
「被害者もいる中で、やめてほしい」。こめお本人がそう求めた投稿は削除された。ところが、その約3時間半後、今度はこめおを擁護する言葉の中に「食中毒ぐらい」という表現が飛び出した。
発言したのは、格闘技イベント「BreakingDown」に出場するレオ。78人が発症し、3人が入院した食中毒事故をめぐり、こめおを守ろうとしたはずの投稿が、なぜ本人への批判まで呼び戻す結果になったのか。今回の炎上には、SNSで誰かを「擁護する」ことの危うさが表れている。
BreakingDownに出場する格闘家レオ
レオは、1分間の短時間で激しい試合を行う格闘技イベント「BreakingDown」に出場している格闘家だ。BreakingDownは、朝倉未来がプロデュースする大会として知られ、格闘技の実力だけでなく、出場者同士の舌戦や個性的なキャラクターも注目を集めてきた。
レオも、試合前後の発言やSNSでの投稿を通じて存在感を示している選手の一人だ。今回の騒動では、こめおと直接関わりがある人物として、X上でこめおへの“説教”を報告。こめおを「サルモネラゲリオ」と呼ぶなど、格闘技イベントらしい挑発的な言葉を使った。
ただし、今回問題になったのは、単なる格闘家同士の冗談や煽り合いではない。こめおが関わった飲食店では、実際に78人が食中毒を発症し、3人が入院している。レオが普段の格闘技イベントで使っているような強い言葉が、被害者のいる食品事故に向けられたことで、深刻な問題として受け止められた。
78人が食中毒、こめおは「割烹こめを」閉店を決断
発端は8月22、23日に開かれた麻布十番納涼まつりだった。こめおが手がける「割烹こめを」が会場で販売した「冷やし蟹ラーメン」を食べた客から体調不良の訴えが相次いだ。港区は9月3日、サルモネラ属菌による食中毒と断定。患者は1歳から61歳までの男女78人に上り、51人が医療機関を受診、3人が入院した。店には9月3日から9日まで7日間の営業停止命令が出された。港区によると、患者には下痢、腹痛、発熱などの症状が確認されている。
事故から約1カ月後の10月1日、こめおは「割烹こめを」の閉店を発表した。自身の未熟さや認識の甘さ、飲食店を経営する責任の重さに触れ、「安全に食べてもらうこと」が料理以前の責任だったとの趣旨で謝罪している。翌2日には、調味料「生UMAMI」を手がける株式会社UMAMI LABの役員退任も公表した。ここまでの流れだけを見れば、食中毒事故を受け、本人が店と事業上の立場を整理していく局面に入っていた。
レオが「サルモネラゲリオ」と投稿、こめお本人が削除を求める
そこへ10月3日、レオがXで「こめおに説教した」と投稿し、こめおを「サルモネラゲリオ」と呼んだ。食中毒の原因物質だったサルモネラ属菌を名前にかけた表現だった。投稿は翌4日朝までに500万回以上表示され、約1000件の返信が寄せられた。食中毒には実際の被害者がいることから、事故を笑いに変えているように見えるとの批判が広がった。
ここで止めに入ったのが、ほかでもないこめお本人だった。「今回、被害者もいる中で、これは本当にセンシティブな領域なのでやめてほしい」と投稿。レオはこれを受け、元の投稿を削除した。
こめおが自分への“いじり”を嫌がったというより、被害者がいる事故を扱うこと自体への配慮を示した形だ。閉店まで決めた本人が事故を軽く扱わない姿勢を見せた直後だけに、周囲が笑いへ変換することとの温度差は大きかったといえる。
削除から約3時間半後、「食中毒ぐらい」で再び炎上
しかし騒動は終わらなかった。削除から約3時間半後、レオは再びXを更新。こめおへの批判について、「食中毒ぐらいでガチャガチャ騒いでる雑魚共」などと投稿し、こめおが本気で料理に取り組んでいたことを挙げながら、ニュースを機に追い込むような誹謗中傷を批判した。10月4日16時時点で返信は900件を超え、「食中毒ぐらい」という表現を問題視する反応が相次いだ。
レオの投稿からは、こめおへの過度な攻撃や誹謗中傷に反発したかった意図は読み取れる。ただ、その主張と「食中毒ぐらい」という言葉は別問題だ。今回の事故では78人が発症し、3人が入院している。しかも行政が原因食品と原因物質を特定し、営業停止命令まで出した。そこで被害の大きさを小さく受け取られかねない表現を使えば、「誹謗中傷をやめよう」という本来の訴えより、事故への認識の方に注目が集まる。実際、投稿への反応もそこに集中した。
「批判」と「誹謗中傷」を一緒にすると、擁護は逆効果になる
今回の騒動で見落とせないのは、こめおへの反応には性質の違うものが混在していることだ。人格を攻撃したり、必要以上に追い込んだりする言葉がある一方、78人の患者を出した食品事故について責任や衛生管理を問うことまで同じ「アンチ」「誹謗中傷」とは言い切れない。行政処分が出た以上、事故そのものへの批判や検証が起きるのは当然の流れでもある。
その二つをまとめて攻撃すると、擁護される側にも負担が戻ってくる。今回、こめおは閉店発表で自らの責任に向き合う姿勢を示し、レオの最初の投稿にも被害者への配慮を理由に削除を求めた。にもかかわらず周囲が「食中毒ぐらい」と表現すれば、こめお本人が示そうとした反省との間に矛盾が生まれる。擁護する言葉が強ければ強いほど、事故の事実まで軽く見ているように受け取られ、結果的に本人の説明まで再び検証される構図になる。
こめおを守ろうとした投稿が、こめおの食中毒事故を再び拡散した
食中毒事故は9月の行政処分を経て、10月1日の閉店発表でひとつの節目を迎えていた。ところが、レオの投稿によって「サルモネラ」「78人」「3人入院」といった事故の内容が再びSNS上で広く共有されることになった。こめおを守るための発信が、結果として事故をもう一度掘り起こす形になったのは皮肉だ。
誰かを擁護することと、その人が起こした問題まで小さく扱うことは同じではない。誹謗中傷への反論をするなら、被害者への配慮や確認された事実を土台にしたうえで、攻撃すべき言葉だけを切り分ける必要がある。
今回、こめお本人が先に示した「被害者もいる」という一線を、周囲の擁護が越えてしまった。レオはBreakingDownで培った強い発信力を使ってこめおを守ろうとしたのかもしれない。しかし、格闘技のリングやSNS上の煽り合いで通用する言葉が、食中毒事故の被害者がいる場面でも通用するとは限らない。
炎上の中心にあるのは「食中毒ぐらい」という一言だけではなく、守ろうとした相手がすでに向き合っていた責任を、周囲が軽く見せてしまったことではないだろうか。



