「どの会社の統合報告書が参考になりますか?」
最近このような問い合わせをいただきます。統合報告書の発行企業数は1,019社(株式会社宝印刷D&IR研究所2024年2月)。1,000社を超える報告書の中から、自社の参考になる会社の事例を探すのは容易ではありません。
そこで弊社がまずご紹介するのが代表的な「統合報告書アワード」のランキングです。統合報告書アワードとは、日本企業が発行する統合報告書を有識者・業界団体・メディア・機関投資家等が毎年審査して、優れた統合報告書を表彰・ランキングとして発表するものです。先進的事例がチェックできるため大変参考になります。
今回は上場・準備企業から中堅中小企業・制作会社まで活用いただける2023年版(2024年3月発表)の最新版「統合報告書アワード」と受賞ランキング上位77社、好事例65社をご紹介します。審査・評価ポイントもダイジェストで掲載しますので、ぜひ統合報告書制作の参考にしてくださいね。
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統合報告書アワードとは?受賞企業はどこ?
企業の財務情報(決算情報等)と非財務情報(CSRやESG等)を統合して情報開示する任意開示ツールの「統合報告書」。
ESG経営等のサステナビリティ情報開示の仕組みとして近年急速に普及が進み、日本の統合報告書の発行企業数は1019社(株式会社宝印刷D&IR研究所調査、2024年2月)にのぼります。
統合報告書アワード(アウォード)とは、日本企業が発行する統合報告書を、有識者・業界団体・メディア・コンサルタント・機関投資家などが毎年審査して、優れた統合報告書を表彰・ランキングとして発表する制度です。主な統合報告書アワードには、以下の3つがあります。
- 日経統合報告書アワード(日本経済新聞社)
- WICI統合リポートアウォード(一般社団法人WICIジャパン)
- GPIFの運用機関が選ぶ優れた統合報告書と改善度の高い統合報告書(年金積立金管理運用独立行政法人)
統合報告書は概ね統一のフレームワークに沿っているため比較しやすいものの、公表内容は各社異なりますので、1000を超える報告書の中から、自社の参考になる統合報告書を探すのは容易ではありません。
そこで弊社がよくご紹介するのが「統合報告書アワード」のランキングです。アワードごとに傾向は異なりますが、おおむね毎年上位70社超が受賞・ランクインしています。
また、金融庁・環境省など関係省庁も参考になる統合報告書や記載事例を選定して公表しています。金融庁のホームページには65社が好事例として掲載されています。
次章で最新の統合報告書アワードとランキング、審査・評価ポイントを一覧でご紹介します。統合報告書の発行上場企業、IPO準備中の企業や、採用・広報担当者、制作会社・コンサルタントの方もぜひご活用ください。
統合報告書アワード・ランキング一覧(2023年版)
主な統合報告書アワードを主催者別に分類すると以下の3つの系統があります。
上記アワードの77社の受賞ランキング一覧と、金融庁が公表した65の好事例も含めて、評価の高い事例をご紹介します。
日経統合報告書アワード【メディア系アワード】
日本経済新聞社が主催する「日経統合報告書アワード」。1998年創設の「日経アニュアルリポートアウォード」が、2021年に「日経統合報告書アワード」としてリニューアルされました。機関投資家、コンサルタント、学識経験者が審査します。参加企業は2023年で475社・団体。エントリーは有料ですが、メディアでのPR効果が期待できます。
「第3回日経統合報告書アワード2023」の各ランキングの受賞企業と評価コメントは以下の通りです。
■第3回日経統合報告書アワード2023受賞企業一覧(参考:2022年比較)
2023年 | 2022年 | |||
受賞企業 | 評価 | 受賞企業 | 評価 | |
グランプリ |
コンコルディア・フィナンシャルグループ |
|
伊藤忠商事 |
トップの意思が具体的に伝わる |
東京応化工業 |
|
オムロン |
完成度が極めて高い統合報告 |
|
野村総合研究所 |
|
レゾナック・ホールディングス(旧・昭和電工) |
経営変革と熱意がよく伝わる |
|
グランプリE賞 |
デンソー |
|
日本航空 |
環境改善のプロセス記述が充実 |
グランプリS賞 |
村田製作所 |
|
住友金属鉱山 |
人権方針と取り組みを高く評価 |
レゾナック・ホールディングス |
|
– | – | |
