株式会社フォーバルが人的資本に関する取り組みをまとめた『Human Capital Report 2024』を12月9日、コーポレートサイトで開示した。人的資本開示の透明性を高め、持続可能な成長を目指す同社の姿勢が、本レポートを通じて改めて示されたといえる。
経済活動において人的資本の重要性が高まる中、小規模企業を支援する「企業ドクター」としての立場をさらに強化する狙いがある。
近年、人的資本は企業価値を測る新たな指標として注目を集めている。社員の能力やスキルは単なる「コスト」ではなく、事業の成長を支える「資本」として位置づけられるべきだという考え方だ。フォーバルはこの理念を先取りする形で、国際基準に準じた情報開示の整備を進めてきた。
ISO 30414がもたらす透明性と信頼
フォーバルは2023年、人的資本情報開示の国際基準であるISO 30414の認証を国内7社目として取得した。この認証により、社員の採用状況、育成、福利厚生といった人的資本のデータを定量的・定性的に把握し、透明性を持って開示する仕組みを整えた。
ISO 30414は、人的資本という抽象的な概念を測定可能な指標に落とし込み、企業の持続可能性や投資価値をより正確に評価するためのガイドラインである。フォーバルの取り組みは、投資家や社会からの信頼獲得に寄与し、人的資本経営のモデルケースとして注目されている。ほかに取得している企業では、大手人材派遣のアデコや豊田通商、日立建機、リンクアンドモチベーションなどが有名。
ダイバーシティ、働き方改革、教育…多角的な人的資本経営
『Human Capital Report 2024』には、フォーバルの人的資本経営の全貌が詳述されている。その中でも、ダイバーシティ推進の取り組みの開示に力が注がれている。障がい者雇用率は2.98%と法定雇用率を上回り、女性管理職比率も今期15%を目標に掲げるなど、働く環境の多様性拡大に力を入れている。男性の育児休業取得率も95.7%と政府目標を大幅に超えており、育児と仕事を両立できる環境づくりを積極的に進めていることがわかる。
また、社員のスキル向上を支援する教育制度も充実している模様だ。ISO 30414認証に基づく研修プログラムの受講率は多くの分野で90%を超え、資格取得を奨励する制度も整備されている。同社は社員一人ひとりを「資本」として捉え、その成長を企業の成長へと結びつける仕組みを追求している。
持続可能な成長と社会的価値創出を目指して
フォーバルの人的資本経営は、同社が掲げる「新しいあたりまえ」の実現を目指す取り組みの一環である。社員の幸福と成長を起点に、顧客への価値提供を広げ、それを社会全体の利益へと還元する。その理念は、政府が掲げる「グリーン」「デジタル」「地方創り」「少子化対策」といった社会課題に対応する「F-Japan構想」とも結びついている。
新しい「あたりまえ」を創るために
人的資本は見えない資産である。しかし、それを可視化し、磨き上げることで、企業は新たな価値を創出し得る。フォーバルの挑戦は、その可能性を証明する試みだ。社会構造が変化し続ける中で、同社が目指す「新しいあたりまえ」こそが、次代の経済を支える礎となるだろう。
読者がこのレポートを通じて得られる示唆は多い。人を大切にする経営は、企業の未来を照らす羅針盤となる。フォーバルの試みがその道標であるならば、私たちもまた、未来への航海を共にする乗組員であるに違いない。