家電量販大手のノジマがパソコンメーカーVAIOを傘下に収める。2024年11月11日に発表されたこの買収劇は、10年の節目を迎えたVAIOにとって大きな転換点となるだろう。
ソニーから独立後、高品質路線で成長を遂げてきたVAIO。ノジマの傘下でどのような未来を描くのか、その行方に注目が集まる。
ノジマによるVAIO買収劇の舞台裏
ノジマによるVAIO買収は、約112億円という金額に加え、SPC(特別目的会社)を用意するスキームが用いられている。SPCとはSpecial Purpose Companyの略で特別目的会社と訳される。企業で運用する事業が特定されており、その特定された事業のために設立された法人を指す。
ノジマは、このSPCを設立し、VAIO株式の約91.4%を保有する持ち株会社「VJホールディングス3」の全株式を取得。さらに、JIP傘下のファンドからもVAIO株式の一部を取得することで、VAIO株式の約93%を握るに至った。
今回の買収劇では、買収資金を調達するために、譲受企業(買い手)が譲渡企業(売り手)の資産などを担保に、金融機関等から融資を受けて資金調達をするLBO(レバレッジド・バイアウト)が用いられたかは定かではない。
VAIO、独立後の10年と成長の軌跡
VAIOは2014年、ソニーから独立し再出発を切っていた。高いブランド力を背景に、高品質・高付加価値路線を堅持し、法人市場を中心に事業を展開してきた。2023年度には売上高、販売台数ともに前年度比2倍を達成するなど、急成長を遂げていることが他メディアの情報によって報じられたばかりだった。
今年7月には、VAIO創立10周年を記念し、世界最軽量クラスの14型モバイルモニターを発表するなど、積極的な事業展開を見せていた矢先の買収劇となった。
ノジマの買収意図とVAIOの将来展望
ノジマは、VAIOのブランド力と高品質に着目し、両社の顧客基盤を活用した事業機会の創出・拡大、ノジマグループの財務基盤を生かしたVAIOの財務戦略強化などを買収の狙いとしている。
VAIOにとっては、より安定した経営基盤を手に入れることができる一方、ノジマブランドの一員となることで、意思決定のスピードや柔軟性が損なわれる可能性も懸念される。
SNS上の反応とブランドイメージの変遷
今回の買収劇に対し、SNS上では様々な声が上がっている。「ソニー時代のVAIOはデザインは良かったけど、故障が多くて『ソニータイマー』なんて言われてたよね…」「ノジマ傘下で品質はどうなるんだろう?」といった、かつてのブランドイメージを引きずる声もあれば、「ソニーのVAIOがノジマかぁ……」と栄枯盛衰を嘆く声も散見。
「法人向けに特化して成長してきたVAIOが、ノジマと組むことで一般消費者向けにも力を入れてくれるなら嬉しい」といった期待の声も聞かれる。ノジマ傘下でVAIOがどのようにブランドイメージを再構築していくのか、注目が集まる。
10年の節目にノジマ傘下となるVAIO。新たな挑戦の始まりとなる今回の買収劇が、純国産PCメーカーの未来にどのような影響を与えるのか、今後の動向から目が離せない。