国際協力機構JICAとのカンボジアのごみ問題の解決支援から、なでしこ1部リーグに所属する地元女子サッカーチームのサポートによる地域貢献まで。愛知県で再生資源の回収などの事業を手がける興亜商事株式会社は、「アスノワ(EARTHNOWA)」=地球(Earth)の明日・循環の「環(わ)」・仲間の「輪」・平和の「和」というコンセプトで、多くの仲間と共に社会課題の解決にチャレンジしています。公益資本主義に基づく新しい社会をつくり、地球環境を守る仕組みを作っていくことを目指す、「SDGsの推進こそ興亜商事の存在価値」と語る代表取締役 奥村雄介さんに、事業内容やステークホルダーへの想いについて伺い、SDGsへの取り組み状況をレポートします。
難しいからこそチャレンジする、世界への事業展開の原動力
──御社の代表的な活動についてお伺いできますか。
興亜商事株式会社は、1952年の設立以来、古紙のリサイクル事業を中心として地域社会に貢献してきました。2022年に設立70周年を迎えるのを機に、「アスノワ」への社名変更を準備しています。
「アスノワ(EARTHNOWA)」とは興亜商事のビジョンである、「地球(Earth)」と「明日」、循環の「環(わ)」・仲間の「輪」・平和の「和」という意味。たくさんの仲間たちと共に社会が抱えている課題の解決にチャレンジをして、豊かな地域や公益資本主義に基づく新しい社会を育て、地球環境を守る仕組み作っていくことを目指しています。
「地球を救うヒーローになろう」というミッションを掲げ、SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の実現を目指しています。それこそ興亜商事の存在価値だと言える会社にしていきたいと思っています。
社会課題解決に向けた取り組みとしては、まず、ごみを減らすことやリサイクルを推進する活動になります。具体的には、愛知県とその周辺地域で発生するごみ・廃棄物・リサイクル資源の回収事業に70年間携わってきました。
次に、私たちの地域には耕作放棄地がたくさんあるので、こちらをお借りして、障害者さんと一緒においしい野菜を作る取り組みをしています。耕作放棄地問題を解決したいという社会課題と、福祉が抱えている社会課題を組み合わせて、おいしい野菜を作るチャレンジに取り組んで4年目になります。
関連して、障害者が共存する社会をつくりたいと思い、2018年に障害者を支援する特定非営利活動法人(NPO法人)オークン・チュランもつくりました。「オークン・チュラン」とはクメール語(カンボジアの言語)で「最上級のありがとう」という意味です。ちなみに、就労継続支援B型事業所の名称「クルーサ」は、「家族」という意味です。どちらかというと、私は目指しているものを社名に入れたいタイプです。
また、2014年にカンボジアへ進出をしてJICAのプロジェクトも進行中で、2つの法人を立ち上げ、ごみ処理に関わる事業を進めています。
その他に、カンボジアで国連開発計画(UNDP)とのつながりを持つ中でSDGsの考えに共感し、日本でもSDGsを普及していく活動にもチャレンジをしています。行政、大手企業、子どもたちなどにSDGsを普及させる出前授業や講演も積極的に行っています。
もう一つ、2020年12月から「NGUラブリッジ名古屋」という女子サッカーチームの運営にチャレンジをしています。
「なでしこリーグ」の3部に所属しているチームでしたが、2021年から1部に昇格することが決まり、同年9月より日本国内で開幕する日本初の女子サッカープロリーグ「WEリーグ」への参入を目指すということでした。そのためには株式会社でなければ進めていけないということで、現在の代表取締役 堀田崇さんから経営に携わってほしいという依頼があり、株式会社LOVELEDGEの取締役に就任しました。
──ごみ処理、地域貢献、農業、障害者支援、海外での活動、そしてサッカーチームの運営まで、奥村さんの行動力には驚かされます。その原動力は一体何なのでしょうか。
人に頼られることや感謝されることが好きなのだと思います。
また、実現が難しいと言われることにチャレンジをしていくことも大好きです。一般社団法人公益資本主義推進協議会大久保秀夫会長にも「カンボジアでの廃棄物事業は難しい」と言われ、多くの方からも「絶対に無理だ」と言われるぐらい困難な課題がたくさんありました。そう言われると、余計にチャレンジしたくなってしまいます。
興亜商事のステークホルダーへの想い
回収した古紙を販売していただいている商社です。先代の頃から長年お世話になっています。先代から私に代表が変わった時も、私のことを第一に考える対応をしてくださり、長年のお付き合いを大切にしていただいています。心を持って弊社と接してくださいます。できないこともたくさんあるのですが、その都度サポートしていただき、本当に感謝しています。
