
「年取った男は物体」「一日も早く未亡人になりたい」。タレントの山田邦子がテレビ番組で語った熟年離婚をめぐる発言が、波紋を広げている。山田といえば、1990年代に不倫関係を報じられた男性と2000年に結婚し、今年で26年目を迎えた。かつて世間の批判を浴びながら結ばれた相手について、今度は辛辣な言葉を連発。山田の発言に込められた夫婦観とは、どのようなものなのか。
山田邦子「年取った男は物体」 熟年離婚をめぐる発言が炎上
発端は10月17日放送の関西テレビ『ドッとコネクト』だった。番組では、2025年の全国の離婚件数や、結婚生活が20年以上に及ぶ夫婦の熟年離婚が話題となった。結婚26年目の山田は、年齢を重ねた男女の違いについて独自の考えを披露。女性は年齢を重ねても元気な一方、男性は身体の機能が衰えると話し、「物体でしかない」と表現した。さらに、長年連れ添った夫婦には、いたわりの気持ちが必要だと語った。
山田の発言はそれだけにとどまらない。司会の石井亮次アナウンサーから、自身は離婚を考えないのかと尋ねられると、以前からそう考えていると返答。「一日も早く未亡人になりたい」とまで口にした。驚いた石井アナが夫への影響を心配すると、山田はその日の朝も夫が東京駅まで送ってくれたことを明かした。共演した橋下徹氏は、そこまで言えるのは夫婦仲が良いからではないかと受け止めていた。スタジオでは笑いを交えた会話として進んだものの、放送後、男性をひとくくりにする表現がSNSで批判を集めた。
かつては「略奪婚」と報道 山田邦子と夫・後藤史郎氏の結婚まで
山田の今回の発言を聞いて、かつての結婚騒動を思い出した人もいるだろう。夫の後藤史郎氏は、テレビ番組の制作に携わってきた人物だ。山田との交際が注目されたのは1990年代半ば。当時、後藤氏には妻がいたと報じられ、山田との関係が写真週刊誌で取り上げられた。その後、2人は2000年1月に結婚。当時39歳だった山田にとって初婚であり、後藤氏にとっては再婚だった。
当時の不倫報道は、人気タレントとして活躍していた山田のイメージにも影響した。テレビで見せる明るいキャラクターとは別に、私生活をめぐって厳しい視線が向けられ、一部メディアでは「不倫略奪婚」と表現された。
2022年12月のBusiness Journalも、山田の過去を振り返る記事で、当時の不倫報道や結婚をめぐる批判に言及している。そうした経緯を経て結婚した2人は、今年で結婚26年目を迎えた。今回の熟年離婚発言が注目された背景には、長年連れ添った夫婦であることに加え、かつての結婚騒動を知る人にとって意外に映る言葉だったこともある。
夫は東京駅まで送迎 毒舌の裏に見える26年間の夫婦関係
「一日も早く未亡人になりたい」と語った山田だが、番組で紹介した夫の日常は、むしろ妻を支える姿だった。山田によると、夫は番組出演の日も東京駅まで車で送ってくれたという。司会者が心配するほど厳しい発言をしながら、夫の気遣いについても自然に口にしている。山田は以前から、夫との関係を冗談交じりに語ってきた。長い結婚生活のなかで、夫への不満や年齢を重ねたことへの感想を、笑いに変えるスタイルが定着しているようだ。
一方、夫婦の間で成立する冗談が、他人にも同じように受け止められるとは限らない。今回も、夫個人への毒舌だけであれば、長年連れ添った2人の関係性として受け取られたかもしれない。ところが、発言は年齢を重ねた男性全体に及んだ。
かつて結婚に至るまでの経緯が大きく報じられた2人が、26年後にはこうした冗談を交わす関係になっている。そこに夫婦の歴史を感じる人もいるだろう。ただ、夫が実際に山田の発言をどう受け止めているかについては、今回の報道からは分からない。
SNSで「男女逆なら許される?」 山田邦子の発言に男性差別との批判
山田の発言を受け、SNSでは男性差別を指摘する声が広がった。特に反発を招いたのは、年齢を重ねた男性を、身体の機能や役割だけで評価するような表現だった。女性について同じ言葉を使えば、大きな問題になるのではないかという意見も見られた。
年齢によって身体が変化するのは、男性にも女性にも共通する。夫婦生活では、働き方や家事の分担、健康状態も年月とともに変わっていく。それを理由に相手の存在価値を低く見るような発言は、不快感を与えやすい。
山田は1980年代からテレビの第一線で活躍し、率直な物言いと大胆な笑いで人気を集めてきた。毒舌を交えた発言は、長年の芸風でもある。しかし、今回は個人的な夫婦の話から、男性全体への評価へと話が広がった。そこに反発が集まったことは、単に過激な冗談を嫌う人が増えたという話では片付けられない。テレビのスタジオでは、出演者の表情や会話の流れによって冗談として成立していた発言も、SNSでは言葉だけが広まる。今回の騒動は、その難しさも浮かび上がらせた。
熟年離婚は過去最高の24.2% 夫婦の4組に1組が結婚20年以上
今回、山田が発言するきっかけとなった熟年離婚は、実際に増加傾向が注目されている。
厚生労働省の2025年の人口動態統計によると、全国の離婚件数は約17万9000組。このうち、同居期間が20年以上の夫婦が占める割合は24.2%と、過去最高となった。離婚した夫婦の約4組に1組が、20年以上連れ添った関係ということになる。ただ、離婚件数全体は2002年をピークに減少傾向にある。熟年離婚の割合が高まった背景には、若い世代を含む離婚件数の変化も関係している。
長年連れ添った夫婦が離婚を決断する理由は、それぞれ異なる。退職によって一緒に過ごす時間が増えたり、家事や介護の負担が変わったりすることで、それまでの関係を見直す人もいるだろう。また、子育てが終わった時点で、今後の人生をどう過ごすか考えるケースもある。夫婦としての生活を続けるか、それぞれの暮らしを選ぶか。老後の選択肢は、以前より多様になっている。山田は年齢を重ねた男性の身体的な変化に触れたが、熟年離婚の背景には生活や経済、家族関係など、さまざまな問題がある。年齢だけを理由に夫婦の関係が決まるわけではない。
不倫騒動から26年 山田邦子が語った「いたわり」の意味
今回の発言で印象的なのは、厳しい言葉の一方で、山田自身が夫婦には「いたわり」が必要だと語っていたことだ。かつて不倫関係を報じられ、世間から批判を受けながら結婚した相手。26年という年月を経て、夫婦の関係は恋愛当時とは異なるものになっているはずだ。
若い頃は魅力的に感じていた部分が、年齢を重ねるにつれて変化することもある。仕事を退職し、生活の中心が家庭に移れば、夫婦の距離感も変わる。相手が以前と同じように行動できなくなったとき、どのような関係を築けるかが大切になる。
山田が夫について語った辛辣な言葉は、これまでの芸風や夫婦の関係性を踏まえれば、冗談として理解する人もいるだろう。一方で、長年連れ添った男性を「物体」と表現したことに、不快感を抱く人がいるのも自然だ。
今回の騒動は、山田の毒舌が許されるかどうかという問題に加え、夫婦が年齢を重ねることの意味を考えさせるものとなった。かつての恋愛が結婚に変わり、さらに老後を迎えていく。夫婦の関係が変化するなかで、山田自身が口にした「いたわり」は、どれほど大切にされているのか。結婚26年目の山田が語った大胆な本音は、長年連れ添った夫婦のあり方にも問いを投げかけている。



