宝塚歌劇団が株式会社化、取締役の透明性向上へ
阪急阪神ホールディングスは、グループの阪急電鉄が運営していた宝塚歌劇団を、2025年7月をめどに株式会社として法人化する方針を発表した。法人化後、新会社は宝塚歌劇の運営において企画・制作や出演業務を管理する主体となり、劇場の保有やチケット販売に関する業務は引き続き阪急電鉄が担う見通しだ。
また、新会社の取締役は過半数を社外出身者とすることで、透明性の向上を図るとした。この決定は、企業統治(ガバナンス)を強化し、外部からの目で公正な運営ができる組織作りを目指すという意図がある。
劇団員の雇用契約に転換—働き方改革の一環
これまで宝塚歌劇団では、劇団員の雇用契約において入団6年目以降は業務委託契約となる形態を採用していた。しかし、2023年に発生した劇団員の死亡問題を受け、その後の対応として、2024年3月から6年目以降の劇団員も雇用契約の対象とする方針が明らかにされた。
この変更は、劇団員の労働環境改善や待遇の安定化を目指す働き方改革の一環といえる。劇団員にとっては、雇用契約への移行により、法的保護を受けやすい環境が整うこととなる。
背景にある劇団員死亡問題と組織運営の課題
今回の宝塚歌劇団の組織改革の背景には、過去に発生した劇団員の死亡問題がある。2023年、劇団員の死亡後、遺族が上級生によるいじめやパワハラスメントを訴えたことで、劇団内の長時間労働やハラスメントを含む働き方や組織運営が大きな批判に晒された。
その後の調査でパワハラが認められ、劇団側は謝罪とともに合意書を締結したが、事件を契機に、歌劇団のコンプライアンス体制やガバナンスの不備が指摘されることとなった。
メリットと課題 専門家の意見とファンの声
透明性を高めた組織設計や、劇団員の雇用環境の改善は、宝塚歌劇団にとって長期的な信頼回復に寄与する可能性がある。一方で、法人化による運営コストの増加や、歌劇団の伝統的な文化との調和が懸念されるとの声もある。
SNSでは、「ガバナンス強化は当然だが、対応が遅すぎる」との厳しい意見や、「ファンの信頼を取り戻してほしい」との期待が寄せられている。さらには、「株式会社化によって株式公開が行われるとしたら、ファンとして購入したい」といった関心も見られた。
今後の展望と考察
今回の法人化を巡る改革は、宝塚歌劇団にとって内部環境の改善を進める重要なステップとなるだろう。ただし、法人化自体が目的ではなく、その先にある透明性の向上や働きやすい環境の整備を継続する姿勢が問われる。
宝塚歌劇団は、日本が誇る文化的ブランドの一つだ。今回の改革を機に、外部からの目を積極的に受け入れつつ、より強固で信頼される組織として再出発を遂げることが期待される。ビジネスパーソンとしても、この事例を企業のガバナンス強化や働き方改革の1つの参考として捉えることができるだろう。