グランプリG賞 |
日本ペイントホールディングス |
|
日立製作所 |
現状と課題が立体的に理解できる |
日立製作所 |
|
– | – | |
準グランプリ |
アステラス製薬 |
|
塩野義製薬 |
人的資本戦略室の設置は先進的 |
伊藤忠商事 |
|
J.フロント リテイリング |
覚悟を感じるトップメッセージ |
|
オムロン |
|
T I S |
随所に読者理解を助ける工夫 |
|
コマツ |
|
東京応化工業 |
ナラティブがほぼ完璧な報告書 |
|
西日本旅客鉄道 |
|
東京海上ホールディングス |
説得力あるパーパスストーリー |
|
ニチレイ |
|
村田製作所 |
心に残る優れた内容の報告書 |
|
新人賞 |
日本板硝子 |
|
ニッスイ |
シンプルで伝わりやすい報告書 |
審査員特別賞 |
– | – |
商船三井 |
改善努力の継続を高く評価 |
優秀賞 |
|
|
■日経統合報告書アワード2023のグランプリ受賞企業は、コンコルディア・フィナンシャルグループ、東京応化工業、野村総合研究所
「第3回日経統合報告書アワード2023」は、グランプリ3社、準グランプリ6社、分野別のグランプリE賞1社、S賞2社、G賞2社、新人賞1社、優秀賞42社が選定されました。
コンコルディア・フィナンシャルグループは、横浜銀行・東日本銀行・神奈川銀行を傘下に置く金融持株会社です。日本の上場企業の課題とされるPBR(株価純資産倍率)の向上への「トップコミットメント」に続き、ROE(自己資本利益率)向上のためのロジックツリーが5つのドライバーに集約されるなど財務戦略との関係性がわかりやすく整理されています。金融新時代に向けた地域金融機関への投資家の期待にも応える内容となっています。
東京応化工業は、昨年の準グランプリからのグランプリ受賞です。前年は特にストーリー性が高く評価されていましたが、本年度は「投資家が知りたい情報が網羅的かつ具体的に開示」されている点や、「非財務資本の長期的資産化についての言及」などの総合的評価が受賞のポイントとなっています。
野村総合研究所は、後述するGPIFのランキングでも3機関からの評価を得ており、特に人的資本に関する戦略体系がわかりやすく開示されています。
WICI統合リポートアウォード【業界団体系アワード】
グローバル機関WICI (The World Intellectual Capital/Assets Initiative)の日本法人として設立された「一般社団法人WICIジャパン」が主催する統合報告書アワード。
2013年に「統合報告書優良企業賞」として創設以来、10年超にわたり官公庁・大学等の研究者・アナリスト・投資家・事業会社が参画しています。特定のスポンサーがなく、IIRC・EU・SAABなどグローバル組織にもネットワークがあるなど「中立性」が特徴です。
2020年から2023年までのWICI統合リポートアウォードのランキングは以下の通りです。
■WICI統合リポートアウォード受賞企業一覧
2020年受賞企業 | 2021年受賞企業 | 2022年受賞企業 | 2023年受賞企業 | |
Gold Award(優秀企業賞) | 伊藤忠商事 | 伊藤忠商事 | 伊藤忠商事 | 伊藤忠商事 |
日立製作所 | MS&ADインシュアランスグループホールディングス | MS&ADインシュアランスグループホールディングス | デンソー | |
– | ニチレイ | オムロン | 東京海上ホールディングス | |
– | 日本精工 | 日本精工 | 三井化学 | |
Silver Award(優良企業賞) | 味の素 | デンソー | 塩野義製薬 | ナブテスコ |
エヌ・ティ・ティ・データ | 日立製作所 | 住友金属鉱山 | 日本精工 | |
三菱ケミカルホールディングス | – | デンソー | – | |
Bronze Award(準優良企業賞) | カゴメ | 住友金属鉱山 | アンリツ | MS&ADインシュアランスグループホールディングス |
住友金属鉱山 | 東京応化工業 | 日立製作所 | 東京応化工業 | |
東京応化工業 | ナブテスコ | 富士フイルムホールディングス | – | |
日本ユニシス | – | 三井化学 | – | |
Special Award(審査員特別賞) | – | アンリツ | 三井化学 (BronezeAwardと同時受賞) | 日立製作所 |
– | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | – | – |
■WICIアワード2023の優秀企業賞(Gold Award)は、伊藤忠商事、デンソー、東京海上ホールディングス、三井化学
2023年受賞企業は、Gold Award(優秀企業賞)4社、Silver Award(優良企業賞)2社、Bronze Award(準優良企業賞)2社、Special Award(審査員特別賞)1社です。
伊藤忠商事が2020年以降4年連続、東京海上ホールディングスは初、デンソーはシルバー賞からのグランプリ初受賞、三井化学はブロンズ賞からのジャンプアップで優秀企業賞(Gold Award)を受賞しています。
いずれの優秀企業賞の受賞企業も「総合的な完成度の高さ、統合的思考での経営の実践、中長期の価値創造がステークホルダーとの関係ごとにわかりやすく示されている点」などの基準で高く評価されています。
三井化学は、マテリアリティに紐付くKPI目標と担当執行役員名も記載するなど経営の強いコミットメントが評価され、審査員特別賞から2023年度の優秀企業賞へとつながっています。
GPIFの運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」「改善度の高い統合報告書」ランキング【機関投資家系アワード】
世界最大規模の機関投資家として知られるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内株式の運用を委託する運用会社が選んだ統合報告書ランキングです。4機関以上の運用機関から高い評価を得た「優れた統合報告書」「改善度の高い統合報告書」がランキングとして発表されます。
GPIFの運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」「改善度の高い統合報告書」のランキングは以下の通りです。
■GPIFの運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」「改善度の高い統合報告書」一覧
2020年 ランキング |
2021年 ランキング |
2022年 ランキング |
2023年 ランキング |
|
優れた統合報告書 | 伊藤忠商事 | 日立製作所 | 伊藤忠商事(7) | 伊藤忠商事(6) |
日立製作所 | リコー | 日立製作所(6) | アサヒグループホールディングス(5) | |
東京海上ホールディングス | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | オムロン(6) | 日立製作所(5) | |
キリンホールディングス | 東京海上ホールディングス | リコー(6) | 双日(4) | |
不二製油グループ本社 | オムロン | 東京海上ホールディングス(5) | 三菱UFJフィナンシャル・グループ(4) | |
三井化学 | 伊藤忠商事 | 味の素(4) | – | |
三菱ケミカルホールディングス | – | – | – | |
花王 | – | – | – | |
オムロン | – | – | – | |
リコー | – | – | – | |
丸井グループ | – | – | – | |
改善度の高い統合報告書 | 日本ペイントホールディングス | – | – | – |
大東建託 | – | – | – | |
味の素 | – | – | – | |
みずほフィナンシャルグループ | – | – | – |
■GPIFの統合報告書2023ランキング上位は、伊藤忠商事、アサヒグループホールディングス、日立製作所、双日、三菱UFJフィナンシャル・グループ
GPIFの統合報告書2023ランキングは、優れた統合報告書として4機関以上が高く評価した企業は4社です。
2024年2月発表の2023年版のランキングは、常連の伊藤忠商事が6機関から選定されて本年度もトップ。次いで、アサヒグループホールディングス、日立製作所が5機関、双日、三菱UFIフィナンシャル・グループが4機関から高く評価されています。
伊藤忠商事はCEOメッセージの秀逸さ、構成が企業価値・創出価値・成長率・資本コストという式で構成されたストーリーが特徴的です。
アサヒグループホールディングスは、事業が施策別に生み出すインパクトと価値連鎖の検証を行っている点が評価されています。