海外展開など、さまざまな事業を行っていますので、弊社が持つ経営資源が何かしらお役に立てることがあるかもしれません。古紙だけではなく、地域をより良くしていく取り組みももっと何かご一緒にできることがあるのではないかと思っています。さらにいろいろなことにチャレンジできる機会を与えていただけるとありがたいですね。本当に教えていただきたいことばかりです。
日本紙パルプ商事さんのグループ会社です。古紙から新しい紙を製造する紙のリサイクル工場です。本当に小さな弊社を大事にしていただいて、お付き合いをしていただいていることに感謝しています。
製紙メーカーには納入の枠があります。各会社に毎月これだけ納めていいという枠を設定していただけるのですけれども、弊社は本当に良くしていただいて、いつも温かくサポートしていただいています。正直なところ、これ以上なにか申し上げることがないぐらい感謝しています。
一般廃棄物の処理事業者である平田興業さんと、古紙の回収が本業である弊社とは業界が異なります。しかし、いつも新美社長は古紙回収業者のことを考えてくれていて、誰よりも先に心配をして、いろいろな環境を変えてくださるのです。現場のことをとても大事にしてくださる社長です。
弊社の現場で困っていることがあれば、いろいろな店舗に積極的な交渉をしてくださいます。本当にすごい人だなと思います。自分のことよりも他人のことを優先して心配してくださる方はなかなかいませんので、感謝と共に尊敬をしています。
ご要望や注文があれば何なりとお申し付けください。弊社がサポートできることもたくさんありますので。
愛知県で回収業務を代行していただく会社です。柴田社長は私以上に弊社のことを心配してくださいます。私が掲げているビジョンや夢を誰よりも理解しようとして、誰よりも動いてくださいます。
柴田社長は、365日トラックに乗って現場を回っている、まさに現場のプロフェッショナルです。毎日何回も電話をくださり、弊社の管理職や社員に説教までしてくださいます。もう弊社の一部のような存在です。
本当に想像できないほど、弊社および私のことを考えて、いつも愛情たっぷりのサポートをしていただいています。今、弊社がそれなりに前へ進むことができているのは、柴田社長の愛情のおかげです。柴田社長抜きでは、多分、ここまで前に進んでいないと断言できるぐらい、現場を本当にサポートしていただいています。本当にありがとうございます。
柴田社長は、365日トラックに乗って、夜中から午前中まで回収しているスーパーマンですが、ご自身の体のこともご自愛いただきたいです。いつまでも元気で働いていただきたいと思います。
堀田社長は弊社の顧問弁護士です。女子サッカーチーム「NGUラブリッジ名古屋」の運営を担うLOVELEDGEで代表取締役を務めています。
堀田社長が弊社の顧問弁護士というつながりから、2019年に女子サッカー選手を弊社の社員として雇用していました。そういう経緯で、2020年12月から私もLOVELEDGEのマネジメントを一緒に行うようになりました。
顧問弁護士としては、いつも相談に乗っていただいて本当に心が救われます。ありがとうございます。
また、サッカーというスポーツ業界のマネジメントに加わるきっかけもいただき、ありがたいと思っています。今まで私が経験してこなかった分野にチャレンジをさせていただいているのですが、学ぶこと、発見、自分自身の考えを反省しなければいけないことなど、たくさんのことに気付かせていただいています。
素晴らしい堀田社長が育ててきたチームですので、素晴らしい選手・スタッフたちがいます。そのような人たちと1つの目標に向かってチャレンジしていく仲間に入れていただいたことに対して、本当に感謝しています。
堀田社長は、1部リーグ優勝ということだけではなく、さらに大きなことを考えていると思います。ぜひ、それをビジョンとしてしっかり掲げていただきたいと思います。私もそのビジョンを実現するために一緒になって奔走したいと考えていますので、よろしくお願いします。
奥村さんは、本当に私の良き理解者です。「NGUラブリッジ名古屋」がWEリーグを目指すため、クラブとしてもっと大きく、強くなるために運営団体をNPO法人から株式会社に変更することが2020年に決まりました。しかし、私はこれまで「弁護士」としての経験しかありません。正直なところ、私に「企業経営」ができるのかと不安でした。そこで奥村さんに相談したところ「手伝いますよ」と快諾いただき、取締役として株式会社としての収益化や、パートナーの獲得、グッズ販売などにおいて力を貸していただけることになったのです。奥村さんは「堀田さん、私がバックアップするのでぜひ社長をやってください」と背中を押してくれたのです…
弊社の仕事は本当に大変です。トラックに乗り降りして古紙を積み込む力仕事が多くあります。夏には体感温度で50度を超えることもあります。雨の日も雪の日も、自分自身の体調が悪い日であっても出勤して、会社や地域のために働いてくれている社員には本当に感謝をしています。経営者が何を言おうがやろうが、現場で一生懸命働いてくれている社員がいない限り、この事業は成り立ちません。苦しい中でも毎日頑張ってくれている社員には感謝が尽きません。
