世界経済見通しへの自信は堅調、雇用拡大に意欲
KPMGインターナショナルが発表した「KPMGグローバルCEO調査2024」によると、今後3年間の世界経済の成長見通しについて、72%のCEOが自信を示していることが分かった。
地政学的なリスクやインフレ懸念など先行き不透明感が根強い中でも、コロナ禍からの回復基調や堅調な消費需要を背景に、楽観的な見方が優勢となっている。また、92%のCEOが2024年に従業員数の増加を計画しており、人材投資への意識の高さが伺える。
同調査は、世界11カ国・11業界の企業経営者1,300人以上を対象に、経済およびビジネスの展望に関する今後3年間の見通しについて調査したものだ。
人材獲得競争が激化、成長戦略の鍵は「人材」
世界経済の成長見通しについて、CEOの自信度は、調査開始時(2015年)の93%からは低下しているものの、2023年とほぼ同水準の72%と堅調に推移している。
CEOの楽観的な見方は、今後の採用計画にも表れている。2024年に従業員数を増やすと回答したCEOは全体の92%に達し、2021年以降で最も高い割合となった。また、83%のCEOが3年以内に「週5日出社」に戻ることを予測しており、前回調査の64%から増加した。
世界的に人材不足が深刻化する中、企業は優秀な人材の獲得競争にしのぎを削っている。今回の調査結果からは、多くの企業が成長戦略において人材を最重要視し、積極的な投資を行っている様子がうかがえる。
AIへの投資意欲は高く、倫理面や規制整備の遅れが課題
AI(人工知能)への投資も引き続き重要視されている。64%のCEOが、AIを含むイノベーションとテクノロジーへの投資を成長の原動力と位置づけており、そのうち63%は今後3年から5年以内に投資回収が可能だと見込んでいる。AI導入による業務効率化や生産性向上だけでなく、将来的に必要となるスキルを持った人材の育成や組織全体のイノベーション強化にも期待が高まっている。
一方で、AI導入に伴う倫理的な課題や規制の整備の必要性も指摘されている。AIをビジネスに導入する際に最も対処が難しいものとして、61%のCEOが倫理的な課題を挙げている点は見逃せない。AI技術の進化が加速する一方で、倫理面や規制面での対応が追いついていない現状が浮き彫りとなった。
ESGへの対応遅れは企業価値毀損のリスク、CEOの意識向上顕著に
企業にとって、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みは、もはや企業価値向上には欠かせない要素となっている。今回の調査では、ESGの期待に応えられないことによるリスクとして、競争劣位や人材確保の困難化などを挙げるCEOが多く見られた。
CEOのESGに対する意識の高まりは、調査結果にも如実に表れている。収益性が高くとも企業の評判を損ねるビジネスは売却してもよいと回答したCEOは76%に上り、取締役会が懸念を示したとしても、政治的または社会的に論争の的となるESGの問題には意見を表明すると回答したCEOは68%に達した。
一方で、ESGに関して今後予想されるステークホルダーや株主からの厳しい評価や高い期待に応えられないと回答したCEOも66%に上っており、対応の遅れが懸念されている。気候変動に関する目標についても、サプライチェーンの脱炭素化に伴う複雑さなどが障壁として挙げられており、企業は早急な対応が迫られている。
世界経済の先行き不透明感が払拭されない今、企業経営者には、これらの調査結果が突きつける現実を直視し、的確な対応を取る必要性が高まっている。
世界的な人材不足への対応、AI技術の倫理的な活用、そしてESGへの積極的な取り組みは、もはや企業の持続的な成長には欠かせない要素となっている。企業経営者は、これらの課題に戦略的に取り組み、環境変化に柔軟に対応しながら、持続可能な社会の実現に貢献していくことが求められていると言えるだろう。