滋賀県に本社を置く株式会社リンクは、中古農機具の売買事業を主力とする企業だ。累計販売台数約22万台を誇り、全国33店舗を展開、農家にとって欠かせない存在となっている。
同社は近江商人の「三方よし」の精神を大切に、単なる中古農機具の売買にとどまらず、肥料販売や農家へのコンサルティングなど、農業を総合的に支える事業を展開している。
その広報担当を務める井上葉月氏は、FPと宅建という異色の資格を武器に、独自のスタイルで会社のPRに奮闘している。
中古農機具売買「農機具王」で循環型社会を推進
同社の主力事業である中古農機具売買「農機具王」は、不要になったトラクターやコンバインなどを農家から買い取り、整備・清掃した上で、次の世代の農家に販売する。
「新品の農機具は高額です。特に新規就農者や小規模農家にとって、中古農機具は大きな助けになります」と井上氏は語る。
トラクター、コンバイン、田植え機など、様々な種類の農機具を取り扱っており、(機械によって異なりますが)新品(販売当初の価格)の5~6割程度の価格で提供することで、農家の負担軽減に貢献している。このリユース事業は、資源の有効活用という観点からもSDGsの目標達成に寄与する重要な役割を担っている。
肥料販売事業で環境負荷低減と農家支援を両立
株式会社リンクは、肥料販売事業にも力を入れている。肥料の過剰使用や不適切な使用は作物の収量減少や環境問題を引き起こす可能性がある。
「私たちの肥料は、田んぼに水を張って流し込むだけで効果を発揮するんです。機械を使う必要がないので、環境負荷低減にも繋がります」と井上氏は説明する。
同社はプライベートブランドの肥料を開発し、農家に適切な肥料の使用を推奨することで、環境負荷の低減に貢献。さらに、肥料アドバイザーによる指導や、高温障害などの問題解決のための肥料提案など、農家へのきめ細やかなサポート体制を構築している。
近江商人の「三方よし」で持続可能な農業の実現を目指す
同社の事業は、近江商人の「三方よし」の精神に基づいている。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の三つの視点から事業を展開することで、持続可能な農業の実現を目指している。
「中古農機具の販売は、農機具を売りたい農家と、買いたい農家の双方にとってメリットがあります。さらに、環境負荷を低減する肥料を販売することで、社会全体にも貢献できると考えています」(井上氏)。
FPと宅建、二つの資格取得の理由と学習方法
井上氏は心理学を専攻していたが、大学3年生時に、就職活動を見越して、ビジネスのことを知るために、ファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得を考えるようになったという。
井上氏がFPの資格を取得した理由は、就職活動での自己PRと、将来の人生設計に役立てたいという思いからだった。
「心理学以外の知識を身につけ、ビジネスの世界でも通用するスキルを習得したいと考えていました」と井上氏は振り返る。
FPの資格取得には、ユーキャンの通信講座を利用。大学3年生の時から勉強を始め、毎日教科書を持ち歩くほど熱心に学習に取り組んだという。「試験に落ちるのが怖くて、必死でした」と笑う。
その後、不動産業界に興味を持ったことから、宅地建物取引士(宅建)の資格も取得。
「家を見るのが好きで、間取り図を見るのが趣味だったんです」。
宅建の資格取得にもユーキャンの通信講座を利用し、大学3年生から4年生にかけて、卒業論文執筆と並行しながら勉強に励んだ。
資格を名刺に 広報担当で活きる意外な活用法
現在、広報担当として活躍する井上氏は、FPと宅建の資格を意外な方法で活用している。名刺に資格を記載することで、相手に信頼感を与え、見た目とのギャップで印象付けるというユニークな方法だ。
これは社長の提案によるもので、社風を反映したユニークな取り組みと言える。「最初は戸惑いましたが、今では自分の強みになっています」と井上氏は笑顔で語る。
農業の総合的なソリューション提供を目指す
株式会社リンクは、農家支援の強化、海外展開、そして農業の総合的なソリューション提供を目指している。農家の収入向上を支援することで、農業の魅力を高め、新規就農者の増加にも貢献したいと考えている。