで、御社の仕事が減ってしまう懸念はないのでしょうか。
宮里:私たちのノウハウを一般に公開した結果、私たちが動かなくても自分で障害年金の手続きができ、安心できる環境が手に入るのであれば、それでいいと思っています。それで自分たちがいらなくなるのであれば、本望ですね。ミッションである「うつ病で苦しむ人が、安心して休める社会」につながっていますから。むしろ最終的には、自分や自分の会社が必要ない社会になればいい、くらいの気持ちです。そのとき私たちが何をするかは、また別に考えなければいけませんね。
とはいえ、私たちが培ってきたノウハウには、ほかの分野でも生かせるものがたくさんあります。AIの活用やマーケティング、それに声もそうです。コンサルティングのような形も含めて、それらを世の中にどう活用していくか、これから考えていきたいです。
◎法人情報
法人名:社会保険労務士法人 全国障害年金パートナーズ
設立:2014年4月
代表者:宮里 竹識
所在地:東京都千代田区神田佐久間町1-8-4 アルテール秋葉原708
URL:https://spartners.jp/
◎インタビュイー
社会保険労務士法人 全国障害年金パートナーズ代表
宮里 竹識
社会保険労務士、特定社会保険労務士。2004年に社労士試験合格後、複数の社労士事務所や企業人事で実務経験を積む。2014年に社会保険労務士事務所全国障害年金パートナーズを設立し、2018年に法人化(社会保険労務士法人全国障害年金パートナーズ)。事務所設立以来、うつ病の障害年金を専門にしている。



