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全国で相次ぐ建設計画の中止や見直し。その背景には、資材高騰と深刻な人手不足がある。中野サンプラザ跡地や順天堂大学の新病院計画の頓挫が象徴する、建設業界の厳しい現実とは。
建設プロジェクト中止が相次ぐ理由
全国各地で大規模な建設工事の中止や延期が相次いでいる。東京都中野区の「中野サンプラザ」跡地再開発計画では、当初予定していた工費を900億円以上も上回ることが判明し、計画の見直しを余儀なくされた。また、さいたま市で進められていた順天堂大学の新病院建設計画も、事業費が当初見込みの2.6倍に膨らんだことから中止に。さらに、山口県下松市の「笠戸島ハイツ」跡地リゾートホテル建設計画も、建設費の高騰により白紙撤回されるなど、全国的に影響が広がっている。
価格高騰と人手不足の影響
資材価格の高騰は、コロナ禍からの需要回復やロシアのウクライナ侵攻、円安などが主な要因とされている。日本建設業連合会によれば、2025年1月の資材価格は2021年1月と比較して、アルミ地金が76%、ステンレス鋼板が70%上昇。また、2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」により、人件費の上昇も深刻化している。
人手不足の背景には、建設業界の高齢化がある。総務省の調査によると、建設業就業者のうち55歳以上の割合は35%を超え、若手の採用が進んでいない。過酷な労働環境や賃金の問題もあり、特に若年層の入職者が減少傾向にある。
一方で、若年層の就職動向を見ると、総合商社や金融業界、デベロッパー業界が特に人気を集めている。2024年の大学生就職人気ランキングでは、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事などの総合商社が上位にランクインし、金融業界では東京海上日動火災保険、損害保険ジャパンなどの損害保険会社も高い支持を得ている。多くの若年層が建設業ではなく、待遇が安定し成長性のある業界へ流れていることが、建設業界の人材確保を一層難しくしている。
インフラの崩壊リスクと対応策
人手不足による建設・修繕の遅れは、都市機能に深刻な影響を与える。特に災害時の復旧の遅れは問題であり、地震や台風などの災害発生時に被害が拡大する恐れがある。また、老朽化した道路や橋梁の崩落、上下水道の破損が放置されれば、市民の生活や経済活動にも悪影響を及ぼす。
地方では、老朽化したインフラの修繕が進まず、物流の停滞や住民の移動制約が問題視されている。都市部では鉄道や地下鉄のメンテナンス不足が交通機能を低下させ、経済活動に支障をきたす可能性がある。
対応策としては、建設ロボットや自動化技術の活用、外国人労働者の受け入れ拡大、官民連携によるインフラ保守の推進が求められる。国や自治体は、老朽インフラの優先順位を明確にし、長期的な修繕計画を策定する必要がある。また、災害時の迅速な対応を可能にするために、技術者の育成と確保を強化することも不可欠である。
インフラ整備の遅れは、安全性の低下だけでなく、経済や社会活動にも影響を及ぼす。今後も資材高騰と人手不足の影響が続く限り、大型建設プロジェクトの中止や見直しが相次ぐことが予想される。官民が連携し、計画的な修繕と技術革新による対策を進めることが不可欠である。