日立製作所は例年完成度の高さが評価されていますが、その充実度はそのままに、本年度は統合報告書の断捨離(ページ数の半減)に挑戦しています。サステナブル社会における多様なステークホルダーとのコミュニケーションツールとしての統合報告書の在り方を示す道標となり得るかもしれません。
上場を目指すn-2企業はもとより、地域の中核企業や人的資本経営を実践する中堅・中小企業の情報開示のヒントとしても大変興味深い注目事例です。
金融庁|有価証券報告書における記述情報の開示の好事例集
(サステナビリティ情報に関する開示例)
有価証券報告書における人的資本の開示、サステナビリティ情報の開示の義務化に伴い、主にESG経営に関する内容の充実が図られています。次のマテリアリティ別に好事例が掲載されています。
- E:環境(気候変動関連等)
- S:社会(人的資本、多様性 等)
- G:経営⽅針、経営環境及び対処すべき課題等
- G:事業等のリスク
- G:経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)
好事例集に選定されている企業は以下の通りです。
E:環境(気候変動関連等)の記載例
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
カゴメ株式会社
SOMPOホールディングス株式会社
J.フロント リテイリング株式会社
セイコーエプソン株式会社
株式会社リコー
不二製油グループ本社株式会社
株式会社 丸井グループ
株式会社髙島屋
株式会社中国銀行
株式会社滋賀銀行
双日株式会社
大東建託株式会社
株式会社サンゲツ
コスモエネルギーホールディングス株式会社
イリソ電子工業株式会社
AZ-COM丸和ホールディングス株式会社
豊田合成株式会社
東急不動産ホールディングス株式会社
三機工業株式会社
株式会社ヤマダホールディングス
味の素株式会社
S:社会(人的資本、多様性 等)の記載例
株式会社 丸井グループ
双日株式会社
カゴメ株式会社
三井物産株式会社
株式会社サンゲツ
J.フロントリテイリング株式会社
オムロン株式会社
アンリツ株式会社
豊田合成株式会社
東急株式会社
株式会社リコー
帝人株式会社
株式会社ひろぎんホールディングス
株式会社村田製作所
株式会社髙島屋
株式会社キッツ
コスモエネルギーホールディングス株式会社
不二製油グループ本社株式会社
旭化成株式会社
G:経営⽅針、経営環境及び対処すべき課題等掲載例
キリンホールディングス株式会社
オムロン株式会社
カゴメ株式会社
日本瓦斯株式会社
東洋紡株式会社
株式会社キッツ
⻑瀬産業株式会社
横河電機株式会社
ENECHANGE株式会社
G:事業等のリスクの掲載例
株式会社明電舎
J.フロントリテイリング株式会社
帝人株式会社
コニカミノルタ株式会社
オムロン株式会社
住友ベークライト株式会社
ヤマハ株式会社
テクノプロ・ホールディングス株式会社
アイサンテクノロジー株式会社
G:経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)掲載例
「経営成績、キャッシュ・フロー等の分析」
カゴメ株式会社
味の素株式会社
大和ハウス工業株式会社
ダイドーグループホールディングス株式会社
株式会社メンバーズ
「重要な会計上の見積り」
株式会社 丸井グループ
⻑瀬産業株式会社
三井化学株式会社
出典:金融庁|有価証券報告書における記述情報の開示の好事例集
詳細は、マテリアリティ別に分類された金融庁のホームページ掲載の好事例集を参照して該当箇所をチェックしてみてください。特に重点的に記載したい項目がある場合は、記述の参考になるでしょう。
まとめ|統合報告書アワード・ランキングの傾向と対策(2023年版)
■2023年版は伊藤忠商事、日立製作所の伝統と挑戦、コンコルディア・フィナンシャルグループ、東京応化工業、野村総合研究所の躍進に注目
2023年版(2024年3月発表)の主な統合報告書アワード・ランキングでは、伊藤忠商事、日立製作所が前年に続き安定的な高評価を得ており、コンコルディア・フィナンシャルグループ、東京応化工業、野村総合研究所が躍進しています。
伊藤忠商事の強さは言うまでもありませんが、本年度の注目は、日立製作所の統合報告書のページ数の半減の試みです。きわめて充実度の高い内容はそのままに、多様なステークホルダーとのコミュニケーションツールとしての役割をより鮮明に最適化しています。
上場を目指す企業にとっての統合報告書作成にかかるリソースの最適化はもとより、地域の中核企業や人的資本経営を実践する中堅・中小企業でも実現可能な情報開示のヒントとしても大変興味深い取り組みです。
