温泉付き宿泊施設の開発を開始
北海道余市郡余市町に拠点を置く株式会社OcciGabi winery(以下、オチガビワイナリー)は、同町の敷地内で温泉掘削工事を開始し、再生可能エネルギーを活用した宿泊施設の建設に向けた新たな一歩を踏み出した。温泉からの給湯設備を整え、地域観光の活性化を目指す。
再生可能エネルギー活用型の温浴施設開発
オチガビワイナリーは、2024年秋から敷地内での温泉掘削を開始し、深度約1,200メートルの掘削を完了しているとのこと。2025年4月には、汲み上げた温泉水のサンプルを採取する「揚湯試験」を実施し、水質検査や成分分析を進める計画だ。
温泉は、新たに建設するホテル(宿泊棟)に供給される予定で、露天風呂や温浴サービスの提供も視野に入れる。さらに、エステ・サロン、レストランの併設を含む複合施設の開発を進め、観光客に質の高い体験を提供する。
代表取締役の落雅美氏は、「ぶどう畑を一望しながら天然温泉を楽しめる施設の実現を目指す」とし、環境に配慮した持続可能な施設開発に取り組む姿勢を強調した。
地域の象徴、オチガビワイナリー
オチガビワイナリーは2012年、余市町が国から北海道初の「ワイン特区」に認定されたことを機に設立された。地域の特色を生かし、国産ぶどう100%で作られる「日本ワイン」の生産を軸に、地域振興を図ってきた。
現在、ワイナリーは約8ヘクタールの自社畑を有し、年間約7万本のワインを生産。ぶどう畑を望むレストランや地下構造の醸造施設も完備し、観光客にワインの魅力を提供している。
持続可能な地域社会の創出
また、同社は地方創生が注目される前から、ぶどう栽培を通じた雇用創出や持続可能な社会の実現を目指してきた。今回の温泉付き宿泊施設の開発も、地域資源を活用し、新たな観光需要を掘り起こす狙いがあるようだ。
専務取締役の落希一郎氏は、これまでにも長野や新潟でのワイナリー開発に携わり、地域を観光地として発展させる実績を持つ。1976年には西ドイツ国立ワイン学校を卒業し、ドイツ国家資格である「ワイン栽培醸造士(Weinbautechniker)」を取得。
この資格は、ぶどうの栽培からワインの醸造に至るまで専門的な知識と技術を証明するもので、同氏の経験と知見はオチガビワイナリーの事業においても大いに生かされている。
「余市町をナパ・バレーのようなワイン観光地に育てる」という熱い思いを胸に、温泉施設の開発に情熱を注ぐ。
開発の概要と今後の展望
オチガビワイナリーが計画する温泉付きホテルは、環境に配慮しつつ、地域の魅力を最大限に引き出す施設となる見込みだ。今回のプロジェクトでは、地元住民にも開かれた温浴施設の提供を目指している。
温泉施設の開発は、観光客のみならず地域住民の交流の場としても機能することが期待されており、地域全体の活性化に寄与するものと考えられる。
オチガビワイナリーの「ぶどう畑の眺望を楽しめる天然温泉」という独自の魅力を備えた施設は、今後の北海道観光に新たな息吹をもたらすだろう。