また、そういった大変な仕事で毎日疲れて帰っていく社員を温かく迎えてくださり、癒してくださる家族の皆様にも感謝を申し上げます。
入社して20年以上の大ベテランです。現場のことは何でも分かっています。弊社の社員が10名から50名ほどに増えたことから、マネジメントの難しさを痛感している時期がありました。それを乗り越えて、彼が現場にいないと回らないぐらい、中心になって頑張ってくれています。社員たちを引っ張ってきてくれたことにとても感謝しています。
今後は新しいことに自分からどんどんチャレンジしていってほしいと思います。指示を実行する天才的な能力があります。あとはプラスアルファで、自分がやりたいことをきちんと設定して、それに向かって取り組んでいってほしいと切に願っています。
半年ほど前に入社した新しい事務員の女性社員です。十数年間コールセンターで働いていましたので、電話応対が神業と言ってもよいほど、本当に素晴らしい対応をされます。誰に対しても明るく接することができ、みんなも私も元気をもらえるので、野田さんの加入によって会社が良い方向に変化しています。お客様にとっても、社員にとっても、私にとっても本当にありがたい存在です。とても感謝しています。お局様のようにさらに存在感を発揮してくれるとうれしいです(笑)。
2020年7月から立ち上がった事業で、今まで事故がなく、人も不足することなく進めることができているのは、石原さんがうまく統率をしてくれているからです。62歳なのですが、毎日パッカー車に横乗りをして、汗をかいています。自分の出勤日でない時も会社によって、古紙事業の社員に声を掛けてくれているスーパーマンです。
私とコミュニケーションを取る時も、「まず社長は何をしたいのですか」という聞き方をしてくれるのです。会社の方向性や考えを第一に理解しながら、自分がやるべきことを決定できる優秀な人間です。優先順位を間違えることがない人です。
他の社員がまねをできないくらいすごい方なので、他の社員が「私も石原さんのように頑張ろう」と思える程度に、少しセーブしてほしいです。体には本当にご自愛ください。
サッカー選手としては、昨年は試合にも出られず、自分のプレーができず、非常に苦しみました。ただし、1年間、自分を磨いたので、今はディフェンスリーダーを任されるぐらい、チームに欠かせない存在になっています。本当に素晴らしいし、尊敬しています。
仕事の面でも、非常に頭の回転が速く、やるべきことをすぐに理解できて、優秀な人間です。私としても助けられることがたくさんあります。
選手として、今まで以上に力を付けて、チームのために活躍してほしいと思います。仕事としては、新人選手が弊社に入社してきていますので、彼女たちに仕事をきちんと伝える教育的なリーダーになってほしいと期待しています。
カンボジアで弊社のごみリサイクル会社が設立された翌年の2015年から働いてくれています。英語も堪能で、非常に優秀です。優秀とは「優しさに秀でている」と書きますが、まさに誰に対しても優しさがあります。頭の回転も速いので、何がこの会社にとって必要かということを理解し、優しさを基準に行動することができます。将来的にカンボジアの会社を任せたいと思う人材です。
あなたの周りに対する優しさや、一生懸命に取り組んでくださることで、本当に助かっています。カンボジアで事業を一つひとつ進めていく中で、あなたの現場での気配りや取り組みがなければ、今ここまでカンボジアの事業は進んでいないと思っているほど、あなたは弊社にとって重要な存在です。
リーダーとして前面に出なければいけない部分では、自分の考えを押し通してでもチャレンジしてほしい。トライ・アンド・エラーも必要です。「あなたの人間性や優しさはみんな好きだから思う存分チャレンジしても大丈夫だよ」と言ってあげたいです。
日本語も英語も堪能で、私がカンボジアへ行くと通訳を務めてくれます。私が会ったカンボジア人の通訳の中で最も優秀です。誠実で真面目です。不足している点なども私が言わなくてもきちんと的確にフォローしてくれます。信頼できる存在です。
チリーさんは、今年の6月でいったん退社して、日本への留学が決まっています。国費留学ですから、いかに優秀か分かっていただけると思います。
私が話す代わりになってくれて本当にありがとう。私ができていないことや分からないことも織り交ぜながら通訳してくれるので、とても助かっています。会社として、手続きがきちんとできていないことや不備な点はたくさんありますが、あなたはとても優秀なので、いつも早く正確に対応してくれます。スーパー・ビジネス・ウーマンです。いつも助けてくれて本当にありがとう。
弊社は、愛知県・岐阜県・三重県の住民の皆様から、生ごみ・可燃物・プラスチック・古紙などを回収させていただくことで事業が成り立っています。皆様がこの地域に暮らしていただいていることが弊社の事業活動の源泉になっていますので、本当に感謝しています。
