コロナの影響もあり、今では当たり前になったネットショッピング。便利である半面、実際に見て試した商品ではないために返品されるケースが多々あります。農林水産省が卸・メーカーを対象にした調査によると、返品商品のうち10%は廃棄処分されています。この回答項目には「仕入れ先に再返品」も含まれているため、商品を自社で生産している企業に絞ると、この廃棄処分率は更に高まると考えられます。廃棄物は焼却する際に二酸化炭素(CO2)を排出するため、返品された商品の再販売はSDGs(持続可能な開発目標)に沿った動きだと言えます。
返品の廃棄処分でバッシングを受ける例も
経済産業省が2023年8月に公開した「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、物販系分野のBtoC(対個人取引)EC(電子商取引)の市場規模は13兆9,997億円と、前の年度と比べて5.37%増加しました。新型コロナウイルスの感染拡大を機に市場がさらに拡大したオンラインショッピングにより、返品商品の数も増加しています。
しかし、企業が返品商品や売れ残り品を廃棄処分したことがわかると、思わぬバッシングにあうことがあります。2018年、イギリスの高級ブランド「バーバリー」が約41億8,000万円相当の衣服やアクセサリー類を焼却処分していたと報じられると、SNSなどで激しい批判が集まりました。その後バーバリーは、今後焼却処分を取りやめると表明しました。
米国で返品ソリューションを手掛ける企業相次ぐ
干ばつや豪雨、ハリケーンなど異常気象に直面する中、環境破壊への危機意識はますます高まっています。せっかく作ったものを大量に廃棄処分すれば、企業のブランドにも傷がつきかねません。返品・売れ残り商品を半永久的に倉庫に入れておくわけにもいかないだけに、返品された商品の再販が注目されているのです。
実は、米国ではこの返品商品の課題解決を試みるスタートアップ企業が多数存在します。
世界最大の小売業界団体である全米小売業協会(National Retail Federation)の調査によると、2020年のEC売上高5,650億ドルのうち、約1,020億ドル分の商品が返品されていたことが分かりました。
日本の返品率が数%であるのに対し、アメリカのECにおける返品率は約18%。アメリカでは日本以上に返品が当たり前の文化なのです。そのため、返品ソリューションを手掛けるスタートアップ企業が数多く誕生したと考えられます。例えば、Optoroという会社は、EC(電子商取引)上で返品された商品を自社倉庫で受け取り検品。クライアントのサイトやAmazon、各種ECサイトの中から最も高値で売れるチャネルを自動選択し出品して再販するサービスを提供しています。
BSTOCKは過剰在庫、返品商品などを売買できるB2Bマーケットプレイスを運営しています。HAIROBOTICSは、主にアパレル業界のクライアント向けに、倉庫で活用できるロボットを提供。返品商品の迅速な再入庫、混載収納対応で、返品商品の入庫効率を8-10倍向上させています。
オークションで返品の再販に貢献
当社では、返品商品を買い取りオークション形式で販売するサイト「NETSEAオークション」を通じて、商品の再流通に貢献しています。
返品商品のほかにも、運送会社が運搬中に破損させてしまった商品や、メーカーや卸会社が抱える滞留在庫も買い取りの対象です。これらを買い取り、一つひとつ検品を行い商品状態によってランクを付けます。主な落札者は個人事業主やリサイクルショップ、ECショップなどが挙げられ、年間の流通額は約8億円です。
当社が返品商品の受け皿になることで、企業側は「返品商品をキャッシュ化」できるだけでなく、「返品条件の緩和」も可能になります。通常企業はなるべく返品を受けたくないため、返品条件を厳しく設定したいというのが本音です。しかしオンラインショッピングの場合、返品条件を厳しくしてしまうと、そもそも購入してもらえないというリスクも生まれます。そこで当社が返品商品の受け皿になれば、企業は厳しい返品条件を顧客に提示する必要はなくなります。(※買い取りには事前審査があります。)
環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさんは、日本で「もったいない」という言葉に出会い、感銘を受けたそうです。Reduce(ゴミ削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)という環境活動の3Rを一言で表せるこの言葉を、マータイさんは世界共通語として広めるよう提唱しました。返品商品の再販は、まさに「もったいない」精神を体現しているものでもあります。返品商品のほとんどは、まだ使える商品です。それらを廃棄するのではなく再流通させることで、当社ではSDGs 12番目の目標「つくる責任 つかう責任」に貢献していきます。