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豊田織機TOBで株価急騰 非上場化の背景 トヨタグループ再統合の衝撃

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トヨタ自動織機 TOB

創業家を中心にトヨタグループが一致団結し、総額6兆円規模のTOBで豊田自動織機の非上場化に踏み切る。市場が騒然とする中、グループ再編の本丸として注目される今回の買収。その背景には、アクティビスト対応、持ち株構造の整理、そして統治強化という多重の狙いが見え隠れする。

 

トヨタグループ、6兆円規模のTOBを発表

トヨタ自動車を中心とするトヨタグループが、源流企業である豊田自動織機に対して株式公開買い付け(TOB)を実施する方針を固めた。5月19日付の共同通信や日経新聞など複数の報道によれば、買収総額は6兆円規模に達する見通しで、TOB実施は5月中にも公表されるとされる。

買収のスキームとしては、トヨタや創業家の豊田章男会長、グループ企業が出資する「特別目的会社(SPC)」を通じてTOBを行う形式を採用。三菱UFJ銀行をはじめとするメガバンクからの融資(最大3兆円)と、残りの資金は出資によって賄う。19日時点の豊田織機の時価総額は約5.4兆円に上っており、一定のプレミアムを上乗せした価格での買い付けとなる見込みだ。

株式市場は即座に反応 豊田織機株が上場来高値を更新

市場の反応は迅速だった。5月20日の東京株式市場では、豊田自動織機の株価が一時前日比1480円(9%)高の1万8000円まで急騰し、上場来高値を更新。同時に、買収の中心となるトヨタ株も2%を超える上昇を見せた。

非上場化の狙いは「統治強化」と「アクティビスト対策」

 

今回のTOBの最大の意義は、豊田織機を非上場とすることでグループ経営の統治強化を図る点にある。豊田織機は、トヨタが約24%を保有し、逆にトヨタ株の約9%を保有するなど、グループ持ち株構造の要となってきた企業だ。さらに、デンソー株を5.41%、豊田通商株を11.18%保有するなど、グループ内の「資本の結節点」ともいえる存在である。

近年では、アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)やロンシャン・SICAVといった海外のアクティビストファンドから、親子上場の解消や自社株買いの要求を受けてきた。これに対し、上場を廃止することで外部株主の影響を排除し、長期的な経営方針を自由に実行できる体制を整えるのが今回のTOBの本質だ。

豊田織機の「源流性」と創業家の意地

豊田織機は、1933年に豊田佐吉が設立した「トヨタグループの原点」ともいえる企業である。トヨタ自動車が1937年に自動車部門として分離独立した際、出資母体となったのが豊田自動織機だった。

こうした歴史的経緯から、豊田織機は単なる関連会社ではなく、グループの精神的支柱としての重みを持つ存在である。今回のTOBには、創業家として「グループ再編の本丸は自らの手で行う」という豊田章男会長の意志も見え隠れする。

SPCと銀行融資、財務への影響は?

今回の買収には、特別目的会社(SPC)を介したスキームが採用されており、最大3兆円規模の融資を受けるとされる。これは、仮に全額実施された場合、トヨタグループの連結ベースでの有利子負債の増加につながる。

日経新聞(2024年5月20日付)は、「銀行融資による重い負債を背負うことになるが、グループの中核統治には必要な投資」と報じている。特に、トヨタ自動車としては豊田織機の中核事業である産業車両や物流ソリューション事業(トヨタL&Fカンパニー)を今後どのようにグループ内で位置づけていくかが注目される。

内部関係者によれば、「事業ごとの分社化の可能性も視野に入れている」としつつ、「フォークリフト事業までは直接コントロールしないだろう」との見解もある。

グループ再編の号砲か 次に動くのはどこか?

 

今回のTOBは、単なる企業買収にとどまらず、トヨタグループ全体のガバナンス再構築に向けた「号砲」ともいえる。

豊田織機が持つ株式資産は、トヨタグループ全体の資本政策に大きな影響を及ぼす。持ち合い解消による資本効率の改善は投資家にとっても歓迎される一方、トヨタグループ内の各社の関係再定義を迫る動きでもある。

今後は、デンソー、アイシン、ジェイテクトといった主要グループ企業への影響も避けられない。特に、出資比率の見直しや事業再編が加速すれば、2025年以降のトヨタ中期経営計画にも波及する可能性がある。

まとめ:TOBの先にあるグループ再統合の未来

豊田自動織機に対する今回のTOBは、単なる経営判断ではなく、トヨタグループ全体の組織と精神の再構築を意味する。アクティビストの圧力や資本効率改善の必要性が進む中で、創業家が掲げた「原点回帰」ともいえる動きは、今後の日本企業のグループ経営モデルにも一石を投じる。トヨタグループの一挙手一投足が、日本経済に与える影響は大きい。今回のTOB劇は、その象徴的な一幕として語り継がれるだろう。

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ライター:

新聞社・雑誌の記者および編集者を経て現在は現在はフリーライターとして、多方面で活動を展開。 新聞社で培った経験をもとに、時事的な記事執筆を得意とし、多様なテーマを深く掘り下げることを得意とする。

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