個別のアワードの傾向をみると、日経統合報告書アワード2023のグランプリは、コンコルディア・フィナンシャルグループ、東京応化工業、野村総合研究所の3社。本年は総合評価に加え、日本の上場企業のPBR改善の課題に着目した取り組みが高く評価されています。
WICI統合リポートアウォード2023では、伊藤忠商事が4年連続で受賞しています。
GPIF統合報告書ランキング2023では、伊藤忠商事、日立製作所、アサヒグループホールディングス、双日、三菱UFJフィナンシャル・グループが4機関以上から高い評価を得てランキング上位となりました。
総合的に、伊藤忠商事、日立製作所の安定感と、今後の日本企業への裾野拡大の道筋を示すパイオニアとしての先進的な取り組みが印象的でした。
■トップのコミットメントの重要性、数字とビジュアルで語る企業価値
いずれの統合報告書アワードも「トップのコミットメント」の重要性をたびたび指摘しています。
開示義務がある上場企業のみならず、統合報告書は中堅企業・上場を目指す企業においても、お客様・取引先・社員・家族・金融機関・株主・地域社会・未来のステークホルダーに、トップメッセージはもとより、自社の理念・存在意義・戦略・組織風土・目に見えない企業価値、草の根の企業活動などを、数字とビジュアルで語ることができます。
実務面では営業活動や採用活動のツールとして、あるいはインナーコミュニケーションとして従業員の家族のエンゲージメントの向上にも活用できます。
■価値創造ストーリーのわかりやすさ
完成度の高さで評価の高い伊藤忠商事などの商社やオムロンなどグローバル企業は、多数の事業が連動する複雑なビジネスモデルを構成しており、その関係性をわかりやすく表現する必要があります。多様なステークホルダーに自社の事業の全体像を説明するために、「価値創造ストーリー」の概念図のわかりやすさが重要です。
例えば、お客様や従業員のご家族から「何をしている会社かわかりにくい」と言われることが多い企業の場合、同社「価値創造ストーリー」の作成方法は参考になるかもしれません。
アワード表彰企業が発表されたら、まずは同業他社・サプライチェーンでつながる企業・ランキング上位の事例や評価などを参考に、自社の特徴を踏まえ、「こんな統合報告書がいい」「当社はこの方向性は違う」といった分類をしてみるとよいでしょう。
編集コンセプト・構成の組み立て・効果的なデータの使い方・訴求力のあるデザイン・写真など、様々な視点から、参考にしたい事例が見つかるはずです。
■他社の事例との比較で見えてくるもの
弊社でも統合報告書アワード・ランキングの上位企業の取材・インタビューを通じて、そのクオリティ・モチベーションの高さを実感するところです。
常連企業の実績・推進体制は非常に充実しており、はじめて統合報告書を制作する会社にとっては、アワード常連企業のクオリティを再現するのはハードルが高いかもしれません。
他社の事例と比較することで、「目指すべき方向性」「自社の現在地」を知ることができます。
統合報告書は、その作成プロセスを通じて、より自社を深く知るきっかけとなりますので、従業員のエンゲージメントの向上にも活用できます。
実際に、弊社が統合報告書・サステナビリティレポート等の制作をお手伝いするクライアントからは、「うちの会社はこんな良い企業だったのか!とあらためて実感した」「普段接することがない役員や他部署の取り組みを知ることができた」「プロジェクトを通じて社内のコミュニケーションも良くなったように思う」といった感想をいただきます。
重要なのは、「なぜ何のために統合報告書をつくるのか」です。
統合報告書は、様々なステークホルダーとの「コミュニケーションツール」です。上場・非上場を問わず、自社のステークホルダーに、いかなるメッセージを、どのようなコミュニケーション方法で伝えるのがベストか。その最適解は一つではありません。
企業ごとにステークホルダーとの関わり方は異なります。上場を目指す企業のみならず、採用・広報活動に力を入れたい企業は、業種・規模を問わず、他社のサステナビリティの取り組み事例を参考にするとヒントが見えてくるでしょう。
サステナビリティ情報メディア「coki(公器)」では、グローバル企業から中堅・中小企業まで幅広い取り組み事例をインタビュー・取材を通じて紹介しています。統合報告書・サステナビリティレポート(ESGデータブック含む)の制作については、こちらまでお問い合わせください。