親世代の本音に迫る:子に安定を求めつつも、自立も願う複雑な心境を考察
近年、子どもが就職活動で企業からもらった不採用通知を親が確認したり、企業研究に同行したりするなど、親が子どもの就職活動に深く関与する「オヤオリ」「オヤカク」(※)という言葉が生まれるなど、その在り方が変化している。こうした風潮は、親世代の本音とどう関係しているのだろうか。
株式会社ABABA(東京都・渋谷)が実施した、就職活動経験者とその親世代を対象にした調査によると、親世代の約半数が「子どもの就職活動に関与したい」と回答していることが明らかになった。
ABABAは「お祈りメール」を就活生への応援に変えたいという思いから、「お祈りエール」という新しい採用支援サービスを展開している企業だ。最終面接で惜しくも採用に至らなかった学生に対し、企業がABABAを通じて他の企業へ推薦できる仕組みを提供している。
オヤオリ:企業が採用活動の一環として内定した学生の親を対象に開催するオリエンテーションのこと
オヤカク:学生に「親御さんは内定を承諾することに賛成してくれていますか」と確認したり、時には企業側が親に直接、内定承諾の確認をおこなったりすること
子どもの就職活動に関与したい親は半数以上
関与したいと考える理由として最も多かったのは「子どもの考え、意思を知っておきたいから」で、6割以上の親が回答した。さらに、「子どもがどんな企業を受けているのか知っておきたいから」「子どもだけで行う就職活動では不安だから」「ブラック企業に就職してしまうかもしれない不安があるから」といった回答が続いた。
こうした理由からは、我が子の将来を案じる親心はいつの時代も変わらないものだろうが、同時に、経済的な不安定や雇用環境の変化など、現代社会の不安要素も背景にあると考えられる。
親が子に求める「安定」とは
では、親世代は具体的にどのような就職先を望んでいるのだろうか。調査では、「経営が安定し、十分な給与や待遇がある企業に就職してほしい」と回答した親が最も多く、次いで「できるだけ転職はせずに長く勤められる企業に就職してほしい」「基本的には子どもの意思を尊重するが、ブラック企業と思われる会社には就職しないでほしい」という結果となった。
転職に対する意識―親子で変化する雇用観
安定した雇用環境を求める声が多い一方で、転職に対する意識は、親世代と子世代で共通点が見られる。
調査によると、「できれば一社に長く勤めてほしい」という意見が親世代で53.3%、子世代は56.7%とほぼ同水準である一方、「キャリアアップのため転職を視野に入れることは賛成」という意見も、親世代で46.7%、子世代では43.3%と、半数近い親が転職を肯定的に捉えていることがわかる。
かつては終身雇用が一般的であった時代とは異なり、現代社会では転職が一般的になりつつある。変化の激しい社会を生き抜くためには、一つの企業に留まることよりも、自身のスキルやキャリアを磨くことが重要視されている。親世代もこうした時代の変化を柔軟に受け止め、子どものキャリアプランを尊重する傾向が見られると言えるだろう。
就職活動を親子で考える
今回の調査結果から、就職活動における親世代の意識は、子どもへの愛情と、社会に対する不安、そして時代の変化への柔軟な対応が複雑に絡み合っていることが浮き彫りになった。就職活動は、子どもが自身の将来を真剣に見つめ、自らの力で選択していくプロセスであると同時に、親世代にとっても、我が子の成長を改めて実感し、将来に対する期待と不安を抱く時期と言えるだろう。
就職活動という貴重な機会を、親子双方にとってより良いものとするためには、互いの本音を丁寧に伝え合い、理解を深めることが重要である。
【調査概要】
調査対象:2023年度卒業・2024年度卒業予定の就職活動経験者300名
2023年度卒業・2024年度卒業予定の就職活動経験者の子どもを持つ親300名
調査機関:株式会社ABABA
調査方法:インターネット調査
調査期間:2024年8月14日~8月24日
有効回答数:600名(子世代300名、親世代300名)