トラックや大きな車で作業をすることもありますので、地域の方々に心配・不安を生じさせることも多々あると思いますが、誰かがこの事業を行わなければ、地域がきれいにならず、リサイクルの推進もできないということを理解していただいていることに対しても、感謝の言葉を申し上げます。
弊社が活動する中で、多くの住民が「おはよう」、「ありがとう」という温かい声をたくさん掛けてくださいます。時には「ちょっと休んでいって」と言いながらジュースを提供して下さるなど、そういった一つひとつの心遣いが弊社社員の力になっています。
このような関係性がより良く続けられるように、引き続き私たちも研鑽を積んでいきますので、応援していただきたいと思っています。
中京銀行さんは多くの応援してくださいます。条件面でも配慮していただき融資をしてくださいます。弊社のような小さな会社であるにもかかわらず、頭取との面談の機会も与えてくださいました。
いつも無理難題を相談して、逆にこちらにメリットとなるような提案をいただき、ありがとうございます。弊社はさらに頑張ってまいりますので、今後とも応援いただけますようお願い申し上げます。
私の経営的な師は一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)の大久保秀夫会長ですが、心の師としては大久保寛司さんになります。
大久保会長が大久保寛司さんの本を読んで、「私が思っていることと全部一緒だ」と興奮して私に電話を掛けてきて、「すぐに会わせてほしい」と言われたほどの人物です。経営という観点よりも、在り方や心の世界で感銘を受けた方です。
5年前、「いい会社」に投資をすることで有名な鎌倉投信株式会社が主催する勉強会があり、私もそこに推薦していただきました。その時の講師が大久保寛司さんでした。そこからお会いする機会がたくさん増えました。
決して怒らず、いつもにこにこしているのですけれども、全てが見透かされているような感覚になります。お会いすると怖いと感じるぐらいです。私が経営者として持つべきだと思っている考え方は、大久保寛司さんから多くのことを学ばせて頂いております。それを実践して、弊社をここまで進めてこられました。
あらためて、いつも心の面でサポートしていただき、ありがとうございますと申し上げたいと思います。直接お会いする機会が減っても、教えていただいたことは心の中にしっかりと残って、実践しています。
最も救われたことは、自分が頑張らなくてもいいという考え方でした。もっと違うアプローチの仕方でいいのだと教えてもらいました。それから本当に楽になり、見える世界がだいぶ変わりました。「正しいことを言うことがリーダーの仕事ではなく、正しいことをすることが、結果を出すのがリーダーの仕事だ」という言葉にも感動しました。もちろんこれはほんの一部ですが、心の在り方を教えてくれた、まさに心の師です。
一緒にカンボジアにまで行ってくださり、本当に感謝しています。もっとたくさんの経営者に、寛司さんを知ってもらえる機会をつくっていただけるとうれしいですね。
私と同年代で、尊敬する本当に素晴らしい経営者です。彼と約束して、中部地区でテラ・ルネッサンスを支援するサポーターズクラブ東海(TSC東海)を立ち上げて事務局を務めています。また、テラ・ルネッサンスの活動に役立ててもらうために、少額ながら自分の収益を寄付しています。
彼の尊敬すべきところは、ぶれない心と、社会・世界全体の平和を考えて、その中で自分ができることをひたむきに行っていくという力強さです。いろいろと悩んだ時には相談に乗ってもらい、弊社の経営に関してもアドバイスをしていただいています。
最低でも今の10倍のスケールで活動してほしいですね!これからも応援していきます。
地球と未来世代への想いは、弊社のビジョンであり、今後の社名となる「アスノワ」に集約されています。新社名のアスノワのアスとはアース(地球)、明日(子どもたちの未来)を表し、ワは、仲間の輪と循環の環を意味します。
私たちの夢は、豊かな地域を創り、新たな社会を育て、地球の環境を守る仕組みを作ることです。そのためには、たくさんの仲間たちが必要です。仲間がいれば、なんでもできる。なんでも楽しめる。未来世代に素晴らしい世界をプレゼントするために、仲間たちと地球を救うヒーローになって、地球が困っている場所(地域)へと向かうのです。これから行くから、もう少し待ってね!と地球に伝えたいですね(笑)。
興亜商事株式会社の企業情報
興亜商事株式会社
(2022年4月11日、「アスノワ」に社名変更予定)
代表者:奥村雄介
設立:1952年4月11日
所在地:愛知県
興亜商事は地元愛知県女子サッカーチームのNGUラブリッジ名古屋を応援しています!
興亜商事株式会社のSDGsへの取り組み状況
興亜商事株式会社は、ホームページの「Social Challenges」で、SDGsへの取り組みを以下のように宣言しています。
興亜商事株式会社は、SDGs17の目標すべての達成に向けて、現場の従業員一人ひとりが取り組んでいます。(coki編集部)